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望月マニ也

第48回

好きなものがある大切さを。
~映画と私とワイルドと~

執筆者:   2012 年 3 月 4 日

映画好きのおかげでワイルド7に巡り会えた。今回はそんな奇跡の出会いを果たした新しいファンの方からの投稿です。

はじめまして。

車や銃という、男なら一度は憧れハマるであろうジャンルを見事なくらい避けて通ってきた私が、「ワイルド7」の望月三起也先生はじめ、たくさんのファンの方々が集うこのような立派なサイトに文章を書くのは恐れ多いのですが、どうしても思いのたけを叫びたく、投稿させていただきます。


その思いを叫ぶ前に、簡単に私自身の話をさせてください。
専門学校在学中の20歳の夏、早くも就職先が決まってしまい、翌年の春まで時間が余りまくってしまった私。どうせ来年の春から働くのだからバイトは嫌。かといって旅行をいくつもするには金銭的に余裕がなさすぎる。そんな私が目をつけたのが映画という娯楽でした。
それまでは年に一本か二本。しかも超有名な大作しか見てこなかった私ですが、この自由な時間を映画に捧げてみようと思ったきっかけになった映画がありました。
何の気なしに同じく暇を持て余した友人とふらっと入った映画館でたまたま見たのが、リュック・ベッソン監督、ジャン・レノ主演の「レオン」という作品でした。
私は心を鷲掴みにされました。無駄のないストーリー展開とアクションシーンは、私の心の奥底に眠っていた得体の知れない何か魂のようなものをざわつかせるのに充分でした。
それからというもの、私は何かにとりつかれたかのように映画を見まくります。
春の就職まで、当時劇場で公開されていた映画はミニシアターで公開されていたものまでほぼすべて見たと思います。
就職してからも映画好きはもう止まりません。毎年のように150~200本。暇を見つけては劇場を中心に映画鑑賞する日々を現在まで15年以上続けていることになります。
それだけ見ても心がざわつく作品に出会えるのは、多くて年に2、3本。下手をすると1本あればマシという年もあります。
もちろん面白い作品にはたくさん出会えます。が、あの「レオン」の時のように、心が揺さぶられる作品にはなかなか出会えません。昔からあるいわゆる名作と呼ばれる作品には心がざわつきますが、新しく劇場公開される作品に限るとそんなものです。


そんな中でまた新たな一年が始まり、私は友人に誘われ映画館へ今年最初の映画を見に行くことになりました。
それが「ワイルド7」
洋画邦画ジャンル問わず映画を見まくっている私ですが、年の始めの一本目は慎重です。
実はこの作品を見るにあたり、私は躊躇しておりました。予告やテレビなどで「ワイルド7」の映画をやるのは知っておりましたが、失礼ながら原作のコミックなどを一度も読んだことがなく、更にはバイクやら銃やらのジャンルは最初に書いた通り得意ではありません。
ぶっちゃけ、見れたら見ようかなくらいでした。
が、映画に誘ってくれた友人たちは無類のワイルド好きで、とにかく見よう、見てほしいと半ば強引に連れ出され、こうして記念すべき今年の一本目が決まったのです。
映画が始まって数分(正確にはもっとでしょうが感覚的に)、私は夢中になっていました。何か懐かしい思いすらします。
瑛太演じる飛葉ちゃん(親しみを込めてちゃんづけで)をはじめ、まさにワイルドで武骨でどこか愛らしい7人に、気付くとすっかり虜になっていました。
法を無視し悪に対峙する7人はアンチヒーローの如く、悪いのに格好良く思えました。どこか「バットマン」シリーズのジョーカーを思わせる立ち位置に近いのかもと。

が、ここは敢えて正直に書かせていただきます。
誰が悪いという訳では全くございませんが、映画自体がとても面白かったかというと、正直そこまで両手(もろて)をあげて絶賛とまではいきませんでした。
それは多分、二時間弱の中にいろいろ詰め込みすぎていたからで。
どうしても映画というものには時間が限られます。ストーリー云々よりも、出てくるキャラクターたちの薄さを感じてしまったのです。冒頭格好良いと思った7人、虜になった7人でしたが、話が進むにつれ、私は彼らの背景を全く知らされてない(知らない)ことが気になってしまいました。

