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作品紹介

第11回

ケネディ騎士団(ナイツ)

執筆者:   2009 年 6 月 1 日

数多い望月作品の中でもファンも多く名作の誉れ高い『ケネディ騎士団(ナイツ)』。20代半ばという若いファンである「ほた」氏が、この稀代の傑作を熱く語ってくれます。

2009年初頭、テレビで大勢の民衆を前に堂々と宣誓をしている姿が今も記憶に新しい。
そう、アメリカ合衆国第44代大統領バラク・オバマ氏である。
偶然にも、その熱烈な聴衆の割れんばかりの拍手と歓喜の一場面を見て、『ケネディ騎士団』の冒頭をふと思い出してしまった。

今から10年程前でしょうか。出逢いは都内の某教会のバザーだった。
私は別段キリスト教徒という訳ではないが、ご近所に以前キリスト教徒の外国人がおりまして、その方のお誘いで親に連れられ年に1度、その教会のバザーへ足を運んだのである。
バザー会場の一角に古本が販売されていたのを見つけ、何か目ぼしい本がないか物色した。
何十冊か掻き分けて目を通した中に一冊の漫画が目に留まった。
それが今回、僭越ながらご紹介させて頂く事となった『ケネディ騎士団』(若木書房版)なのである。
くまなく売り場に目を通したものの、3巻迄しか見つからなく、それらを購入し、しばらく3巻迄のストーリーを何度も何度も以後数年見返してはその面白さに陶酔したものである。  

『指令0(ゼロ)!!』


テキサス州ダラスでの白昼華やかなパレードでの最中、突然狙撃されたケネディ大統領が今わの際に発したと設定されたこの言葉から『ケネディ騎士団』の世界が胎動し始める。
世界の陰で行脚する秘密組織に立ち向かうべく組織された少年部隊「ケネディ騎士団」。各国の支部では選抜されたナイツがおり、日夜我が身を世界の平和へ捧げる事も厭わない若者達の活躍を描いたアクション冒険漫画である。
源、平、一ノ木の三人が、それぞれの持ち味を活かし、又、欠点を補いながら任務に当たる姿は、同年代の10代半ばであった当時の自分と照らし合わせて読んだものである。
私の場合、幸か不幸か『ケネディ騎士団』に出会うことはできても、共にこの作品について語りあえる同級生がいなかった事が残念であった。漫画は世に数多あり、さらに日々増え続けている。
逆にいえば、どんなに名作であったとしても、目に付く機会を得なければ新刊の方へ人々の注目が自然といってしまうのである。
昭和41年に『少年ブック』にて世に出たというこの『ケネディ騎士団』は、私が生まれるよりも前に世に生まれていた。
しかし、私には少なくとも、最初手に取りページをめくる度に思った事は「なんと痛快で魅力的な漫画」といった気持ちだった。
又、私は多くの望月先生ファンからすれば若輩者で、数タイトルしか先生の作品を拝読していないが、そのどれもがやはり同じ気持ちにさせてくれたのである。
是非、今の10代から20代にこそ望月先生の作品を手にとってもらいたいと思うし、この『ケネディ騎士団』の世界をまずは味見してみて欲しいと思うのである。
ここで言う味見というのは、「まずは数ページ読んでみて欲しい」という意味だ。きっと新しい刺激を求めていて、冒険心が満ち満ちている世代には「早く次の展開が知りたい」と気持ちが先走り、つい読み進める速度が上がってしまうこと受けあいに違いない。

ここで1つ、私にとって特に思い入れが強かった回の話を挙げてみたい。
「黒地獄」という回の話。これは、本編の悪の組織へと踏み込む前段階としてまず源、一ノ木の二人がB級ナイツに格下げされ過酷な試練を体験する話があり、そこが強く印象に残った。
潜水耐久試験や睡眠不足に伴う自我の崩壊を耐え抜く強靭な精神力持ち合わせているかを調べる試験など、まさに拷問と言っても過言ではないような試練を望月先生は見事なまでの描写と台詞によって成立させている点が凄いの一語に尽きる。
いよいよ本編では、源達ナイツが敵のアジトへと潜入して幾多の罠を掻い潜っていく。
例として先に挙げた潜水耐久試験で7分間もの潜水を可能にした事により、5分間経っても水面に上がってこない源を敵はもはや溺死したものと誤解したのである。
こうした本編への伏線を事前に敷いてくれているストーリー展開が本作の面白みの一つといえよう。
さらに、本作では登場人物一人ひとりの個がよく描かれている点にも注目したい。
これはこの回のみに言及した話ではないが、登場する人物が主人公他A、B、C…ではなく、主人公もその回にしか登場しない人物も分け隔てなく魂がそこには宿っているのである。
だからなのであろうか。各回を毎度読み終える度に主人公の活躍は元より、たった数ページで登場しては去っていってしまった人物への想いも同じくらい残っていくのである。
ここに一つ、この作品のクオリティの高さがあるといえるのではないだろうか。
決して誰一人として無駄に登場はさせていないという事。
これは、コマ数が限られる漫画にあって当たり前のようでいて、実は全体に係る大切な事である。
例えば、駅員やペンキ塗り職人、敵の手下一人をとっても実にいい味を出しているのだ。彼らがいたからこそ、主人公達が生き生きとあの世界を動き回れているのだと思える。

