第15回
単行本未収録の作品をKenさんが紹介。
デビュー年に発表された3作目となる読切で、ついにファン待望の戦争マンガが登場。
☆これは、戦場でめぐりあったふたりの少年の哀しい物語である。
【作品解説】
本作品は1960年に発表され、デビュー作『特だねを追え』と同じ掲載年であり、3番目の作品となる。
こうした背景もあって主人公の山岡の風貌は『特だね』の主人公とかなり似ている。
さらに『文藝別冊 望月三起也』(河出書房新社刊)の中で紹介されているデビュー前の未発表習作『50で爆発する』や『鉄腕探偵スペード・ワン』に登場する主人公とも同様に風貌が似ている。
初の連載作品となる『ムサシ』(1962年)で望月作品らしい主人公の雰囲気が固まってくるのであるが、このように習作時代から描き慣れた主人公のイメージに接することができる点で注目に値する。
さてこの作品は「戦争もの」に分類される。
サイドカーを駆使して多数の戦車をやっつける物語であり、乗り物を利用したアクション作品。
『特だね』でもジープを駆使したスピーディな展開が見どころだった。
望月先生が心の底から描きたかった「テーマの原点」がこれらのデビュー当時の作品に見ることができるのである。
ところで望月作品といえば、男性主人公によるアクションストーリーを思い浮かべるが、ここで女性キャラについて述べてみたい。
この女性キャラ、初期作品では全くと言っていいほど見かけることが無いのに、ある時点から純情な女の子が登場するようになり、さらにある時点から魅力的で色気たっぷりの女性が主要なキャラとして位置付けられるように変化していくのはご存知の通り。
ここである問いが生じることだろう。
どの作品から女性キャラが登場したのだろうか。それはどんな女性なのだろうか。
すなわち『望月作品の中で最初に登場するのはどのような女性だったのか?』
そんな素朴な問いが浮かびあがってくるのではないだろうか。
とても興味ある問いに対する答え。実はこの『戦場のメダル』に登場する看護師が望月作品初の女性キャラなのである。
『特だね』や先に紹介したデビュー前の未発表習作にも女性の登場は無い。
ちなみにデビュー2作目となる『拳銃キッド』(未収録)にも登場しないため、3作目にして初めて女性キャラのお披露目となった。
全9ページの作品なので登場回数は少ないものの、1度だけ顔がアップになる場面がある。
看護師の設定なので素朴な女性であり、名前も無いが、望月先生が初めて発表作品の中で描いた女性。
当時の女性キャラに対する想いがほんのり伝わってくる貴重なカットと言えるだろう。
デビュー当時、女性キャラの登場が無かったのは、望月先生ご自身もコメントされているように、それまで「女性を描くのは不得意だったから」とのこと。
そんななか本作品発表から数年後には早くも女性主人公が登場する。
単行本に収録されたこともある「りぼん」掲載の『ひまわりっ子』(1964年)を初めとして、「別冊マーガレット」掲載の『死をよぶ山』(同・未収録)、「美しい十代」掲載の『われらが百合子センセイ』(1966年・未収録)といった作品が間を置かずに発表されたのである。
これらが少女誌・女性誌という世界で発表されたことがとても興味深い。
不得意ポイントを克服してさらに魅力ある作品領域の拡大につながっていったのである。
このように『戦場のメダル』で登場した初の女性キャラが望月作品の「もうひとつの原点」であり、「テーマの原点」と合わせて本作品は初期の中でも貴重な存在と言える。
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「月刊望月三起也」では皆様からの投稿をお待ちしています。
「望月マニ也」「作品紹介」のほか書式や内容は自由!
投稿が採用され「月刊望月三起也」に掲載された方には
記念品として、特製クリアファイル(2枚セット)
をプレゼント!
