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作品紹介

第31回

マシンハヤブサ

執筆者:   2011 年 4 月 4 日

アニメ化もされた原作なのですが、望月作品だったと知らない人も多い、それでいて一部ではいまだ根強い人気を持つ不思議な作品です。今回担当したランシオさんもその熱いファンの一人!

さあ!今月は「マシンハヤブサ」特集!
マシンハヤブサは、1976年に登場!
時はスーパーカー・ブーム真っ只中。
ここでは原作の「マシンハヤブサ」に触れたいと思います。
ハヤブサ号は西音寺レーシングの自慢のマシンだ。
エンジンを一基から五基まで自由に搭載でき、
どんな悪条件のレースにも耐えられる。
隼、剣、ガンテツ、カミカゼ、ヤマト、ムツ、サクラ、
そして西音寺博士の7人は、世界制覇の野望をいだく
悪の組織ブラック・シャドウと戦いつづける・・・・・・

・・・と、始まるマシンヤハブサ。 1976年、月刊・少年ジャンプに連載された。 また、アニメとして現テレビ朝日系列で放送された。
一般的には、原作よりアニメの方の知名度が圧倒的だと思われ、 「マシンハヤブサ」ファンの中でもコミックスの存在を知らない方も いるくらいだ。

さて、その原作版「マシンハヤブサ」だが、さすが望月作品だけあって アニメとは大きく異なり、人間ドラマ、バイオレンスも描かれている。
左の画像は、オープニングのシーン。 西音寺レーシング・チームのトレーラーが新幹線を抜いていく というダイナミックなシーンから始まる。 レース会場に向かうそのトレーラーの中で主人公である隼剣(ハヤブサ・ケン)とガンテツがレースに出場する体勢を整えている。 そして、「おやじと兄さんのカタキは必ず俺がレースでとってやるぜ」と意気込む隼剣。 剣の父と兄は、世界のカーレース界を手中におさめ、過酷な死のレースを設定し悪逆なレースを続ける悪の組織「ブラック・シャドー」により命を奪われた。 一方、日本に向かう一隻の船の中には、今回剣と闘うブラック・シャドーの第一の刺客「赤いジャッカル」。 こうして、隼剣のプロレーサーとしての第1戦、そしてブラック・シャドーとの因縁の戦いが始まるのだ。
そのレースで剣は、お互いプロレーサーを目指したライバル・久保修司と再会する。 しかし、ブラック・シャドーが設定した危ないレースに出場するな・・・と剣は修司に忠告するが、修行時代にお世話になった修司の母親の手術代を稼ぐためにレースに出場する事を聞くと無理に止める事ができなかった・・・・・。 しかし、ブラック・シャドーの刺客・赤いジャッカル、剣、修司、3人のトップ争いの最中、赤いジャッカルの罠にかかり修司は命を落としてしまう。 いきなり第1話でライバルの死。 更に最後の最後に剣は、赤いジャッカルとトップ争いを繰り広げ、赤いジャッカルを死に追いやり僅差でゴールし剣が優勝するという過激な展開になっております。

第3話に登場する幼い頃から剣がお世話になっていた佃煮屋の息子の幼馴染みのタケシ。 そのタケシは、小さい頃から何かと剣と比較され卑屈になっていた。 そして両親を見返してやろうと、剣を負かして一人前のオトコとして認めてもらおうとレースに出場する。 しかし、ブラック・シャドーの罠に巻き込まれ、またもや無残に命を落としてしまう。 剣は、両親に誉められる事もなく死んでいったタケシの為にタケシのレーシング・スーツを身にまとい、タケシのマシンに乗り、ブラック・シャドーの刺客と戦いながら1位でゴールする。歓喜する両親を背中に剣は、「さあて、ワキ役は怒られにかえるとするか・・・・・・」とレース場を後にするのです。

第1話が始まって、3話までの間に主人公の親しい人間が2人も命を落としてしまう。そして、その残虐な死の瞬間を描いたシーン。そのバックボーンにある人間ドラマ。 「マシンハヤブサ」といえど、単なるレース漫画でなく望月作品らしさがしっかり描かれているのです。

