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作品紹介

第15回

ゼロ1戦隊

執筆者:   2009 年 10 月 6 日

水中で戦う特殊な戦闘員「フロッグマン」。こういった誰もが思いつくことのない設定をこれまた望月三起也流の奇抜なアイデアでコーティングして読者を楽しませてくれる快作の登場です。

『月刊望月三起也』でお馴染みの投稿者、「ぐりゅーん・へるつ」さんより一通のメールが届いたのです。
「RYUさん、『月刊 望月三起也』のミーティングに参加しませんか?」 (えっ、事務局とまったく面識のない私でもいいのか・・・?) 迷いもありましたが、ミーハーな私は図々しくも参加させていただくことにしました。

当日、集合場所の某駅で『月刊 望月三起也』事務局スタッフと始めて顔を合わせました。(かなり緊張です) そのまま某カフェに入りお茶をしながら歓談となり、「望月作品」「今後の編集方針」「イベント」などのことが話題となりました。
話もひと段落し、やや落ち着いたころ「受け狙い」と「話題提供」のために自宅から持参した単行本2冊、「ゼロ1戦隊」と「タイガー陸戦隊」をテーブルの上に出すと、みなさんからすかさず「主人公」や「ストーリー」などの話が出てきた時には、さすが「望月マニア」だなあと感心しました。 このことがきっかけになり後日、事務局より『作品紹介』の原稿依頼がきたのです。

じつはこの本、私の所有物ではなく兄の本なのですが、どういうわけか現在私の手元にあります。 私が望月作品に出会い「漫画マニア」になったのも、この兄の影響です。
この当時私は小学生で兄は中学生でした。この時点(昭和40年代)で兄は漫画の単行本を1000冊以上所有していて、「手塚治虫」「永井豪」両先生などの大御所はもちろんマイナー作家(?)まで揃えていました。 ジャンルも「スポーツ」「SF」「アクション」「ギャグ」「恋愛」と守備範囲も広く、その中には当然「望月作品」も含まれていました。
「ジャパッシュ」「夜明けのマッキ-」「最前線」などなど‥‥‥ やはり真っ先に読んだ作品は当時TV放映していたワイルド7の「黄金の新幹線」でした。

さて、今回紹介の「ゼロ1戦隊」ですが、兄の漫画倉庫(押入れの上半分が全て漫画でした)の奥から偶然発見したもので、私が高校生の時に発掘しました!!私は『ゼロ1戦隊』は望月作品の中でかなり異色な感じを受けます。というのも、それまで見てきた「望月作品」は、戦争物、警察・探偵、など時代設定が過去~現在のものが多かったように思います。しかし、この「ゼロ1戦隊」の設定は、やや近未来を感じさせます。(実際の設定は現代かもしれませんが・・・・)「マスクを被ったレッドアロー」、「飛行潜水艇のレッドアロー号」の登場など、他の作品とは一線を画しています。ストーリーは「戦時中レッドアローという名のフロッグメンとして活躍し、アメリカ軍の『バックル少佐』を苦しめた日本の英雄」という叔父を持つ、JAチックな主人公『アキラ』が後にこの話を聞き、自分もフロッグメンとして活躍したいと「ゼロ1戦隊」に入隊するところから始まります。数十年後、このアメリカのバックル少佐は海中の強盗団「ジャガー」と名乗り、日本にもその狙いを向けてきました。
たびたび起こる『ゼロ1戦隊』と『ジャガー(バックル少佐)』の戦いの中で面白かったのは、0メートル地帯の架空の都市『山若市』のダムを崩壊して街ごと水に沈めてしまい銀行強盗を企てたこと。(ビルが沈んでしまうので、最近の『ゲリラ豪雨』どころではありません!かなりの損害が予測されます)小型潜水艇を使った銀行強盗、海中のオフィスの中を水中銃で泳いで戦うシーンなど、当時としてはかなり新鮮でした。(ハリウッド映画でやったらおもしろそうだ!)
アキラが相手の水中銃を避けるのに机の引き出しを使うところは、さすが望月先生!と感心させられます。そしてピンチになると、突然現れる謎の「レッドアロー」。新型の潜水艇でジャガーを追い払ってしまうのです。
そして終盤、バックル少佐とアキラたち「ゼロ1戦隊」はアラスカの氷上で対決するものの、大ピンチに陥ってしまいます。
その時・・・・!おっと、これ以上はこれからこの作品を読もうとしているあなたにご迷惑がかかっていまいますね。
この後のエンディングがどうなるかはあなたご自身でお確かめください。