是非、月刊望月三起也事務局までメールを送ってください。
お待ちしております。
info@wild7.jp
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戦場のメダル
執筆者:Ken単行本未収録の作品をKenさんが紹介。
デビュー年に発表された3作目となる読切で、ついにファン待望の戦争マンガが登場。
☆これは、戦場でめぐりあったふたりの少年の哀しい物語である。
【作品解説】
本作品は1960年に発表され、デビュー作『特だねを追え』と同じ掲載年であり、3番目の作品となる。
こうした背景もあって主人公の山岡の風貌は『特だね』の主人公とかなり似ている。
さらに『文藝別冊 望月三起也』(河出書房新社刊)の中で紹介されているデビュー前の未発表習作『50で爆発する』や『鉄腕探偵スペード・ワン』に登場する主人公とも同様に風貌が似ている。
初の連載作品となる『ムサシ』(1962年)で望月作品らしい主人公の雰囲気が固まってくるのであるが、このように習作時代から描き慣れた主人公のイメージに接することができる点で注目に値する。
さてこの作品は「戦争もの」に分類される。
サイドカーを駆使して多数の戦車をやっつける物語であり、乗り物を利用したアクション作品。
『特だね』でもジープを駆使したスピーディな展開が見どころだった。
望月先生が心の底から描きたかった「テーマの原点」がこれらのデビュー当時の作品に見ることができるのである。
ところで望月作品といえば、男性主人公によるアクションストーリーを思い浮かべるが、ここで女性キャラについて述べてみたい。
この女性キャラ、初期作品では全くと言っていいほど見かけることが無いのに、ある時点から純情な女の子が登場するようになり、さらにある時点から魅力的で色気たっぷりの女性が主要なキャラとして位置付けられるように変化していくのはご存知の通り。
ここである問いが生じることだろう。
どの作品から女性キャラが登場したのだろうか。それはどんな女性なのだろうか。
すなわち『望月作品の中で最初に登場するのはどのような女性だったのか?』
そんな素朴な問いが浮かびあがってくるのではないだろうか。
とても興味ある問いに対する答え。実はこの『戦場のメダル』に登場する看護師が望月作品初の女性キャラなのである。
『特だね』や先に紹介したデビュー前の未発表習作にも女性の登場は無い。
ちなみにデビュー2作目となる『拳銃キッド』(未収録)にも登場しないため、3作目にして初めて女性キャラのお披露目となった。
全9ページの作品なので登場回数は少ないものの、1度だけ顔がアップになる場面がある。
看護師の設定なので素朴な女性であり、名前も無いが、望月先生が初めて発表作品の中で描いた女性。
当時の女性キャラに対する想いがほんのり伝わってくる貴重なカットと言えるだろう。
デビュー当時、女性キャラの登場が無かったのは、望月先生ご自身もコメントされているように、それまで「女性を描くのは不得意だったから」とのこと。
そんななか本作品発表から数年後には早くも女性主人公が登場する。
単行本に収録されたこともある「りぼん」掲載の『ひまわりっ子』(1964年)を初めとして、「別冊マーガレット」掲載の『死をよぶ山』(同・未収録)、「美しい十代」掲載の『われらが百合子センセイ』(1966年・未収録)といった作品が間を置かずに発表されたのである。
これらが少女誌・女性誌という世界で発表されたことがとても興味深い。
不得意ポイントを克服してさらに魅力ある作品領域の拡大につながっていったのである。
このように『戦場のメダル』で登場した初の女性キャラが望月作品の「もうひとつの原点」であり、「テーマの原点」と合わせて本作品は初期の中でも貴重な存在と言える。
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「月刊望月三起也」では皆様からの投稿をお待ちしています。
「望月マニ也」「作品紹介」のほか書式や内容は自由!
投稿が採用され「月刊望月三起也」に掲載された方には
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是非、月刊望月三起也事務局までメールを送ってください。
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2024 年 5 月 8 日 固定リンク | トラックバック(1)
2024/05/08 at 5:20 PM