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作品紹介

第56回

二世部隊物語 『約束』

執筆者:   2013 年 8 月 5 日

望月作品を語る上で外すことができない戦記モノの傑作群。その中でも特に評価の高い二世部隊シリーズで本物志向の望月先生が描きたかったものとは……

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ミッキー熊本軍曹率いる二世部隊が活躍するミリタリー漫画

『二世部隊物語』

ミリタリー漫画として私が初めて読んだ作品は以前作品紹介させていただいた『悪一番隊』であるとご説明しましたが、その前後に読んだのが『二世部隊物語【約束】』だったと思います。

発表から既に40年余り経った今読んでも、読み終えたあとに切ない気持ちになり目頭が熱くなる作品です。

今回の話は、ヨーロッパのとある小さな町を舞台に姉と祖父と住む少年「パリス」を中心に物語が進みます。
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ドイツ軍に支配され、ドイツ軍の方が強いと思い込み、これまで町の大人たちに裏切られ続けた為に大人の言う事を一切信じられなくなっている少年パリス。敵地偵察の為、一人町に入り込んだミッキーはパリスと知り合い、何とか信用してもらえたミッキーは必ず連合軍を連れて戻ってくると、パリスと男同志の「約束」を交わす。

ys2しかし、連合軍陣地に戻ったミッキーに上層部の非常な決断が告げられる。町には進撃しない‥‥‥と。ys3







どうする?ミッキー!今まで脱走兵が一人もいなかったことが誇りだった二世部隊で、男の約束を守る為ひとり軍の命令に背いて脱走を宣言して町に向かおうとするミッキー・・・・。

そして、それに続くヤンキー部隊の面々。(軍隊では、命令違反者は軍法会議にかけられ、懲罰は営倉送りから銃殺(死刑)まであり、実際に第二次世界大戦中、アメリカ軍で脱走を図り銃殺された例もあるそうです・・・・。)

ys4・・・・敢えて自分を犠牲にしてまで友情を大事にする下りは「ワイルド7」第一話「野性の七人」で、「草波」の命令に背き、M.Cプロに閉じ込められた飛葉を助ける為、ヘボピー以下ワイルド7のメンバー全員が引き返して助けに行くシーンに通じるものがあります・・・・。もし命令に背いたら、元の犯罪者に戻して刑務所にブチ込むぞと草波脅されても、友情を取って敵に立ち向かう姿は、何度見てもカッコイイです!

ys5以前『ヒロイン特集』でも私が取り上げましたパリスのお姉さん。

設定では、たぶん12~13歳位かな?年齢的にはほんのり
色気も出始める頃ではないでしょうか?
発表当時のヨーロッパの女優さんで例えるなら、若き「カトリーヌ・
ドヌーヴ」か「クラウディア・カルディナーレ」辺りでしょう。

本編ではお色気を利用したパリスの金儲けに加担しています。今でこそ当たり前ですが私の記憶では、それまでの望月先生のミリタリー漫画には、ゲストで女性はほとんど登場した事がなかったと思います。仮に出てきてもセリフは少なくせいぜい2,3コマ程度でした。でも、今回の彼女は明らかにそれまでと違っていました。

当時小学生だった私は、髪をなでおろす彼女の仕草に女性の色気を感じました。1970年の作品ですから、既に『プシィ・キャット』や『ビタミンI』の作品を発表された直後で、女性を描く事に自信を持たれ初めた時期の最初の作品ではないかと思います。当時は戦争をテーマにした漫画は男の子の読む物と区別され、女性は原則出てきていませんでしたし、ましてや着替えシーンなどは絶対に登場したことはなかったと思います。それゆえこのシーンは小学生には十分すぎるぐらい刺激的で印象に残るシーンでした。(爆)

ys7さて、毎度お馴染みのミリタリーウエポンのご紹介ですが、冒頭に登場したはドイツ軍の「シュビムワーゲン」。
本作が発表された1970年は田宮模型(現:タミヤ)から1/35ミリタリーミニチュアシリーズのNo.3「シュビムワーゲン」が発売された年です。

プラモデルがお好きな望月先生、早速購入されて作品の冒頭に登場させられたのでしょうね。私も当時購入して作った記憶があります。

ドイツ語表記:Schwimmwagen(英:Swim car、泳ぐ車)ポルシェ社が開発した四輪駆動の水陸両用車で、河川はもちろん、ぬかるみや沼地、湖などを走行する事が出来、その際には後部に取り付けられているプロペラを使用します。

ys6最後に今回の舞台となっている町はどこの国かの説明はありませんが、下水道が何度か出てきます。それもジープが悠々と通れるほどの広さとくれば、フランスかな?という推理が立ちます。フランスは古くから下水道が完備されていて、1370年に初めて下水道を作り、1740年にはパリの環状大下水道が完成しています。
1978年アニメ映画「ルパン三世VSクローン人間」でやはり、ルパンのベンツSSKがパリの下水道の中に逃げ込み、ベルの攻撃用ヘリがその後を追いかけて入ってくるシーンがありましたね。それより8年も前にそれを作品にうまく利用された望月先生のアイデアは流石です。

望月先生がミリタリー漫画を描かれる理由は、実体験による戦争の悲惨さ残酷さを十分にご存知だからこそ、敢えて残酷なシーンを描くことで二度と世の中で戦争を起こさない様に、過ちを繰り返さない様にと若い世代へのメッセージだと私は考えています。

