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作品紹介

第76回

谷間のユリは鐘に散る

執筆者:   2015 年 7 月 6 日

望月作品魅力が予想もつかないオチというなら、それは出だしだって同じこと。
こんなワイルド誰も想像できなかった!

ty001この「谷間のユリは鐘に散る」の冒頭の扉絵は、1973年5月14日号の少年キングの『ワイルド7』のものです。多分想像するに当時このページを見たファンは全員叫び声をあげて腰を抜かしたでしょうね。

なぜって、ハードボイルドアクション漫画の金字塔と当時言われていた作品の扉絵に少女漫画の主人公のような少女が登場したのですから…。

『血と情熱のラブロマン愛の32ページ!』

事件に疲れたワイルド達の心をそっとしてくれるのは、谷間に咲く可憐な一輪のユリ…。なんて、こんな煽り文句と扉絵をまず見たらびっくりして、私だったら腰抜かしちゃいます!!

しかも最初に目に飛び込んできたのは、少女漫画に出てきそうな少女の全身像!ご丁寧にバラの花まで描いてある☆#△※!?

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ty002このあと5ページ目までワイルドのメンバーは誰ひとり登場せず、読者はもしかして編集部の手違いで違う漫画と原稿を取り違えた乱丁なのか!?または、ひょっとして?まさか、今日から『ワイルド7』は路線変更で硬派から軟派いや、もしかして少女漫画になってしまったのか?と頭の中を色々な妄想が飛び交ったでしょう。

ty003すいません、ここで種明かしをします。実はこれ、望月先生お得意のジョークです。冒頭のシーンにはちゃんと理由があっての事。

扉絵を含む冒頭のシーンは両国の書いたラブレターを絵で表した物なのです。

実は、このような『お遊び』は「千金のロード」や「ガラスの城」などでもなされています。


さて、前置きが長くなりましたが、今回ご紹介するのは『ワイルド7』第11話「谷間のユリは鐘に散る」です。

ty009さて、そのストーリーは…

今回の舞台は北海道。3日前に発生した銀行強盗事件の捜査の為に北海道にやってきたワイルドメンバー。『ワイルド7』が出向くんだからフツーの銀行強盗じゃない!!

なんと白昼堂々、公道をパレードしていた自衛隊の戦車を乗っ取って銀行の建物に突進し、金庫ごと壁を破壊し、川に沈めて持ち去るという大胆不敵な方法!!すぐに巡視艇が捜索したが金庫と強盗一味はプッツリと消え、手に負えない警察からの要請で我らが『ワイルド7』の出番となった。

草波の推理で金庫のありかと開け方を見抜き、見事一味を追い詰めたが、運悪く別の指名手配犯と合流して人質を取って民家に立てこもってしまった。


ty005果たして人質を無事救出して、犯人を捕まえ盗まれた金塊を奪い返すことが出来るか!?

余談ですが、この人質になる少女の名前をワイルド達は勝手に「エメロンちゃん」と名づけていましたが、これは当時流行していたシャンプーのCMの商品名から取ったものでした。
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さて今回のミリタリーウエポンですが、過去のエピソードに関係する「アレ」が大活躍します。それは、私が以前に作品紹介で執筆しました『コンクリート・ゲリラ』に登場した「対戦車ライフル」です。

米軍のミサイル強奪の為、都市ゲリラが護衛のハーフトラックを奪って逃走しようとしたその時、宙を切って走る閃光一発、我らが飛葉ちゃんが放った対戦車ライフルの銃弾が見事命中し、ハーフトラックは木っ端微塵!!

