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作品紹介

第86回

灰のとりで

執筆者:   2024 年 2 月 11 日

多くの単行本で前章「千金のロード」ともに掲載される100ページの短編。任務外での飛葉が兄を探して事件に巻き込まれる一風変わった展開が本作の魅力です。

はじめに

前章「千金のロード」からストーリーを引き継ぐ3話完結の短編です。
地方都市を舞台にした飛葉が単独で悪党を退治するのはこれが初めてのパターンとなります。
しかも、今まで謎が多かった飛葉の身上の一部(母親と実兄日出丸が初登場)が明かされる。

……それがこれからご紹介する「灰のとりで」です。



第6話「灰のとりで」
前回「千金のロード」九竜会の殺し屋を倒し無事日本に帰り着いたワイルド7のメンバーたち。
マリを依頼主に引き渡し任務完了。

3日後の次の任務までしばらく暇になったメンバーはそれぞれバラバラに。
飛葉は久しぶりに母親の元に行く。
そこで兄日出丸からの連絡が1ヶ月途絶えたので探しに行ってくれと頼まれる。仕方なく飛葉は兄が最後に消息を絶った東北の松田市に出向く。
そこで待ち構えていた謎の私設ガードマン集団と松田市の実権を握る松田乱風
飛葉はいつのまにか得体が知れない陰謀の渦の中に飛び込んでしまったのだった………
はたして飛葉は日出丸を探しだす事が出来るのか?


さて今回も突っ込みどころ満載です。
まず初めて登場する母親日出丸
母親が登場したのは今回と「熱砂の帝王」。
日出丸は今回のみの登場。
しかも顔が土方歳三似の美男子!
当初の設定では青二才のような風貌だったのが、何処でどうなった?
私設ガードマンの隊長が最初にサングラスをかけた制服姿で登場するが、途中でサングラス無しで登場し、私の記憶では飛葉に倒されたはずだが、後半に着物姿でしかもスキンヘッドになって再登場している!
さては不死身のサイボーグだったのか?

第1話「野性の七人」で飛葉が度々少年院を脱走しては戻ってくると言う下りがありましたが、彼は「おれにはどうしても脱走しなくちゃならんわけがあるんだ……月に一どはな!!」とその理由が母親のところへ元気かどうか確認しては少年院に戻っていたのではないかとも推測出来る描写がありました。
幼い時にいつも兄貴ばっかりがかわいがられて自分は一度もやさしい声をかけて貰った事が無く愛情を知らずに育った出来事が、結果的に飛葉を非情な人間にしてしまったのではないか……?
そう思うと兄と顔が違うのは実は異父兄弟だったからではないかとも推測する事ができます。
母親にしてみれば、好きだった男の子どもなら愛情も沸くが、嫌いになった男に顔が似ている子には愛情をかける事が出来なかったのではないか?……と。
それでも飛葉にとっては唯一の母親。
はたして飛葉の父親はどんな人物だったのだろうと勝手に妄想するに『バサラ戦車隊』の司馬のような男だったのではないか?
任務の為なら愛する女性も見捨てるような非情さが女性の立場からすると一生は愛せないタイプ。
それで段々嫌いになっていった。
そして生まれた子供にまで同じ感情を抱くように……
一方日出丸の父親は、女性に優しくて例えるなら八百のような二枚目ではなかったのではないか?
……などと、妄想は続きます。


だいぶ話が脱線しましたが、話を戻して、今回東北が舞台となっていますが、実際に登場するのはどうみても山口県のカルスト台地秋吉台秋芳洞ですね。
私は実家から近いという事もあり幼い頃に何度も行った事があります。
実際、望月先生は当時ホンダの新作バイクの試乗を兼ねて秋吉台まで取材に行かれています。
その時秋芳洞にも行き今回のストーリーを考えられたのではないかと推測します。
百枚皿黄金柱など見どころ満載で、夏は涼しく冬は暖かく、まだ行かれた事が無い方は一度はおいでませ山口。

話の中でも出てきますが、カルスト台地には至る所に縦穴があり、太平洋戦争中、陸軍が訓練で使用した際に、兵士が縦穴に落ちて行方不明になる事がよくあったそうです。

今回のウェポンは、卍(まんじ)のマークをあしらった黒のフォルクスワーゲン13台。
カルスト台地でも走行出来るように全天候タイヤを装着した特殊仕様。
飛葉に迫る13台のワーゲン!
あわやというところで日出丸の言葉を思い出した飛葉は見事窮地を脱する。

今回は日本の地方都市にはびこる悪を退治するお話ですが、この展開は次の作品「爆破105」や『新ワイルド7』の「密林の凶女」に続いていますね。



望月先生のコメント
3週に渡り全100ページと短めのストーリーながら、前章「千金のロード」からのエピローグから繋がる序盤の構成から飛葉の家庭環境が描かれる異色さや、仲間を当てにできない単独ミッションのスリルなど見応え充分な作品となっています。

生原稿バージョンではクライマックスとなるカルスト台地での大攻防が連載時同様にカラーで収録されているのが最大の魅力となっています。
むしろ当時よりも紙質が良くきれいに印刷されている分、その迫力は過去最高です。

eddy-sさん、今回もありがとうございました。
(事務局/yazy)

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