ところで、またまた話が「作品紹介」とずれてしまいますが、わたしにとって「望月作品」初体験であり、最も思い入れの深い作品となるとやはり「ワイルド7」となります。
このワイルド7を紹介してくれた漫画マニアの兄は「読む」以上に「描く」ことにもマニアでした。
そんな兄から「読み方」とともに「描き方」の特訓を小学校4年生くらいから受けました。
最初は「描かされている」のがいやでしたが、コツをつかむと楽しくなってくるから不思議です。
ワイルド7のイラストも100点以上描きましたが、現在ではほとんど残っていません。そんな中で、奇跡的に発見された2枚を恥ずかしながら紹介いたします。
2枚とも中学~高校生のころに描きました。普段はGペンまたは丸ペンなどで描いていましたが、このころは鉛筆で描くことが「マイブーム」だったようです。
1枚は「運命の七星」の中表紙から、もう一枚のバイクのほうはデッサン・表情ともにいただけない状況ですが、これしかなかったものでご了承ください。

通常の「作品紹介」とはだいぶかけ離れてしまいましたが、こんな「作品紹介」もあってもいいかなとかってに思い、あえて投稿させていただきました。
※『ゼロ1戦隊』
月刊 少年画報(少年画報社)連載 初出1967年5月号~1968年2月号
キングコミックス版(少年画報社)1970年発行
スターコミックス版(大都社)1983年発行

※補足
『フロッグメン』(フロッグマン)
水中工作員。第一次世界大戦の頃から実用化され始めたスキューバ用品の開発により活動が顕著化してきた。第二次世界大戦時には破壊活動の特殊部隊として必要不可欠な存在となっている。


望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
海中のゼロ戦活劇って単純な発想なんです。
陸上、空中と活劇の舞台を求めて来ましたが、海中ってのはなかったもので、自分の中の新鮮さ求めての舞台設定だったわけ。こういう本、持っている人がいるって嬉しい話です。恥かしいながらいつも言うようですが、この頃の絵は漫画らしい漫画のタッチで、極力単純化する方向で描いていましたから、今から見ればもう少し描き込みしたいと思ってしまいます。

SF作品、少ないって思われていますが、その後リイドコミックなどでは青年向けのSF短編、やってるんです。SFはなんでもありでストーリー作りが楽なようですが、とんでもない。まるで夢の世界ではデタラメに感じてしまう。読者がリアルを感じてくれてナンボ、リアリティにはその都度こだわった構成とってるんですよ。ただ描き手にとって魅力は自由な発想が思いっきりできるってこと。武器や兵器といった物もオリジナルで描ける。ただしそれも読者が「ありえな~い」というようなデタラメはできません。ジュール・ヴェルヌとまではいきませんが、将来こういう兵器できるだろうと思わせなくちゃいけません。それなりに頭捻ってるんです。その頭捻るところが楽しいのです。水中なら普通に呼吸できない世界、その枷が新鮮で筆も走るってわけ。
でもどんなジャンルでも人情とか友情とか『情』という人間らしさは共通、それが私流なのかも。特に私は飽きっぽい性格、同じシチュエーションで長く描き、バックも一緒じゃあくびが出ます。背景に新鮮さ求めて別の作品、別の内容にトライしてしまうんだと思います。
そんな意味でこの『01戦隊』も楽しんで描けたもののひとつです。



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コメント/トラックバック

  • Grünherz(ぐりゅーん・へるつ) :
    RYU さん、貴重な内容の作品紹介ありがとうございました。この主人公もチェック柄がコスチュームに入っていますね。望月キャラとチェック柄の関係が気になるところです。

    最近再版された先生の「コミック版 河童」も半水没したような独特な世界を描いていますね。

    先生のSF作品は、SFというよりも「異世界もの」が多いように思います。先生は作品の世界観をキチッと確立されるので、異世界ものは特に作品世界に引き込まれますね。

    以前「アイアンホース」という異世界ものの短編集がありましたが、ぜひ再版して欲しいです。

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