最後に、うまく『ケネディ騎士団』の魅力のすべてをここで十二分にご紹介できたか自分では甚だ自信がない。
しかし、それがまともではないかと逆に思えるようになってきた。
そもそも、望月先生の作品をくまなく見てはいない私が、ましてや稚拙な文しか書けない私が本作の全容を語りつくせることは到底できようがないのである。
だが、少なくともついさっきまで『ケネディ騎士団』を知らなかった方、又、名前は知っていても読んだことがなかった方に対して本作との出逢いのきっかけ作りになったのであれば、私はこの作品紹介に参加出来た事は意義があったのではないかと思う。

望月先生の作品は1枚絵だけでも十分魅力的。
だから、なお更漫画ともなると、読み進めていけば、噛めば噛むほど旨味がジュワーと頭いっぱいに広がってくると思う。
今度は貴方が源、平、一ノ木と共にケネディ騎士団の一員となった気分で共に冒険してみて欲しい。

溢れんばかりの勇気、誇り、友情、努力、情熱、希望そして誠実さに触れる事ができると私は確信している。

末筆ながら、この素晴らしい作品を世に生んで下さった望月三起也先生に深く感謝申し上げると共に、これからも本作のような名作が誕生する事を願いつつ締めの言葉に代えさせて頂きたいと存じます。

※少年ブック(集英社)1966年1月号~1969年3月号。
少年ブックはそののち「少年ジャンプ」と変貌する。
TVアニメ化の企画が上がり、そのTV版パイロットフィルム(70分)も
制作されたが、なぜか正式な制作には至らなかった。
※ケネディ騎士団(朝日ソノラマ・サンコミックス)1969年8月発行。
※ケネディ騎士団(若木書房)1973年6月発行。
本稿にて触れたバザーにて入手した思い出の『ケネディ騎士団』。
望月三起也ビックアクションシリーズ⑩にあたる。
※ケネディ騎士団(朝日ソノラマ・ソノラマ漫画文庫)1977年6月発行。
※ケネディ騎士団(マンガショップ)2005年12月発行。
21世紀となった現在、再び『ケネディ騎士団』がマンガショップより刊行された。
それだけ復刊を望む声とその期待に応える内容を本作が持ち合わせていたという事に他ならないといえよう。


望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
意外と本人が思っている以上に過大評価されてる。
飛行機等のキカイものも、拙い絵だし、背景も、精一杯頑張っても力足らず。
今見たら、ハズカシイばかり。
それなのに、なんで?としかいえない作品です。
強いてあげれば、構成、ストーリーでしょうか。
この作品の載った少年ブックの編集長は、名編集長といわれた長野さん。
その人のお蔭が成功のもと、味の素だと思います。
何しろ細かいことは一切いいませんが、テーマにうるさい。
その方の名セリフ、今でも座右の銘としているセリフがあります。
「モっちゃん、マンガってなんだと思う?」
いきなり、そう質問されて、色々考えます。が、簡単に答えられない。
本質って何だろう?出てきません。
長野編集長「それは『真っ白な紙に真っ赤な情熱ぶっつける事』だよ!!」
カッコいい!!って思いました。そうです!!
ひと言でズバリ、本質です。
画がどうの、筋書きがどうのって、コマい話なんですねぇ。
頭の中、手づかみで中身入れかえられた気がしました。
その長野さんが、私にマンガ描かせるという以上に、テーマをとことん読者にぶつけるという方向、
私に担わせたんですね。
ケネディナイツのテーマは少年ブックのテーマでもある。友情、努力、勝利。
それを、世界をテーマに表す。
それにつきるわけで、三つのフレーズを七つに増やしてスタートしたわけです。
連載中、ソノラマシートなんて付録もつきまして、今のCDみたいなモノ、テーマソングも創作しました。
歌詞も、長野さんにオンブしながら、生れて初めて書きました。
これでも一応、作詞家という名もつけてもらえるわけかな?
もう、このソノラマシート、私のうちにもありません。読者の中でお持ちの方いたら見たいなあ。
アニメパイロットフィルムは手元にあります。但し、どこへしまったか?しまったはず。
当時、ここまで動かしていたかという、素晴らしい出来!!
幻に終わりましたが、これは残念、無念の一言です。
   

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