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望月マニ也

第18回

「ヘボの教え」

執筆者:   2009 年 7 月 1 日

今ではすっかりバイク、GUN、コミックスにドップリの毎日‥‥、そんな不良中年の代表のようなBADsMARUさんが望月マンガに登場した、ある男の生き様について思い返します。

「望月三起也先生」は罪なお人だ。
     
先生の素晴らしい作品の数々に触れ「道」を踏み誤った人をたくさん知っている。
「漫画」は云うに及ばず、「銃器」 「単車」 「映画」 「グラマー美女」 etc, etc
この私もその一人です。
     
     
ガキの時分から「単車」が好きだった。
いや、正確には「少年キング」の『ワイルド7』を読んでからだ。小学校の修学旅行の時は「シカゴの”5本指”」との植物園での死闘の最中だった?(カラー頁のイコのセミヌードが素敵でした)
その頃からコロコロ太っていて、だから「ワイルド」のメンバーの中で一番好きだったのが『ヘボピー』だったんだ。
     
就職するまでは「原ちゃりライダー」だったけど、三十歳を越えてから一念発起してバイクの免許を取り、中型~大型と免許もステップアップするにつれ、単車も次々乗り換える。 
一番乗りたかった単車は第一巻第一話「野生の七人」の最初に出てきた丸っこいバイクだ。
   
   
ところがこのバイクは日本中、いや世界中探しても無かった。(そりゃ仕方ない) どこかの「カスタム・バイク・メーカー」が『W7第一話バイク』として売りに出さないかな?(ガレージキットでもいいよ)
     
それにしても作品中に使用される「単車」や「使用銃器」にまで登場人物各自の「キャラクター色」が色濃く表されていることに、何度読み返しても、いや、読み返す度に唸らされるねぇ。
     
     
さて、我が愛車は 「YAMAHA V-MAX1200 」。
「ワイルド」が連載終了してから6年後に発表されたバイクなので、残念ながらメンバーが跨ることは無かった。
「ヘボピー」のH,D改には及ぶまでも無いが、車体のデカさと押しの強さに惚れて現在二代(台)目のV-MAXで疾っている。
   
   
アメリカの単車乗り、なかでも「バイカー」と呼ばれる人種。背中に「地獄の天使」や「中指をおっ立てたミッキーマウス」の「看板」を背負うヤバい奴等。彼等は主に「ハーレー・ダヴィッドソン」信奉者だが、中にはヘソ曲がりな変わった奴もいる。「ともかくデカくて迫力がありゃイイぜ!」って考えの持ち主が多いが、こんな連中が「日本製大型バイク」を選定する時には必ず、その大きな(そして趣味の悪い)指輪をしたゴツい手でバンバン車体を叩き、それが金属ならば良し。プラスティック部分が多けりゃ「NO GOOD ! Fuck !」と来ると聴く。
『V-MAX』はそんな連中にも愛された単車なのだ。
性能的にいえばフルパワーでの加速時には、ケツの穴からハラの中身がブチまけられそうになる(下品な表現でスイマセン)
     
     
風を切って走る時に、いつも頭をよぎるのは「ヘボピーの教え」
我が愛馬「V-MAX」にはカウリング(風防)が付いていない。「八百」や「両国」のマシンの鼻先についているアレだ。これが付いているのと付いていない状態では、高速走行の時の風の抵抗が与えるライダーの身体への影響が全然違う。時速2○○㎞を越えると、風圧で目が開け辛くなり、涙が止まらなくなる。頭を上げることにすら、怖ろしく首の筋肉を使う。空気をナイフで切り裂いていくが如く疾るということは、それだけ風の抵抗を受けるということなのだ。(単車は法律を守って、安全に乗りましょう)
     

しかしどんなスピードや強風、例え「弾丸」「弓矢(「千金のロード」!)」が雨アラレと降り注ごうが運転する上体は倒さない。
     
それが「ヘボの教え」
     
彼が単車のタンクに顔を引っ付けて疾ったことがあるかい?
たとえ、お腹が出っ張ってて肉体的にも無理だったとしてもだ(シクシクシク…ヘボのお腹のことは言えしぇん)
     
     

「バイクの上で死なせてくれ!」
     
あの時のヘボも上体を上げ、堂々と前を向いて火の壁に突っ込んで行ったんだ。
だから今日もオレはまっすぐ上半身を立てて、風と対峙しながら疾る疾る。
目の前には後輪が沢山付いたハーレー・ダヴィットソン改に跨った、バカでかいヤツの後姿が見えるぜ。
どこか寂しがり屋で優しそうなその大きな後姿に、今にでもすぐ手が届きそうにも思えるのだがなかなか追いつけやしないんだな、これが。
ちょっとスピードを落として待ってくれよ、ヘボさんよ。
よお。 そんなに急いで何処まで行くつもりだい?
     
     
もはや中年と自称するにも憚りがある歳になってきたが、いまだにバイクにしがみ付いている。
単車のテクニックも、いまだ空中を落下する丸太の上をライドするに至っていない(出来ません。そんなコトが出来るのは「飛葉ちゃん」くらいなもんでしょ?)
「バイクの上で死にたい」のも山々だが、たとえそれが稀代の悪女であっても「望月先生の描く美女」がもし居たとしたならば「そんなグラマラスな彼女の肢体の下でなら、死んでもいいか」と考え始めてもいる今日この頃なのだ。
     
     


望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
マンガ好きからオートバイ好きへ転身、変心ってあるのですよ。そのパターン。
そういう一人なんですね。BADさんも。
V・MAXへ乗ってるのがうれしいね。
私の好きなバイクの一台です。
っていっても見てるだけ。乗れません、持ってませんが、新鮮です。
あの形、すごみがあります。真っ黒な巨大なアラビア馬を思わせます。
バイクは、男にとって馬。古くから本能なんでしょう。またがって自由に走り廻る。
馬もバイクも、乗り手は「ライダー」。
一方、車はドライバー。ドライバーには自由がありません。決められた道を走る。
バイクは、道なんか関係ねえ、とばかり野山を走れるその自由さ。
乗り手の精神の自由さの表れですね。
いくらカッコよくてもフェラーリ、ランボルギーニで草原を突っ走る人、見たことありません。
そういう自由な、束縛されない精神ってものがワイルド7に具体的に表現されてるわけで、これが高級車じゃ、ワイルド“野生”じゃないんですよね。
バイクの持つ能力のひとつが風。
BADさん、極めてますよ。そうなんです。
風を切って走る。自然との一体感、これが堪らないんですよね。
今の私、色々事情が山ほどありまして、バイクに乗れません。
秋本治クンなんかと話する時、またがる魅力をタップリ聞かされ、ツライ、口惜しい。
せめてもと、オープンカーで少し風を感じて走ります。
もう25年も乗り続けてるクラシックカーと云ってもいいクルマですが、気に入って一生乗るつもり。
古いだけに、この間もガソリンもれ起こし、給油パイプ取っかえたところ。
まあ、これまでもあちこち手入れして、ほとんどカスタムカーかってくらい手間がかかる。
だから、愛車なんですねえ。
男にとって風を切って走るって、この魅力にとりつかれたら、病、多分一生治らないでしょうね。
   

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