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作品紹介

第40回

0(ゼロ)ファイター

執筆者:   2012 年 2 月 11 日

レース漫画は数あれど、この「0ファイター」こそ望月三起也作品の魅力がギュッと詰まった傑作だとランシオさんが熱く熱く推薦!その理由に納得です

「0(ゼロ)ファイター」とは・・・
太平洋戦争の頃の外国人が、
日本の誇る名戦闘機ゼロ戦を指して言った言葉だ。
ところが今では、素晴らしいドライバー・南郷たけし少年を
外国人がこう呼んでいる。
それほど南郷たけしは、人並みはずれたカーキチなのだ。
ポンコツカーから二十一世紀の夢の競争車まで、
カッコいい車が、次々登場するよ! ガッチリ読んでね。


・・・と、作者の言葉から始まる「0ファイター」です。



1966年、少年キングに連載されました。 同じ頃に描かれたカーレースを題材とした漫画が少年ブックに連載された吉田竜夫の「マッハGoGoGo」、「少年」に連載された横山光輝の「グランプリ野郎」(「少年」は途中で休刊になり「少年ブック」に受け継がれる)がありますが、何と言ってもアニメ化された「マッハGoGoGo」が知名度と共に人気もあったのではないでしょうか。


しかし、この「0ファイター」、望月作品としての見所満載! 単なる自動車レースを扱った作品とは一味も二味も違います。
主人公はレーサーに憧れる「南郷たけし」。
所は富士サーキット。 たけしは毎日のようにレース場に忍び込んでヘアピンカーブを走る一流レーサーを見つめていた。
そんな時、男が現れ「レーシングカーに乗ってみないか」と言われる。たけしは喜んでレーシングカーに乗るが、レーシングカーに乗るのは初めての事、案の定事故を起こしてしまいます。しかし、たけしの走りは大レーサーになる資質を感じさせる走りだったのだ。

こうして「0ファイター」はレース漫画を期待させるオープニングで始まりますが、実はこの作品、良い意味で「ハチャメチャ」です(笑) 言い換えれば、望月テイスト溢れるダイナミックで大胆な展開の漫画。様々な要素が入り混じった作品なんです。


たけしの家は古い長屋の貧乏暮らし、父を助けようと自動車板金修理工場でアルバイトを始めます。
そこでいきなり銀行強盗が現れてカーチェイス!
かと思えば、ヤクザと長屋との抗争に首をつっこんで賭けレースをするハメに・・・・・


左が賭けレースの様子ですが、なかなかハチャメチャでしょう(笑)。レースというよりはクルマの格闘技って感じですね。

・・・と、ナンダカンダあって、いよいよ本格的なクルマのレースへと展開していくわけですが、そこは望月漫画、ここで普通に進むわけありません。
たけしは通常のレースを経験し、世界的なビッグ・レースに挑むことになります。
世界的で名誉なレースとあって、各チームの技術合戦は半端のものではありません。スパイ騒動が起こり、たけしはある博士と知り合います。
そして、人間ドラマを挟みつつ、いよいよ「0ファイター」の誕生へと展開していくわけです。

その前に下のページを見ていただけますでしょうか。
通常のレースの見開き2ページの一場面ですが、コマ割りといい迫力といいアングルといい描写といい実に魅力的なページだと私は感じます。レースの迫力が充分伝わってきます。1966年に描かれた事を考えると、とても素晴らしい作品だと思います。

スパイ騒動の最中で出会ったのは神山博士。 ある目的のためレース用の車体を作り上げていた。
しかし、その車体に見合う肝心なエンジンが無い。 さて、その車体に見合うエンジンとは・・・・・・
そう・・・ 900馬力もあるゼロ戦のエンジンだ。
しかし、そんな戦時中の戦闘機のエンジンをどうやって手に入れるのだろうか?
ここから更に劇的な展開が繰り広げられるのだ。 下手したら、いやいや下手しなくても絶対国際問題に発展するようなハチャメチャな展開を繰り広げます!
そして、スッタモンダあってゼロ戦のエンジンを手に入れるわけですが、そのゼロ戦のエンジンを積んだレーシングカーの仕組みが凄いのです!
私の勝手な想像ですが、後の「マシンハヤブサ」の礎になったのではないかと思うような大胆な設定は度肝を抜かれますね。
豪快というか想像を絶するというか、正に望月作品の醍醐味ですね。

