
第19回悪党入門
執筆者:Ken時代遅れとなった男の生き様。
一匹狼のワル、居場所は何処に?
Kenさん紹介の単行本未収録作品。
今回は男のロマンというものが遠い昔の話となり生き難くなった現代社会で、決して弱音を吐かず身に着けた知恵と経験でたくましく生き抜いていくハードボイルドな男の物語。
【作品解説】
主人公の家三の風貌は『新ワイルド7』(1986年~1990年)の水戸っぽにソックリ。当時の作品を眺めてみると単行本化された『極道イレブン』(1990年)や未収録作品の『鏡の国のアリス』(1989年)にもソックリの人物が登場する。
この時期の人物として、望月先生はかなり気に入っていたと思われる。
さて本作品の第一印象は物語がやや難解であること。
その理由について説明したい。
作品冒頭の家三の紹介で争い事は好まない性格と言っているのに、ラストでは自らが危険でいっぱいの悪の組織との闘いに立ち向かっていく。
しかも自分の蒔いた種ではなく、他人とも言えるヤクザの親分の息子の身代わり。
一見すると矛盾と思える行動なので、読者が混乱する要因になっている。
実はよく読むと彼の性格が徐々に見えてくる。家三本人にも子供がいて、愛人にも子供がいて、教育を任された親分の息子と接しているなか、共通して子供を大切にするという性格。
「できの悪いガキだが親にしてみりゃかわいい息子に違いねえ」のセリフからも見える。
ワルを気取りながらも内面は他人の子供でさえ面倒を見る男。
そんな男の人生をこの物語の中で表現したかったというメッセージが見えてくる。
さらにメインの物語に加えて、この作品でどうしても望月先生が披露したかったと思われるアイテムとアイデアについて紹介したい。
物語のラスト、渋谷駅ハチ公前で待つ人(実は愛人とその息子)に画像メッセージを伝える場面がある。まだケータイやスマホが無い時代、重要なメッセージを視覚的に知らせるアイデアが読者に示されたのである。
ここで登場するのが当時として極めて先進的なモノでスチルカメラと呼ばれ、デジカメの前身となる製品。
撮影した画像をその場でテレビ画面に表示できるもの。
今では当たり前と思われるが、1990年当時としては画期的な製品。
これとの組合せでハチ公前のビル壁面に据えられた屋外ビジョン(巨大スクリーン)に撮影画像を表示するというアイデア。
屋外ビジョンは新宿に登場したのに続き、渋谷でも1987年に登場している。
まさに時代の先端を象徴するアイテムがタイムリーに作品のアイデアとして取り込まれたことになる。
いよいよ物語がラストに向かう場面。家三は危機的状況になることを瞬間的に予測する。
しばらく会えなくなることを悟った彼は、今まさにそのとき、ハチ公前で待っている愛人とその息子になんとかその状況を知らせたいと考えた。
そこで彼の想いを書いた紙をスチルカメラで撮影、その紙を持つ画像をビル壁面の巨大スクリーンに瞬時に表示させたのである。
安心させるために僅かな笑みを浮かべながら、これによって急に会えなくなったことや、愛人の息子に向けてママをしっかり守ってほしいという複雑な想いを視覚的なメッセージで端的かつ的確に伝えることができたのである。
ちなみにこのスチルカメラの愛称は「Q-PIC」。
これは以前【ひとこと作品紹介】『鏡の国のアリス』で紹介されていたものと同じ製品。
同様に未収録作品であり、
共に水戸っぽに似た人物が登場し、
同じく「ビッグコミック」掲載で
同時期に発表された2つの読み切り作品にこのアイテムが共通して披露されていたのである。
望月先生がどれだけこのQ-PICに惚れ込んでいたかという心の中の想いに触れることができ、発表から30年以上の時間を経て思わずニヤリとしてしまうのであった。
このように、わずか24ページの中に男の生き様の描写と画期的なアイデアがてんこ盛り状態なところが難解さに繋がっていると思われるが、これこそが望月作品の真髄であり、大きな魅力なのである。
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2025 年 11 月 10 日 固定リンク | トラックバック(1)








2025/12/02 at 3:53 AM
ほぼ一般には知られてない、記憶されてないだろう読み切り作品に関して此処迄分析出来る執筆者(否、執筆陣です。他の方の執筆に関しても同様ですので。)に敬意を表したいのであります(私がしても何にもならないけど)。
短編とは外れますが、頭に過った事は1990年と言うと新ワイルド7連載の二年目でしょうか、あの第一部(百頁読切になった第二部も面白いのですけど)も物語の章ごとの前後が関係したりしている部分が多くて難解な部分が在って、最近でも読み返してて気づかされることが多く全く読み飽きないです。
それにその時々の先端(と言うか一般には知れていないものを先生は何処から仕入れているのか不思議で、もしかしたら先の未来を観に行って還ってから描いていた〔短編にはSFやファンタジーも多いですよね〕のではないか?と気が違ってしまう昨今です。)
技術みたいなものがふんだんに多く今更になって驚きながら、焼けてしまった昔の単行本を読んでしまう昨今です。お邪魔しました。