もちろん一人一人の背景を描いていたらいくら時間があっても足りません。さらには深田恭子演じるユキや中井貴一演じる草波も一癖も二癖もありそうです。椎名桔平演じるセカイや宇梶剛士演じるオヤブン(ハマり役!)なんかもとても面白そうなキャラクター。なのにそれがもう少し活かされていれば、と感じてしまいました。
バイクや銃に疎い私は、もはや彼らのバックボーンのみが気になって気になって仕方ありませんでした。
そう思わせるほどの魅力あるキャラクターたちだったのです。
ふと「レオン」を見た時の主人公レオンと少女マチルダの格好良さが甦ります。
「レオン」の映画の良さはまさに二人のキャラクターありきのもので、存分に映画に活かされていたではないかと。
もちろんワイルド好きの皆さんにとっては、7人のキャラクターの良さなんて勝手知ったるものでしょう。
が、原作を未読の私にしたら、そこが一番物足りなく感じてしまったのです。
何かもったいない!映画を見終わった後も、何かモヤモヤしたものが残ったままの私。
もう少しで心がざわつき、奥底を鷲掴みにされそうだったのに、何か消化不良のようになってしまった私。
しかし持つべきものは友でした。映画終わりでのお酒の席で、良かったら読んでみてよと、なんとコミック文庫を4巻まで貸していただいたのです。
そう!それ!彼らの話をもっと知りたい!
今のままだとまだワイルドの世界の入り口でしかないはず。
扉は開かれたのです。


早速家に帰って読んでみます。まずページをめくって驚いたのが、その世界観でした。
一瞬アメコミかと勘違いしたほどのインパクト!あれ?舞台は日本だよね?と一旦確認(笑)
とまどいながらも読み進めていくと何より物語の精巧さ、スピーディーさ、そして出てくる個性的なキャラクターたち!ページをめくる手が止まりません。
この夢中になる感覚って何かに似てる……あっという間にその世界に引き込まれる感覚。
そうです。面白い映画を時が経つもの忘れ夢中で見てる感覚と同じじゃないかと。

すぐに1巻を読みえると、そのまま2巻に突入。
2巻を読み終えたあたりで、私はニヤニヤしっぱなし。だってどれも映画っぽい気がするんだもの。
それは映画化されるよなぁ。いや遅いくらいです。
特に「バイク騎士事件」はこのまま映画化したってものすごく面白い。いや、むしろこれをまんま映画化で良かったのではなかろうか。それもハリウッドで!
あぁ配役は誰がいいだろう……監督は?妄想が止まりません。そのへんは先生やファンの方々の意見も聞いてみたいなぁ。
そのまま休むことなく、3巻、4巻と一気読みです。

「野生の7人」編で話の面白さに夢中になり。
「バイク騎士事件」編で格好良さにしびれ。
「誘拐の掟」編ではスケールのでかさに驚き。
「コンクリート・ゲリラ」編ではユキ登場でワイルドの世界に虜再び。
揺さぶられました。鷲掴みにされました。面白い!

バイクや銃には全く詳しくないけど、こんなにもワイルドな奴らが集まると面白いことになるんだやっぱりと。
そして何より映画では描かれなかったキャラクターたちの背景に心が奪われます。
八百、オヤブン、世界、ヘボピー、両国、チャーシュー、そして飛葉。
彼らは互いにアウトローな部分を認めあい、時に冷たく付き合いながらも、実はしっかり繋がっているのも、それがあってこそなんですよね。
映画「エクスペンダブルズ」でシルベスタ・スタローンが仲間たちと悪に立ち向かう姿、はたまた阿吽の呼吸で感じさせる絆にも似ている気が。

「バイク騎士事件」で八百やヘボピーを助けるために走り回る飛葉。
「誘拐の掟」編で、仲間のために自分の恋を犠牲にする八百。このくだりが一番好き。
「コンクリート・ゲリラ」編での世界に涙し。
ユキの復讐心も映画より遥かにグッときました。
またどのエピソードでも、悪玉の悪さが半端ない!いいなぁ映画っぽいなぁ。
映画「スピード」でデニス・ホッパーが演じたあの血も涙もない悪い感じ。

派手なアクションで悪に立ち向かうワイルドの面々はどこか「ダイ・ハード」のマクレーン刑事のようでもあり。そこには想像以上の世界観が広がってました。
当たり前と言ったら当たり前ですが、映画では読み取れなかった世界がここにはありました。
そしてどれも話の面白さが本当にハンパない!夜中だというのに時が経つのを忘れて夢中になってしまいました。こういった感覚は映画でもたまにありますが、まさにそれがここで起こりました。
映画だけで止めてしまわず、この面白くて夢中になれるワイルドの世界に入れて本当に良かったなぁと。
映画に誘ってくれた友人、コミックを貸してくれた友人に感謝。
そして映画好きで良かったぞ自分!