望月作品らしさと言えば、ストーリーとは関係ありませんが、 個人的に大好きなカットが下のカット。 ブラック・シャドーのマシンを大胆にオーバーテイクするマシン・ハヤブサ。 夕日をバックに白と黒のコントラストの比率が実に望月テイスト溢れる素晴らしいカットです。

そして、望月作品らしい大胆な設定が、なんとマシンの操縦をハンドルでなくピアノの鍵盤で操縦するという演出。 その理由として、ブラック・シャドーのマシンと闘うのに通常のハンドルを握りながら色んな装置を操り、一瞬にして細かい対応をするのは不可能。それを可能にするため、鍵盤と操縦や色んな装置をつかさどる機能を連動させ、曲を奏でるように鍵盤を叩き、走行中に一瞬にして色んな操作ができるというもの。 倒された敵が最後に残した言葉が「手・・・手が十本もなけりゃ・・・・・・・ 走行中にあれだけの仕掛けを一瞬に操作できるわけがない・・・」だ。 奇想天外でダイナミックな発想ですよね。

また、マシンハヤブサの醍醐味と言えば、状況に応じて載せ変えるターボ・ジェット型のキャバリーエンジン。 アニメでは「V5」エンジンまで登場しますが、原作では「V3」エンジンまでです。


さて、「マシンハヤブサ」はコミックス1巻のみ全7話です。
●第1話・死の鳥はいく        ●第2話・砂漠の試走車     ●第3話・恐怖の岩場レース
●第4話・死地からの脱出!    ●第5話・国王暗殺計画
●第6話・ゴーストタウンの決闘   ●第7話・魔王の最期
・・・と、短い作品ですが、もちろんレースあり、レースもサーキットに限らず、ラリー、砂漠、ゴーストタウン等バラエティに富んだレース展開、レースにまつわる登場人物の生き様、ブラック・シャドーとの戦い、斬新なマシンやメカ、装置等々・・・ぎゅぅ~っと凝縮された内容です。

それでは最後に登場人物とマシンの紹介をしたいと思います。


★隼 剣 (ハヤブサ ケン)
オッチョコチョイでお調子者、破天荒な面もありながら冷静な面も持ちブラックシャドーとの戦い の中で命を落とした父と兄の敵を討つ事に執念を燃やす。
★西音寺洋輔 (さいおんじ ようすけ)
剣の父親である隼博士が研究をしていた夢のガソリン「ドリームオイル」そして、マシンハヤブサの 心臓部でもあるキャバリー・エンジンの研究を受け継ぎ、開発に成功する。 西音寺レーシングチームのオーナー。風貌はとても博士には見えないファンキーないでたち。 残念ながら他の登場人物は、7話と短い中ではさすがに細かい人間性までは描かれていないですが、 チラッと登場した場面やセリフから私なりに登場人物の性格を紹介しますね。
★西音寺さくら 西音寺博士の娘。
こういうドラマには定番の気が強く、おてんばな性格。 最終話でブラックシャドーにさらわれる。
★ヤマト
マシンの整備を担当する西音寺博士の助手的立場。常に博士の傍にいて熱い男。
★ガンテツ
第1話の最初のレースから剣と出場する。ドライバーの中では一番登場回数が多い。 身体も大きく力持ち、ケンカも強い。最終話で大活躍。
★ムツゴロウ
劇中では「ムツ」と呼ばれる。見かけはスキンヘッド。語学が堪能である。
★カミカゼ
第1話で「おれもはやく(レースに)でたいな」というセリフがある。要所要所に出てくるものの レースに出場したのは最終話のみ。


注)ムツゴロウとガンテツのマシンは、アニメ版とは逆です。
★ビッグギャリー チームのマシンを搭載し、チームの移動に使われるトランスポーター。 このトランスポーターのデザインはアニメ版とは大きく異なり、原作では新幹線っぽいデザインになっている。


