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作品紹介

第75回

リング99

執筆者:   2015 年 6 月 6 日

時は移ろい『週刊少年キング』が『・・・・・KING』となり、望月先生積年のキング誌での最終脱稿作品がこれだ。マッチョ(筋肉)とGunが結びついた娯楽アクションの最終形態!

File0001私が望月作品に嵌ったきっかけは、中学生の頃に書店で目にした『ワイルド7』でした。「そういや昔テレビでやってたっけ?どんな作品だったのかな?」と軽い気持ちで本を手にしたところ、冒頭でいきなりショットガンをぶっ放し悪党を退治するシーンに脳天ぶち抜かれ、思わず即買い。

次の日から昼飯代を本代に充てて1日1冊ずつ揃えていったのですが、続きの待ち遠しかったこと。まぁ、10年近くの連載期間中、毎週続きを心待ちにしていたリアルタイムの読者の方々に比べれば、はるかにマシですが。

ちょうどこの頃、エアーガンに興味を持った時期でもあったので『ワイルド7』や『四つ葉のマック』の影響で買ったレミントンやウィルディを手にしてサバイバルゲームで遊んだのは、今となっては実に懐かしい思い出です。

ところで『ウォリアーズ』の様なメーキャップをした巨漢が派手なアクションをする『リング99』という作品をご存知でしょうか?

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File0004この作品は『少年KING』(1986年2号~9号)に連載されましたが、この頃の『少年KING』は休刊後の再開とあって発行部数が少なかったのか、近所の本屋でもあまり見かけませんでした。

連載されていた頃、飯代を浮かして『ワイルド7』の単行本を買い揃えたり『優しい鷲JJ』『四ツ葉のマック』などの望月作品に嵌っていた私にとって、実はこの『リング99』には苦い思い出があります。

私は『リング99』の存在を連載途中に偶然知ったのですが、物語の途中だった事から「この作品は単行本が出た際に一挙に読もう!」…そう思ったのが間違いだったのでした。連載終了後、2ヶ月にわたって新刊発売予定リストに載っていながら、何故か単行本が刊行されなかったのです。

当時、週刊誌連載作品はほぼ単行本化されると思っていたので、刊行されなかった事は、ショックで何故リアルで読まなかったのかとかなり後悔しました。

File0009ところが幸運な事に数年前、地方出張の際に立ち寄った古書店で運よく掲載誌全号を入手する事が出来たのでした。

もう二度と見る事は出来ないと思い諦めていた幻の作品だっただけに、喜びも非常に大きく、一挙に通読。おかげで当時は把握出来ていなかったストーリーがようやく分かりました。

ここからはネタバレになりますが、第1話のストーリーは以下の通りです。

一段と冷える冬の寒い日、多摩川の河川敷にある貸しボート屋の横で、女子高生のマリは、先輩と3人の不良たちに命じられ中等部に通う妹と共に車の掃除をさせられていた。先輩たちはいつも後輩に金をたかり、それを払えない者は暴力を振るわれた挙句、雑用を命じるのであった。

File0006あと1ヶ月で卒業を迎え、こうした環境から逃れられるマリとは違い、妹はまだ3年もこの苦痛に耐えなければならず、掃除中に愚痴をこぼしていたところ、車の掃除が進んでないと先輩から暴力を受ける妹。慌てて止めに入るマリ。その際、先輩から顔面に蹴りを入れられ気絶。その拍子でマリの鞄から原稿用紙が散乱してしまう。

突如、先輩に後部から回し蹴りを食らわす巨漢。派手なメーキャップと右手には鎖の切れた手枷が印象深い。「弱いものをいじめるとこ見ると、私の正義の血が許さない!!」と一言。「正義の味方、リング99!!」と大喜びするマリであったが、実は気絶したマリが見た夢であった。彼女は小説家を目指しており、散乱した原稿用紙には3ヶ月もかかって執筆した『正義の味方リング99』の物語が綴られていた。

やはり現実の世界は甘くない。不良から大事な原稿用紙を破られそうになった瞬間、鎖の揺れ動く音と共に目の前に先程夢で見たのと寸分違わぬ巨漢『リング99』が現われる。突然現われた『リング99』にビビって後ずさりする不良。掃除中の車に阻まれ、これ以上の後退は出来ない。

File0008刃物を見せつけ威嚇する不良であったが、腹部に蹴りを入れられる。『リング99』の蹴りの威力は凄まじく、掃除中の車と共に不良は河に蹴り落とされてしまう。そんな状況を間近で目撃し、現実であることを喜ぶマリたち。しかし『リング99』はマリたちには見向きもせず、真直ぐに貸しボート屋に向かう。

中では別の不良どもが刃物を取り出し待ち構えていた。しかし『リング99』は、それに怯む事無く銃を抜き、瞬く間に2人の不良どもの腕を撃ち抜いたのであった。恐れをなした先輩は小屋を飛び出し、堤防をよじ登って逃げようとするも『リング99』の撃つ銃によってあえなく滑落…。マリたちを助けに来たように思えた『リング99』は、実はある任務の為に貸しボート屋にきたのであって、撃たれた不良たちは銃の弾道のテスト用に選ばれただけであった。

銃にカービン用ストックを取り付け任務に備える。

File0003やがて上空を飛行機が通過する音が…。銃を構え飛行機を狙う『リング99』。【世紀の歌手 W.ジャクソン来日 午後4時大阪空港着の予定】の新聞記事が脳裏に浮かぶマリ。

「暗殺者!!」…慌ててその場を逃げようとする姉妹。

『リング99』の派手な銃撃により、主翼をもがれ爆音と共に多摩川へ墜落していく飛行機。パラシュートで脱出したパイロットも勿論逃がさない。その横を新幹線が何事もなく橋を通過して行く。