だいぶ遅ればせながら知ることになった望月三起也先生の世界ですが、今まで知らなかったのを激しく後悔し、そしてまた新しい魅力を教えてくれた先生に感謝して終わりたいと思います。

長文失礼いたしました。
そして……

早くこの先が読みたい!



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また掲載された方には、望月先生書き下ろし特製ポストカードをプレゼント!


是非、月刊望月三起也事務局までメールを送ってください。
お待ちしております。
info@wild7.jp
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望月先生のコメント

【望月三起也先生より】
『レオン』、いいねぇ、私も好きな映画10作の内の一本!!
まるで恐竜と小ウサギという感じの個性的キャラクターの魅力、役者二人がどんぴしゃはまって、遊びのシーンもチャップリンの物真似なんてイケてます。
さらに物語を盛り上げる悪役(敵役)、この悪役が際立つことで物語りはドラマチックになるんです。観客からみて悪役が如何に憎たらしく見えるか、それが主人公を強く感じさせるんです。
悪役(敵役)が弱いと主人公はただの暴力犯になってしまう訳ですから。

この悪役の刑事(ゲイリー・オールドマン)、ヤクを口に入れ、首をカクッと捻るところといい、癖の上にも癖をつけた演出、さすがリック・ベッソンですねぇ。
子役も子供なのに美人で可愛らしさがあって。だからラストの泣かせシーンも効いてくるだなァ。今や大女優になったのも当然。
って、映画評ではなくて、“映画化”って話がメインのはずがついついレオン好きが出てしまって。
ワイルド7も映画化されなければ漫画も読むことはなかったって訳だね、コズィさん。運命の出会いですねぇ。
こうやってまた一人、ワイルド7ファンを作ってしまった(?)。

映画は多くの人が参加して創るもの、原作者の意見はほとんど入りません。そこへいくと漫画の方は原作者である私が独裁者、誰も反対できません。私が思い通り、ストーリーもどんでん返しもキャラクター作りも派手な活劇も、と全部自分の思うがまま、思い通り。100%望月三起也ってわけ。
そのかわり失敗もまた一人で責任負うわけ。
幸いにしてワイルド7に関しては、お褒めの言葉はあっても文句は聞かない、それも40年以上前の作品を未だに古さを感じないって言ってくれる。嬉しいですねぇ。
人を楽しませるってことが一番、だから描いていての苦労は、アイデアを捨てることかな?

主人公のピンチシーンを考えたとする、そこからの脱出のアイデアがひとつ浮かぶ。数秒後にまたひとつ、さらにこっちの方がと別バージョンが浮かぶ。そうやっていくつも出てきたアイデア、それぞれ面白いと思っても、使えるのはひとつ、五つのアイデアがあっても使うのはたったひとつ。 いずれまたどこかで使おうとメモっておくのですが、使った試しはない。 つまり時間が経ってしまうと自分の中で古臭いと思ってしまうのか、新たなアイデア考える方が好きなのか、多分後者でしょうね。 読者の意表を突く、「へぇ」とか「あ、こう来るか」なんて、そんな読み手の顔を思い浮かべニタニタしながらコマ割りをするんです。

そうそう、私の場合ざっとストーリーの方向を考えると文字として書かず、ほとんどコマ割りとしてしまいます。 小説と違いコマの動きで表現がおもしろくもつまらなくもなるのが漫画なので、さらに勢いの「ノリ」のあるときはデッサンも同時に進行していく。

ところがデッサンをしてみると、頭の中で考えていたよりもつまらない。なんてこともある。
悲劇ですねぇ、そうなると最初からコマ割りを始めるから、それまでやって来た作業が全部無駄・・・・・ ということはしょっちゅう。
これがどうにも悪い性格で、気に入らなくなるとコマ割り始めるどころか、そこで作業中止ってパターン年中行事。
ひどい時は一ヶ月作業期間もらって15日でストーリー作りと資料集めやって、本当は16日目にペン入れというスケジュールなのに、「もっと面白いものになるはず」とモヤモヤしてきてどうにも先へ進まない。
ついには思いっきり別なストーリーを新たに考え出すってことも。

さァ、そうなると大変、1日3ページの予定が1日6ページノルマってことになる。編集さんも真っ青。
「〆切まで2週間しかないんですよォ!」と。
ここでまた新たに資料写真集めを頼んだりして迷惑掛けちまうんですが、どうしても〆切守るため、つまらないと思ったアイデアの絵は載せられないンですねぇ。
困った性格だと思うのですが、読者のみなさんに喜んでもらうってことが私の喜びでもあるので、数々の無駄して今日に至るってワケ。
多分、死ぬまで直らないね。

そういう訳で私なり常に全力で駆けてます。その駆けっぷりに拍手を貰いたいために!!




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