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作品紹介

第43回

地獄の神話(前編)

執筆者:   2012 年 6 月 3 日

ワイルド全編の中でも人気が集中する今回のエピソードは、楽しめる要素も実に盛りだくさん!とても一度では語りつくせない……ということで、まず今月は登場キャラクターの魅力から

「ワイルド7」第13話「地獄の神話」は、ストーリー、テンポ、メカと三拍子揃ったシリーズ最高傑作と言われる作品で、私も「ワイルド7」の中で一番好きなお話です。
少年キング連載当時、望月先生が明らかに楽しみながら描かれておられるのがひしひしと伝わって来てました。もし叶うなら、実写映画化第二弾として製作して欲しいものです。

ここで、最初に簡単にあらすじを紹介しますと、今回の任務はシカゴ帰りの神話三兄弟(神話太郎・神話元次郎・神話元明)の処刑。この三兄弟警察の手にもあまるほどの大悪党。特に末っ子の元明は、神話太郎でさえ手を焼いたほどのワル。土地を売らないといった理由で、養老院ごと20人を丸焼きにするほどの悪党。

神話太郎著書の百万部突破記念パーティー会場に我らが飛葉ちゃんがCB750で乗り込み、まず手始めの標的は末っ子の神話元明。検察庁からの直々の依頼で珍しく逮捕状で元明を普通に逮捕し、宣戦布告。

目の前で末っ子の元明を逮捕されて、怒り心頭の神話太郎の脅しにも怯まない飛葉ちゃんの雄姿。そして次男の元次郎は軍師のような、ずる賢く頭の回る知能派で、どういう悪知恵を張り巡らしてくるのか?はたして迎え撃つワイルド7に勝算はあるのか?さらにシカゴからトンデモない連中が来日!
「シカゴの五本指」という殺し屋集団。

はたして神話はワイルドつぶしに雇うのか?少年キング連載当時は、毎週ハラハラドキドキの連続でした。

今回、「ワイルド7」の紅一点「ユキ」にスポットを当て、今まで「みそっかすのユキ」と言われ続けていた本名「本間ユキ」が、この事件を境に正式なワイルド7の一員に成長し、さらに「スナックVON」オーナーの「イコ」との飛葉ちゃんをめぐり恋のライバル同士である事が発覚(読者は既に薄々感じていた)する一編でもあったところに注目しつつ、また今回のゲストキャラ「菊川警部」の登場シーンと見どころを少しづつ摘まみながら作品紹介を書かせていただきます。 ・・・・たとえば、こんな具合。

「冷たいのねっ、飛葉ちゃんの命とお店とどっちが大切なのっ!!」と言い寄るユキに

「とうぜん飛葉ちゃんよ」と答える、イコ。「でしょ」納得する
ユキ・・・・・。
と、数秒の間があり、言葉の意味に気がついたユキがイコの方を振り向き照れるイコ。イコとユキの間に気まずいムードが・・・・・。お互いが恋のライバル同士である事に気付いた瞬間であり、後にも先にもこういうやり取りは最初で最後でした。

これまで数々のピンチにあってきた「イコ」が、毎回飛葉ちゃんに救出されて、いつの間にか飛葉ちゃんを愛しく思っていてもなんら不思議ではありません。自然の成り行きでしょう。

逆に、「ユキ」は第4話「コンクリート・ゲリラ」で、「ワイルド7」の敵というか、「飛葉」をはじめ「ワイルド7」の処刑の対象でした。事件が終わり、「草波」に「ワイルド7」の一員になる資格ありとみそめられ、「みそっかすのユキ」として第8話「黄金の新幹線」から隊員として初登場しました。数々の事件を解決している過程で、
いつの間にか、「ユキ」も「飛葉」を大切な人という位置づけで見ていたのが表われているシーンがこれです。単身敵の手に落ちた飛葉の救出に向かったユキが言った言葉・・・