『マシンハヤブサ』 1976年  月刊・少年ジャンプ(集英社)  昭和51年4月号から連載開始 全7話
1986年  スターコミックス(大都社)全1巻

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望月先生のコメント
今月号の望月先生のコメントはお休みします。
楽しみにされていた方には大変申し訳ございませんでした

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コメント/トラックバック

  • sillazman :
    なるほど、これが噂に聞く「鍵盤型コントローラー」でしたか。ありがとうございました。
    実は、以前、ぐりゅーんさんのレスに、この鍵盤型のことがあったのですが、私ァ、この頃、月刊ジャンプに縁がなくって、アニメの方も、若干、歳を食っている関係で未見でしたし、望月先生の作品としては、非常に新鮮に映ります。

    登場人物も当時のカエルぷろの面々なのでしょうか。なんか、お弟子さんたちを中心に楽しんだ作品って気がします。
  • ぐりゅーん・へるつ :
    懐かしいですね。ジャンプ誌とテレビアニメを見ていました。
    今見ると、ハヤブサ号のデザインには「ロッキードP-38」に通じるものを感じます。

    作品の流れとしては「ゼロ・ファイター」、そして師匠筋の「マッハGo Go Go」もあるでしょうね。
    そう考えると、違和感はないかも。

    「さくら号」がレギュレーション違反で失格する話を覚えていますが、「さくら号」原作には出て来ないのですか。

    剣がピアノを練習する話が印象に残っていますが、肉鉄の「ベートーベン」と何となく関係がありそうな気がします。描かれた時期は近いのですかね?

    そうそう、原作でビックリしたのが新幹線型の巨大トランスポーター。驚きましたねぇ。
    作品冒頭の登場シーンは、「黄金の新幹線」のセルフ・パロディでしょうか。

    アニメーション作品で、サブキャラクターに望月キャラを意識したのを使ったのって、「マシンハヤブサ」が唯一じゃないですか?そう考えるととても貴重な作品ですね。
  • ランシオ :
    sillazmanさん>

     「鍵盤型コントローラー」斬新すぎます!
     しかし、豊かな感性を持ってらっしゃるからできた発想なのかも!
     マシンハヤブサは、確かに望月作品の中ではちょっと雰囲気違いますね。
     大人の事情とかもあるし・・・・・以下自粛(笑)
  • ランシオ :
    ぐりゅーん・へるつさん>

     おお!確かに「ロッキードP-38」ですね!
     「マッハGo Go Go」からの流れもあるんでしょうね。
     当時のスーパーカーブームに流れに乗り切れなかったところも・・・
     レース設定が大胆すぎたのかなぁ?(笑)

     さくら号はアニメのみの設定ですね。
     肉鉄の「ベートーベン」との時期的な事はちょっとわかりません・・・
     望月先生って、パロディ好きそうなのでセルフ・パロディあり得るでしょうね。

     「マシンハヤブサ」は、色んな意味で貴重な作品だと思います。
     
  • 健太郎 :
     ランシオさん、素敵な作品紹介ありがとうございます。
     とても楽しく読ませていただきました。

     人間ドラマ、バイオレンスも描かれているのですね。

     「鍵盤型コントローラー」にはびっくりしました。先生のアイディアは、ほんとうに素晴らしいなと思います。
     ランシオさんがお気に入りの「夕日をバックに白と黒のコントラストの比率が実に望月テイスト溢れる素晴らしいカット」、ほんとうに魅力的ですね。うっとりと見つめてしまいました。
     これからもランシオさんの楽しい作品紹介を楽しみにお待ちしています。推察シリーズもとても楽しみです。
  • ランシオ :
    健太郎さん>

     ありがとうございます。
     先生の奇想天外な発想が盛り込まれて中々面白いです。
     夕日の・・・カットはホントいいですよね♪
     大きくして額に入れて飾りたいくらいです(笑)

     また何か執筆した際には読んでくださいね。

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