その狙撃に使用した対戦車ライフルを、事もあろうかドゥカティのバイクに搭載し、颯爽と現れたのは「みそっかすのユキ」。

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こういうアイデアは望月先生ならではのものですね。バイクに搭載することで狙撃も安定し、引き金を引いた時の発射時のショックもバイクが吸収してくれるので、正に究極のウエポンです。

ところで、対戦車ライフルをバイクに搭載するというアイデアには、実はルーツがあるのです。それは「二世部隊物語」の一編である「殺し屋」…。車に対戦車ライフルを搭載して攻撃するというシーンが出てきますが、そのアイデアをバイクに変えて今回の登場となったのでは?と思いました。

さらに2011年6月号「望月マニ也」、第39回の『私を育てた望月作品』で、私の友人、ニコラスさんが書かれていましたが、あれだけワイルド達が積極的にデートの申し込みをしたにも関わらず、少女はなぜ首を縦に振らなかったのか?その理由が分かったとたん、他のワイルドの連中は、仕事が出来たという理由で、スゴスゴと立ち去っていく中、飛葉ちゃんただ一人が時間ピッタリに約束通り迎えに来るシーンは、男性が見ても目頭が熱くなる、飛葉ちゃんの男らしさ表す名場面です。

もちろん飛葉ちゃんのサーカス顔負けのアクロバット走行やロープウェイをバイクで走行したりとバイクアクション、GUNアクションも健在。中編でありながら、アクションあり、ラブロマンありの、シリーズ第11話「谷間のユリは鐘に散る」必見です!!

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ワイルド7(第11話)谷間のユリは鐘に散る

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1974年 ヒットコミックス(少年画報社)19巻/3月1日初版発行
1974年 ヒットコミックス(少年画報社)20巻/6月15日初版発行

2008年 ぶんか社コミック文庫(ぶんか社)11巻/2月20日初版発行



(初出版と最新版以外は割愛しています。)



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望月先生のコメント

「アッと驚く、タメゴロー!」なんてコピーがTVで流行したころかなァ。私もアッと驚かせるネタ、何かないかと・・・・・ 思いついたのが今回の少女マンガ風の導入部。
実は少女漫画、人生で一本、描いています。集英社で少年漫画時の担当編集さんが少女誌へ移った時、記念にと。その作品がウケたかというと、その読み切り一本でその後に依頼されていませんから人気のほど、惨敗だったンでしょうねぇ。
だからワイルド7では、アタマの方数ページにしておきました。
もっと、全編少女漫画風だったら、このエピソードでワイルド7は終了だったでしょうねぇ。男道一本で良かった。ワイルド7を通じて、男ってこうありたい、これが男の理想像ってのを描き続けてきたわけですが、この回のテーマもまた「一度約束したことを守れないヤツは男じゃねぇ」、なんです。
現実には色々と都合があって、100%守れないのが約束。法は破るためにあるって言葉、これが敵役の定番で。まァ、それがテーマで10年連載してたってのも単純ですけどね。

私は太い筆の方が細い線を描く丸ペンより好きって性格。別な見方をすれば大雑把なヤツなんですねぇ。
まァ、思いつきでマンネリにならないよう、こういった話も作ってみたのですが、意外もラストは泣かせてくれると、女性ファンにはウケました。ま、言わば丸ペンも上手に使えたってことなんでしょうねぇ。

さて、対戦車ライフル。
これも大雑把人間の発想です。戦車の装甲鉄板が分厚く、銃弾では跳ね返される。と、判れば銃のパワーを上げりゃいいだけと、パワフル大口径弾を使うライフルを造り上げた。これがソビエト(以下ソ連)流。
アメリカもイギリスもバズーカって方向へ武器の思考が向かっている時にですよ。ドイツだってパンツァーファウストって対戦車ロケット(携帯式対戦車擲弾発射器)、使ってるのにね。
これってソ連がロケット砲を知らなかったわけじゃなく、カチューシャっていってトラックにロケット弾発射用レールを何十本も乗っけて一斉に発射するものを持っていたんです。なのに歩兵の武器としては対戦車ライフル。面白い発想だね。当時ソ連には、兵の数を増やすために女性兵士を採用して最前線で使っていた・・・・ そんな写真を見たとき、「これ、使える」、非力な兵がパワフル武器を持つ。
漫画のネタにと、最初は戦争ものに取り入れ、次いでワイルド7に取り入れたわけです。



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