「逃げるわ。でも、飛葉ちゃんも一緒よ!」

「くどいわよ、逃げるときは一緒と言ってるでしょ!」

と愛する人を置いて自分ひとり助かるわけにはいかないと言う、自身が傷つきながらも健気な女心が見え隠れするくだりもあり、いつになくユキがかわいいなと感じる名シーンでした。さらに逃げ場のない極限に追い詰められた万事休すの場面で、「仮にもワイルド7の一員になった女としては、一人で死んじゃあいけねえ、悪党の2、3人も道ずれに死ね!! それがワイルド7の死にざまってもんだぜ。」と、死と隣り合わせの中で、愛する飛葉ちゃんからの言葉に、まるで呪文にでもかかったかのごとく、そのあとの反撃がまるで生まれ変わったように冷静に悪党を無情に処刑出来る、この時に真のワイルド7の一員になった瞬間が描かれているのだなと・・・・・。

さらに終盤の敵を追い詰める場面で、バイクで走行中の貨物列車の連結部分を飛び越えるシーンは、第1話「野性の七人」の中で、飛葉が草波の仕掛けた入隊テストの最終関門の、やはり走行中の貨物列車を飛び越えるシーンと少しダブります。
飛葉の場合は走行中のバイクで後戻りできない状況で、一瞬のタイミングのズレが場合によっては命取りになってしまう死のダイブでした。ユキの場合は止まっているバイクでのジャンプでしたが、止まっているとはいえ、ほんのちょっとの隙間を飛び越えるのを女の身でありながら見事にこなしたところは合格点でしょう。この余裕の笑顔で飛び越えた瞬間、バイクテクニックも一流、ユキはもう「みそっかすのユキ」ではない、間違いなく真のワイルド7の一員「ユキ」になったと言える瞬間ではないでしょうか?「もう誰にも、みそっかすのユキと言わせねぇよ!」(古いギャグでスイマセン、苦笑)
そして、今回作品紹介上絶対に忘れてはいけないゲストキャラが…、顔もそっくり実在する人物が実名で登場します。その方は、静岡県藤枝市出身の元三菱重工サッカー部の選手、「菊川凱夫(きくかわよしお)」氏です。なんと役柄は「警視庁特捜隊主任」。神話一味を追い詰める警視庁の凄腕警部。しかも背広の模様は三菱マーク!乗ってる車も三菱ギャランGTO! という徹底ぶりでの登場でした。

望月先生が大のサッカーファンで、とくに三菱重工業FC(現浦和レッズ)のファンであった為、当時親交のあった菊川氏を作品に登場させたのであろうと推測されます。ただ、「地獄の神話」のみの登場でその後一度も登場していないのは寂しい限りで、何とかスピンオフ作品か何かでもう一度登場してもらいたいものです。さしずめ「菊川警部の事件簿」なぁ~んて、タイトル辺りでどんなもんでしょうか?

他にも、飛葉ちゃんの好きな芸能人、草波の好きな芸能人が「南 沙織」、菊川警部の好きな芸能人は「浅田美代子」など、なかなか日頃は明かされないキャラのプライベートの情報も満載の本編。是非未読の方は、騙されたと思って一読してみて下さい。今なら前編・後編各定価¥930円(税込)で「ぶんか社」より発行中です。書店もしくはネットで購入してみて下さい。

最後に、もう一度言います!映画第二弾は、是非ともこの「地獄の神話」を映画化してもらいたいです。出来上がればきっと大迫力のアクション超大作になるでしょう!!






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望月先生のコメント

「シカゴの五本指」・・・・・ よく考えたネーミングだと他人事のように感心してます。
悪役が上手に描ければ主人公は引き立つ、ストーリーに読者も引き込める。
昔から映画ファンの私としては映画から学んだもののひとつ、敵役が憎たらしいほど強いのは当たり前で、口の利き方、その態度、こんな嫌なヤツぶっ殺してくれぇーッ と、読者が思ってくれたらしめたもの、作品成功です。