翌日、マリは新聞で事の真相を知る。W.ジャクソン来日の武道館公演をめぐる興行会社同士の争いから、W.ジャクソン暗殺の噂があり、墜落した飛行機から2発の不発弾が発見。同時刻にW.ジャクソンが乗った新幹線が橋に差し掛かっていた事から、暗殺団のものと推測された。『リング99』が狙ったのはW.ジャクソンではなく暗殺団の飛行機であったと。

File0005マリは『リング99』が決して夢ではなく、正義の味方であった事に喜びを感じながら、テレビ局に投稿予定の連ドラ台本を書いていた。『ヒーローは社会というリングで悪と戦うレスラー ひとつの闘いを終え、次なる悪役に挑戦する』…表紙には『私のヒーロー リング99』と書かれてあった。

さて、2話以降マリは新たなバイト先で必ず『リング99』と出くわし、事件に巻き込まれるという展開になってます。そうした絡みを通じて『リング99』の正体が徐々に明らかにされていきます。元プロレスラーであり、仲間3人と空港で乱射や放火を行い50人を殺した罪に問われているものの「ぬれぎぬ説」もあり、やむなく99年の刑を科せられている様です。

File0007普段は刑務所に留置されているが、警察が表立って活動できない犯罪者を陰で始末することにより刑が減っていくという設定になっております。(減刑ではなく、金を貰う場合もある。)

それにしても『リング99』は元プロレスラーというだけあって、やる事もかなりド派手で魅せてくれます。例えば…

● 倒した敵をロープ代わりにして少女を助ける。
● 走行中の車に横から飛び蹴りを喰らわせ、壁に激突させる。
● 国際テロ団のアジトを経営する悪女の入浴中、ワニを放り込む。
● バイクを2台抱えて、店内にいる悪玉目掛けて投げつける。…etc

File0002『秘密探偵JA』の飛鳥次郎や『ワイルド7』の飛葉大陸などの望月ヒーロー同様、『リング99』も実は心優しい男です。雪すら見たことない子供の為に、玄関出入り禁止の病院の窓(恐らく6階程度はあります)からシーツを引き裂いて作ったロープで上り下りして雪ダルマを作ってあげたり、報酬でぬいぐるみをプレゼントしたり…。派手な銃撃や格闘等のハードなアクションが多い中で、こうした主人公の行動には、本当に心が和まされます。掲載誌を入手して感じたのが、連載されていた頃の『少年KING』は、『超人ロック』の他は『湘南爆走族』『ペリカンロード』など学生が主人公の青春を描いた作品が多く『リング99』の様なハードなアクションものは、明らかに浮いていた感じがします。

また全8回の連載中、1話もしくは2話完結の為、物語の途中から始まる展開もあったのは紙面などの都合によるものでしょうか?この作品が『少年KING』以外の連載であれば、もっとじっくりと描けてスケールの大きな物語になった様な気がします。

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リング99

1986年 少年KING(少年画報社)2号 Case1 私のヒーロー!
1986年 少年KING(少年画報社)3号 Case2 ムショの中で…
1986年 少年KING(少年画報社)4号 Case3 地獄を味わえ!!
1986年 少年KING(少年画報社)5号 Case4 コンピューター・マグナムG
1986年 少年KING(少年画報社)6号 Case5 火の虜
1986年 少年KING(少年画報社)7号 Case6 4人の傭兵
1986年 少年KING(少年画報社)8号 Case7 空のうねり
1986年 少年KING(少年画報社)9号 Case8 炎の終末(最終回)

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望月先生のコメント

『リング99』
正直、思い出せませんでした。どんなストーリーだったっけ?時々見事なくらいに忘れてます。
描いてるときはいつも夢中、いつも新鮮さを自分で感じていないとペンは走らない。でもラストページでペンを置いた瞬間それは過去、頭の中が次に描きたいモノへの活動が始まり、終わったものは脳内の引き出しへ入れちまうんでしょうね。っていうか、金庫かな?それも重くて開かない。
こうして読者のみなさんが開けて見せてくれて思いだすです。
そもそも、引き出しへ入れたコトすら忘れるくらいの人間ですから、作品紹介のコメントするためにそんな自作を読み返すと一ファンになっちゃって工夫に感心したり、ギャグに笑ったり、どんでん返しを楽しんだりって・・・・・ 本当に忘れているンですねぇ。ン?私、何十年も前からボケが来てるの?
そんな割に新しいアイデア大好き。思いつくとすぐに描きたくなる。突撃です、ツッコミとボケです。って、漫才か、おまえは・・・・・って?
この『リング99』もHIDEさんが文章内でストーリーを書いてくれたおかげで内容が掴めました。

パワフル主人公、漫画らしい漫画、そんな表現したかったようで。
この傾向、ワイルド7でヘボピーに使ってます。オーバーな怪力、これぞ漫画って作品、久々にまたトライしてみたい。今からでも遅くない『ワイルド7R』シリーズででも使ってみようかって思ったりしたら、地獄だね、描き直しページになったら締め切りをまた延ばさないと。そんなに待ってくれないものね、出版社だって。

こういう、まさに埋もれた作品を見つけてくれるのが、このコーナーの有り難いところで、ファンとの交流は当たり前、それ以上に作品を描く上で大変参考になります。 改めて、HIDEさん、ありがとう。



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コメント/トラックバック

  • こうみ :
    リング99。ぜひ再建したい作品です。短編連作のような作品では最も好きなのに、単行本が出なくて、本屋に何度も問い合わせしました。電子出版でも紙媒体でも、なんとか発行してほしいものです。
    望月先生の作品が載っているからKINGを買っていた読者の一人です。

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