さて、その仕組みは「X回転器」と呼ばれる装置でエンジンを逆振子のように動かしクルマ全体の重心を変えるというもの。 左へ曲がる時はエンジンが左に傾き、右へ曲がる時はエンジンが右に傾き、重心を常に曲がる方向へ寄せる事で車体が浮くのを防ぎ、スピードを上げたままでコーナーを曲がっても転倒しないという理屈です。
どうです!大胆な発想でしょ! それを解説したのが下の画像です。クリックすると大きな画像で見られます。

そして、ゼロ戦のエンジンを積んで完成した「0ファイター」は、いよいよ世界的に注目を浴びる「24時間レース」に参戦するのです・・・・・

冒頭に紹介したように、いきなりの銀行強盗、ヤクザとの抗争、賭けレース、スパイ騒動、人間ドラマ、即国際問題になりそうな騒動等々・・・・・1作品の中に様々な内容詰めまくりの上、望月テイストを充分感じさせる作品となっております。
また、「0ファイター」は1966年の作品ですが、そんな時代の外車なんて超高嶺の花だったはずです。そんな頃に様々なスポーツカー、スーパーカーも登場します。 フォードGT、マスタング、BMW2000、ポルシェ・カレラ6、アストン・マーチン、ジャガーEタイプ、フェラーリ250GT、コルベット、トライアンフ、フェアレディ等々・・・・話の中に登場するクルマや何気無く公道を走っているクルマは殆ど実在のクルマなんですねぇ。 豪華なスーパーカーが登場した「サーキットの狼」が連載されるずっと前の作品ですから、先の先を行っていたのですね。 また、細かい所も手を抜かないこういった「こだわり」には感服しますね。



クライマックスでの24時間レースで登場する「0ファイター」以外のレーシングカーの仕掛けも豪快だったり、クルマ好きでもそうでない方でも見所満載の作品です。
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それでは「0ファイター」の車両を紹介して最後にしたいと思います。
下記のイラストは、オリジナル作品に私のアレンジを加えてレーシングカーの雰囲気を出してみました。
最後まで読んでいただきありがとうございました!



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望月先生のコメント
車も趣味のひとつなんです。
この「0ファイター」も好きな車種を続々登場させたわけ。
描き分けてるってホメてもらってますけど、そりゃ私から見たら当たり前で、 好きなクルマですから、その特徴をややオーバーなくらいに楽しんで描いているわけ。
なにしろ実車は高くて買えません、手が出ません。
悔しいから絵の上でぶっ壊したりしてたんでしょうねぇ。
なんという ひがみ。
それがストーリーの意外性や迫力ある絵になっていく。ひがみも捨てたもんじゃない。
生かすって手もあったようで。

実際車好きですから、手の届くところの車は何年かごとに買い替え色々乗ってきました。
若い頃、お金もないことで、軽自動車からスタート、360ccのクルマ。
これで横浜から山中湖、箱根まで行ったのですが、10時間かかりました。
渋滞ではないんです。エンジンが過熱して、オーバーヒート・・・
箱根の坂の途中、休み休みエンジンを冷やしながら行くわけで。
30分休んでもすぐ又黒いケムリがエンジンから吹き出されてくるって始末。
今の優秀な日本車じゃ考えられないような出来事だったんですねぇ。
それがマイカーなんですから、ジャガーEタイプなんて夢の又夢・・・

その10年後、故赤塚不二夫さんとたまたましゃべってる時、ジャガーの話になり 彼曰く、「ジャガーはいいよ『モッチャン』。なにしろ丈夫だ」と、さすが巨匠、ジャガーです。
でも、その時はベンツのSL450に乗ってましたけど。
で(なので)「今なぜジャガーじゃないの?」って聞きますと、 「そのジャガーは、山の坂道で転げて谷底へ何回転もしたんだけど、スリ傷付いただけど、又すぐそのまま直って、ウチへ帰ったんだ。丈夫だよねぇ」って・・・
どういう乗り方してんだこの人・・・。 本当、赤塚さんらしい車評です。
その折、「今乗っているベンツ450SL、他の車へ乗り替えたいと思ってるんだけど、 良かったら譲ってもいいよ」って話になりまして、「但し、あと1年は乗りたいから1年後にね」と・・・ しかも破格の中古値ですよ! いやもう、1年が待ち遠しかった。

