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【ひとこと作品紹介】ニューヨーク市警神田分署

hitokoto_img第11回

ニューヨーク市警神田分署

執筆者:事務局

事務局がオススメする「ひとこと作品紹介」
今回は痛快バディものの真骨頂!
東京は神田でヒート&クールな二人のアメリカンポリスが大活躍するこの作品が登場。

【作品名】
ニューヨーク市警神田分署

【掲載誌】
「週刊少年マガジン」(講談社)
[第1話]1979年9月23日(39)号
[第2話]1980年1月6日(2)号

【単行本】
未収録

【あらすじ】
[第1話]
高速脇に建てられた古くて狭い西神田警察署の署内で、クーラーも効かない廊下の隅に間借りをする形で存在するニューヨーク市警神田分署。
そこに勤務するのはトントンとバッタの二人の若者。
トントンがニューヨークの本署からの電話で、日本に入り込んだ武器運び屋グループの摘発を命じられるのと時を同じくして、所轄で拳銃入りのカバンを持った男と、その男を惨殺したと思われるレスラー風の男の死体が見つかる怪事件が発生する。
撲殺された男の身元が闇の組織「竜・玉・晴一家」の幹部で、一家はマフィアと抗争の真っただ中にあり武器を集めていることが分かる。
捜査を開始した二人だったが、事件は思いもしない方向へと展開する。

[第2話]
汚金元首相が誘拐され、政府はニューヨークのギャング組織と噂される犯行グループに4億円もの身代金支払う。
犯人の正体を知っていた米政府だったが、大物政治家たちに顔が利き証拠を残さない犯行グループを相手に表立って動くことができず、市警本部を通じてトントンとバッタにギャング同士の争いに見せかけて身代金を取り返す非公式な作戦を命じる。
人質が監禁されている敵のアジトはフロリダの地雷原とワニのいる沼に囲まれた砦、集められた部下はベトナム帰りの遊び人たち。
地獄の中へと飛び込んでいくような全滅覚悟の奇襲作戦は果たして成功するのか?


【主要キャラクター】
トントン
本名はトム・戸田でニューヨーク育ち。
警官はアルバイト、本業はダンスのインストラクター。
いち早く事件の真相にたどり着き、悪党に対しては冷酷に鉄槌を下す。
月替わりでバッタと交代で神田分署長(とその部下)をしている。
バッタのことを「単純バカだがただ一人の親友」と評している。
コルト S.A.A.45の二丁拳銃を使用。

バッタ
カッコよさそうなのでニューヨーク市警日本駐在員神田分署長に応募。
思い立つとすぐに実行する行動派。
悪党からの甘い誘惑を跳ね除ける正義感を持ちながらも未練がましい態度を、しばしばトントンにたしなめられている。
東北出身で、英語は全く喋れないため本署からの連絡は全てトントン任せ。
警棒にトンファーを使い、愛用銃はS&W M66。

[第1話]
惨殺された拳銃の運び屋
元ア・ポロスのピッチャーで現在は「竜・玉・晴一家」の幹部。
現場で死体が発見されたレスラー風の外国人
警察の捜査では運び屋を殺した犯人で事件の発覚を遅らせるため乗っていた車を川へ落したと思われた。
竜玉晴
三千人の部下を束ねる闇組織「竜・玉・晴一家」のボス。
地下球場の利権をめぐりマフィア支部のブルー・ジン一家と抗争中。
事件の目撃者親子。
母親は中古車チェーン「FOX」を経営する女社長。
息子は東大生。
担当刑事。
トントンの頼みで犯人の下へと同行し、事件の真相と結末を知ることになる。
お馴染みの署長も、二人が居候している西神田警察署長として登場。
今回はサングラスに葉巻をくわえた姿で貫禄は十分だが相変わらず口うるさい。
[第2話]
汚金
誘拐された元首相
リン・谷
表向きに協力できない奇襲作戦のため米政府が用意した留学生の女性。
フロリダの人脈に強く部下の手配を担当する。
カイト(ハンググライダー)のベテラン。

【作品解説】
「週刊少年キング」での『ワイルド7』連載終了(79年7月)直後の同年9月にライバル誌の「週刊少年マガジン」に掲載された意欲作。
同時期(79年)8月に始まった『俺の新選組』が一転してチャンバラ・アクションとなったため、純粋に銃撃戦を楽しみにしていた読者にとっては待望の新シリーズ開幕となった。
しかし、ニューヨーク市警が日本に出張所を作るという奇抜なアイデアで本格的なガンアクションや海外の舞台を実現させたものの、3作目以降が描かれることはなく単行本にも未収録となっているため、今もなお多くのファンが読めずにいる勿体ないシリーズとなってしまった。

設定もさることながら主役二人のコンビが実に素晴らしいのがこの作品の最大の魅力となっている。

『ワイルド7』
【飛葉と神】

望月マンガでは、兄貴肌と弟分、中年男性と魅力的な若い女性、戦闘のプロと一般市民、あるいは少年と不思議な動物といった見た目も含めてミスマッチな凸凹コンビが登場するエピソードをよく目にするが、『ワイルド7』「ガラスの城」での飛葉と、昔馴染みで現在は敵対関係の神とが共闘する場面のように、実力が拮抗する二人が手を組んで共通の敵に挑むパターンも決して珍しくない。
本作でも、常に冷静で華麗なトントンと熱血漢で向こう見ずのバッタ、という一見対照的で普段から言い争いが絶えない関係の二人は、いざ事件となると銃の知識と腕前は日本の警官が舌を巻くほどで、米政府の秘密作戦に起用されるほど非常に高い能力の持ち主である事が分かる。

『優しい鷲JJ』
【ヒロと魔法使い】

『優しい鷲JJ』
【ヒロとローニン】

こうしたバディものの描写が非常に目立つのもこの時期の特徴といえる。
先に挙げた「ガラスの城」の飛葉と神のシーン(77年)の他にも、『優しい鷲JJ』(80年)では主人公飛浪(ヒロ)が「魔法使い」と呼ばれる武器商人と即興でコンビを組んで闘うシーンがとても華麗に、かつカッコよく描かれている。
そしてこの作品の途中からは、ヒロがローニンという最高のパートナーとともに任務を遂行していく姿が定番となっていく。

こうして考えると『ニューヨーク市警神田分署』には、まだまだ個性的なこのコンビが活躍するアイデアが用意されていたのかもしれない。

『新ワイルド7』
【飛葉とクロス】

この二人なら、もっといろいろなシチュエーションの生死を分ける重大な場面で「お前がやれ」「なんで俺がやらなくちゃいけないんだ!」といった軽快な揉め事が見られたのではないかと思うとつくづく勿体なく感じてしまう。

残念ながらシリーズは2作のみとなってしまったが、この作品が礎となって後に世界を舞台にスケールアップしていく設定と、絶妙なバディアクションが生まれる結果へとつながっていったのかもしれない。
ヒット作となった『新ワイルド7』(86年)も連載当初、メンバーが7人揃うまでは飛葉が新たな相棒クロスとのコンビで活躍していたことを考えると、あながち間違いでもない気がしてくる。

【第1話掲載誌】

【第2話掲載誌】



(yazy 記)



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2022 年 8 月 16 日   固定リンク   |   トラックバック(0)


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