その一方『敵役』・・・・・ “てき役”ではなく“かたき役”です。が、これは大きな意味で主人公のライバル、同サイドでもいいし敵対する側でもいいのですが、魅力あるキャラクターを創造することが大事、“殺すにゃ惜しい悪党”、ある意味「ユキ」なんてのがそれ。
作品を作っていくうちに段々と「殺すにゃ惜しい」と思ってしまうのですよ。
でも一方、描く側としてはその最期、死に方にインパクトを持たせたいと“殺す喜び”にも抵抗しがたい魅力があったりするわけなんで、結局ワイルド7のメンバーへと昇格させて・・・・・ 死ぬのは何年も先になりましたが、早くに殺さなくて良かったと思うキャラクターのひとり。
なにしろ未だに惜しい、早くに殺し過ぎたと思って後悔しきりなのが『世界』。
名参謀として、あれは使いたかったねぇ。

インパクトのあるシーンを優先して“男の死に様”見せたかったのですが、まさかその後この作品が10年も続くなんて予測できなかったわけですよ。
で、「シカゴの五本指」ですが、殺し技の工夫も、まァ悪くはなかったし、弱い者いじめってキャラクターもまずまず、かなり憎たらしく描けた。歴代悪役の中では、まァ演技派でしょうか。

一方、三角関係みたいなものは苦手だし、ワイルド7は“少年誌”連載だし・・・・・ ってこともあり、「イコ」×「ユキ」ライバルシーンはあまり描かなかったわけで、その分『ビッグコミック(小学館)』って青年誌には艶っぽい女性を登場させ、その廻りでラブ・コメってシリーズをやりましたけどね。

強力なライバルを目指したのが菊川警部なんですねぇ。
これまた書かれてあるように私のキャラクター作り、人間観察から入ります。それには極親しい仲間がヨロシイ。当人に断りなく、ある時は味方、ある時は敵として登場させています。
今回eddy-sさんが取り上げ、そのカット見て「バッカだねぇ」、よくもまァ三菱ファンとはいえ、あんな面倒臭いスーツの柄を描いていたもんだと我ながら呆れています。
スクリーントーンを使わない私、締め切りの日、柄が描き残されていたりするとパニックですよね。単純な柄なら時間通りに完成するのですが、ここまで面倒臭い柄だと・・・・・ まァピッチも上がるわけがない。
柄描きはたいがい新入り弟子の担当ですが、そういった時はベテランまで柄描きすることになる。ベテランってコックでいえばシェフ、一流料理作ってる俺が、店が忙しいからってキャベツの千切りやるのかよ!!って気分だったでしょうね。
幸いにして、そういうことを口にするような弟子、ウチにはいませんでしたが。

その菊川、私は未だに「キク」と呼びますが、今は九州に住んでいまして中々逢う機会もありませんが、今年7月久々会う計画・・・・・ ってのは、『バロンピック』って、漫画家「バロン吉元」さんが企画する小学生の絵の大会が7月、鹿児島で開催されます。その夕、飯でもと今から同窓会気分で楽しみにしているところです。




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  • 黄金銃を持たない男 :
    この作品紹介を読んで、地獄の神話を買いました。
    私は実写版を観てからワイルド7を知り、その後OVAアニメや秘密探偵JAを観て、この作品を読みました。
    確かにこの超大作を映画化するのは大変だと思いますが、できることならやって欲しいですね。
  • eddy-s :
    黄金銃を持たない男さん

    初めまして、原稿を書いたeddy-sと申します。
    私の拙い文章を読んでいただきまして有難うございました。

    映画?テレビ?から漫画のワイルド7をお知りになり、OVAやJAを経て「地獄の神話」に辿り着かれたとか。
    マニアの王道を歩んでこれてますね。(笑)
    私やここの常連さんもほぼ同じようなルートでファン(マニヤ)になられておられる方がほとんどです。(苦笑)
    是非また、記事への感想をお願いします。書く側としては読む側のご意見が次の原稿を書くときに大変参考になります。

    また、事務局宛に、望月先生へのファンレターなどお寄せいただけると望月先生も喜ばれます。是非、ご検討下さい。
    それでは、有難うございました。

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