・・・で1年後、赤塚さんに電話「約束の日です」と。
赤塚さん、「悪いねぇ。実はあのベンツ、ウチの居候が今乗り回して帰ってこないんだよ」
「居候、ちょっとテレビ出だしてきて、カッコ付けにと、あれがいいって」
そういう訳で、私のところへベンツは廻ってきませんでした。
その時の居候とは「森田」という人だったのですが、イグアナの真似が 気に入ったってアトリエに居候させてた赤塚さん。 ホント、大物だ!
エピソードの方がメインになったようで申し訳ない。
例の性格で、過去の作品は殆ど記憶の底に残っていないもので・・・・・

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コメント/トラックバック

  • 健太郎 :
    ランシオさんの作品紹介、とても楽しく読ませていただきました。嬉しくなって何回も読ませていただきながら、「0ファイター」こそ、先生の作品の魅力がギュッと詰まった傑作だということがよく分かりました。納得です。
    登場人物や作品全体のおよそのあらすじもよく分かりました。望月テイスト溢れるダイナミックで大胆な展開、様々な要素が入り混じった作品なんですね。よく分かります。特に、見開き2ページの一場面ですが、ランシオさんが仰るとおり、コマ割りといい迫力といいアングルといい描写といい実に魅力的なページですね。動きがありますね。アップやいろいろなアングルからも描写されていて、凄いです。迫力あります。魅力的ですね。また、様々なスポーツカー、スーパーカーも登場して、これまたいっぱい楽しめますね。
    「X回転器」と呼ばれる装置は、エンジンを逆振子のように動かしクルマ全体の重心を変えるという仕組み、ほんとうに誰も考え付かないような凄いアイディアですね。
    語り尽くせない先生の作品の魅力の一つに「アイディアの素晴らしさ」が挙げられますが、ほんとうにそうだなと思いました。
    先生のオリジナル作品にランシオさんのアレンジを加えてレーシングカーの雰囲気を表現されているイラスト、じっくりと鑑賞させていただきました。車両がきれいに洗車されて、ピカピカな様子がよく分かります。フロント部分のつや、光沢の表現、よくででいますね。タイヤも全部同じ色でなく濃さに工夫がされていて光が当たったような立体感、質感が感じられます。少し見えている機械部分、とても精密・緻密ですね。コクピットがガラスで覆われていることもよく分かる表現にびっくりです。スモークがかかっていますね。ボディ全体の質感も凄いです。カラーリングやシールなどレーシングカーのおしゃれがいっぱいですね。素晴らしいですね。
    とても楽しめました。ありがとうございました。これからも、ランシオさんの楽しい記事を楽しみにしています。
  • ランシオ :
    ★健太郎さん>

    いつもコメントありがとうございます。
    望月先生のコメントでは、「過去の作品の記憶は殆どない・・・」っておっしゃってますが、
    ボクが勝手に想像するに クルマ好きな先生が、クルマに対する情熱をタップリ注ぎ込んで描いたんじゃないでしょうかね。
    その証拠に文中にあるように沢山のクルマが登場しますし、画期的な装置のアイデア等々・・・情熱がなければ描けないですよ!

    今回の執筆、楽しんでいただいてとても嬉しいです。
    そして、是非、望月先生の魅力タップリの「0ファイター」も読んでください!
     
  • ぐりゅーん・へるつ :
    私からすると、ランシオさんのようなクルママニアからの視点はとても斬新で興味深いです!イラストも素晴らしいと思います。リベットが味が出ていて良いですよ(笑)。

    しかし航空機用の星形エンジンをクルマに搭載するとは、いかにも望月先生らしくて素晴らしい。どんなジャンルの漫画でも「そっち」に結びついて行っちゃうんですよね。

    星形エンジンには男のロマンを感じますよね。カッコいいもの(笑)。

    最初期のヘボピーのマシンは、排気管の並び方からすると星形エンジンを(航空機同様)縦に搭載しているように思われるのですが、いかがでしょうか?
  • ランシオ :
    ★ぐりゅーん・へるつさん>

    ありがとうございます。
    確かに星形エンジンは魅力的ですよねぇ。
    最初期のヘボピーのバイクですが、確かに考えられる事です。
    実際星形エンジン積んでるバイクもありますしね。
    ワイルド7登場の時代を考えると、かなり最先端をいってたって事ですよね。
    望月先生ならそんな設定もあると思います!
  • 速鬼正文 :
    0 ファイターか、懐かしいですね、
    中学生の時、学級文庫に置かれていた
    本作を夢中になって読んでいました。
    ところで、脱線しますが、赤塚先生の所に
    いらっしゃった、居候さんの森田さんって
    もしかしたら、タモリさんのことかな?

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