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二世部隊物語【約束】

1970年 別冊少年キング(少年画報社)9月1日号 読切全63頁
(巻頭カラー16頁)

1971年 キングコミックス(少年画報社)全4巻(8月1日初版発行)
最前線4巻収録

1975年 ヒットコミックス(少年画報社)全4巻(3月1日初版発行)
最前線4巻収録

1983年 スターコミックス(大都社)全4巻(8月10日初版発行)
最前線4巻収録…etc

『eBookJapan』でも購読可能です。コチラまで。

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望月先生のコメント

戦争映画に女は邪魔っていうのが、私の戦争もの観るときの基準。
念のため、女性が嫌いな訳じゃない。女性を中心に観るには、ミュージカルってものがあるんです。せっかく戦闘シーンを楽しみにしているのに、兵士たちの恋愛シーンやら、地元民、村人との淡い交流なんてのは邪魔なばっかり。それより弾雨飛び交う突撃、戦車が家へ飛び込む破壊力満点なシーンがたっぷり観たいわけですよ。
さらに言えば、戦車はアメリカのパットン戦車の横っ腹に鉤十字(ハーケンクロイツ。ナチス党のシンボルマーク)描いて誤魔化す戦争映画もいただけないねぇ。戦争映画が年に何本も公開されていた私の子供時代は、ほとんどの作品がこれ。
やっと最近、その頃子供だったS・スピルバーグ監督なんぞがリアルにこだわり、本物をレストア出来なきゃ造ってしまうと、いうような戦争映画マニアを喜ばせてくれる作品も出来つつありますが、上ものはよく出来たドイツ戦車も、キャタピラはほぼソ連(現ロシア)製ってのが多い。
こだわり派としては、本当はここも気に入らないンですよ。

スピルバーグのこだわり・・・・・ 今月からWOWOWで流される『ザ・パシフィック』、これは必見です。なんたって日本軍の戦車が見事に再現されて登場するんです。日本の戦車は独特なフォルムで、どっかの国の戦車で誤魔化すわけにはいかないってことなんでしょうが、いやなんともスピルバーグ、ヲタクですねぇ。
というより、多分子供の頃、“いい加減戦車”の出てくる戦争映画観ていて、いずれ俺が大人になって映画を作るようになったら、ここら辺は絶対リアルにやるぜ!って、思っていたんだろうなと想像できます。
同じ戦車ヲタクとして、私プラモデル作って、漫画を描くときの構図の参考にしてます。って、どんだけスケール違うンだって。同じヲタクでもこの違い、やだねぇ、情けないねぇ。
まァ、それでも少しでもリアリティ出したくて、漫画とはいえ私も『二世部隊シリーズ』は懸命に頑張ったものなんです。

子供の頃、好きな映画は戦争ものと西部劇、それと時代劇。『七人の侍』(黒澤明監督)なんて何度観たことか。ビデオなどない時代、その都度入場料を払って観るのだから、トータルするとこの映画、えらい金を掛けて観ているわけですよ。
そんな子供の時分、ギャングものというジャンルがあって、これにまた、のめり込みましたねぇ。
ボギー(ハンフリー・ボガード)だ、リチャード・ウィドマーク、ジェームス・キャグニーなんてところのファンで、この頃からS&W(スミス&ウェッソン)だ、コルトのガヴァ(コルト・ガヴァメント1911)だって、登場するGunにも惹きつけられ、本物が使える国の映画と邦画の違い、見せつけられたもんです。
大きな違い・・・・・ 例えば片岡千恵蔵主演のギャング映画なんてものは、コルト風の銃で撃つのですが、弾倉取り換えなどせず、撃つこと撃つこと何十発も。いや多分、百連発拳銃(?)なんでしょうね。子供でもバカバカしくて見てられないってレベル。当時、誰もそういうツッコミ入れずに、映画の世界だからと見ていたンでしょうか。

そういうガキだった私ですから、漫画を描き出しても他の有名諸先生方の「手の上にナンか乗ってるな」って程度の拳銃が当たり前だった漫画界に飽き足らず、連載デビュー作『ムサシ』から、26年式なんてコアな拳銃登場させたのです。
その後二世部隊ものへと続いていくのですが、拳銃にこだわるファン、いるんですねぇ。そういう方に喜んでもらうと益々兵器にこだわって、「これでもか!」ってほど、いや、楽しんで描いてました。
多分、ドイツ軍兵器や車両、色々と登場させたその種類の多さは、未だに記録的多さだと思います。まっ、それを描くことを楽しんでいたんですねぇ。

で、ありましてですね、女性が出てくるのは珍しいってご指摘、そういう理由。戦争ものに女は不要ってわけ。ただ活劇は生身の人間が描けてないとリアルにならない、ロボットの活劇になる。
人間臭さが画面から滲み出るようにと実は、人情味とか人間臭い部分、つまり人としての弱さ、ずるい奴、お調子者等々、描き分けたつもり。仰る通り、当時やっと苦手な女性が少し描けるようになった頃だったってわけで、“試しに話しに登場させてみました実験”で、鋭いなァeddy-sさん、見抜くとは・・・・・。

好きな戦争ものの話だと長くなります。ノルマンディ取材の話とか、いずれまた。



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