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望月マニ也

第102回

ワイルド7扉絵に惹かれて

執筆者:   2018 年 8 月 1 日

迫力を活かした物凄い再現力と美しさ。望月先生の画に魅せられて何度も苦労を重ねて描かれ続けたイラストの数々を初公開です

望月三起也作品ファンの皆様へ
私は、雑誌に掲載された望月作品の扉絵などに彩色をして今でも楽しんでいるスリーセブンと申します。

私の母が望月先生と同じ2016年に亡くなり、遺品整理で片付けをしていた時に懐かしいイラストが出てきましたので、ご紹介したいと思います。

こちらは、私が最初にカラー原稿を描いてみた作品になります。
元にしたのは1973年「地獄の神話」の扉絵の裏に載っていたMGCのモデルガンM16の広告でした。


私と望月作品の出会いは、昭和42年(1967年)小学4・5年頃、多くの漫画雑誌を読んでいた中で「秘密探偵JA」に出会いました。
それから貸本屋で単行本を借りて読むようになり、小学校を卒業する頃に「ワイルド7」が連載されました。
毎週買って読みたいという気持ちはありながらも、当時は町に本屋さんも一軒しかなく、自分が「これだ!」と思う良い画に巡り合った時くらいしか手に入れる事はできませんでした。
家庭の事情で3回ほど引越をして、その度に雑誌の切り抜きをしたり増えた単行本は段ボールで何個にもなっていきました。
高校卒業後は社会人となり、漫画好きの友達も出来ました。
当時愛媛には、まだまだ古本屋もたくさん在り、少年キングを見つけることはできましたが、他にも京都や奈良、高知で手に入れたものもあります。


今でこそ完全版が当たり前ですが、当時の単行本では大抵の作品は流れを重視する都合上、扉絵などは必要なものだけで他は外されていたものでした。
そこで、私はモノクロページを自分で彩色をしたり、カラーページを塗り直してお気に入りの扉絵などを再現してみようと思い立ったのです。

コレクションとしてファイルしてあった物や漫画雑誌をコピー機でB5からA3に拡大しそれに手を加えカラー化するという方法です。
その頃はコピー機が文具店にしかなく、雑誌をコピーすると紙質が異なって大抵は灰色の画になります。
灰色になった部分をポスターカラーなどで修正し、元絵の主線をなぞり全て描いていきました。
主線を探りながら描き、コピーの汚れをホワイトで消してクリーンナップしたものが違和感ないか再度コピーを取ると、新たにかすんだ部分や汚れが発生するので、またそれを修正し、と同じ画を何度も何度も繰り返して描くといった長い作業です。
最初は、着色もコピー用紙に色をつけていったため、薄い用紙がデコボコになり半分は使用不可でどうにか一部だけ完成するのが精一杯という感じでした。
他に方法がないかと思っていた時に、仕事で白段ボール紙を見つけ、試しにそれをコピー用紙を貼ってから着色してみたら、仕上がりが良くなりました。
絵は中学、高校と美術部に入部していたので、その時の経験が役に立ってます。


広告に使われた
オリジナルのイラスト

カラー扉絵の再現は、特に最初の段階では実験的な要素が多く、最初にご紹介したイラストも、元にしたページの右上部に自動車がオレンジ色に塗られた部分などはA3に拡大した時に色の三原色で赤とか青が主線から出てしまい、その中から適切な線や色を見つけていきます。
またその時に構図を決め、切り抜いた部分の位置を変えたり、見えない箇所は描き足して、あのような飛葉のバイクに装備された磁石付きチェーンで自動車を引っ張ってきて敵を撃ったような画面を仕上げてみました。

当時はカラーコピー機が町には無かったので、コピーをするには近くの町まで行かなくてはならず年に一度か二度しか出来ませんでしたが、最終的に出来上がった作品はカラーコピーを取ってクリアファイルに保存し、その時に次回作の元絵も一緒にコピーを取るという事をしていました。
今ではすぐにコンビニでコピー出来るようになったため、随分便利になりました。

これまでに、カラー原稿を元にしたものが50枚、モノクロだったものをカラーに描き直したものが60枚、モノクロのイラストも60枚ほど描いてきました。
この他にもまだまだあるので、いつかみなさんに見ていただきたいと思っています。
(事務局注※左がスリーセブンさんのイラスト。右がオリジナル)

この作品は、好きな絵の中でも目標としたもので特に印象に残っている「灰になるまで」の中の一枚です。
元の絵が灰色で薄く、主線をなぞるのは大変でした。
それでも出来上がりまでの時間は、案外早かったのを覚えてます。

このように望月先生のおかげで、長い間扉絵を使って本当にいろいろと楽しませてもらう事が出来ました。
GUNやバイクなどは所々手直しをしながら、自分らしくしていく技術も見つけられるようになってきたと思います。


望月先生のコメント
投稿ありがとうございました。
細部まで丁寧に描き込まれた中にも、よく見るとスリーセブンさんのこだわりや独自の解釈も見つける事が出来て 作品への大きな愛情を感じます。
また長年に渡り試行錯誤を繰り返してきた計り知れない努力の結晶として、このような高い完成度の数々の作品が出来上がったのだと感激しました。(事務局/yazy)

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