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コラム:言いたい放題

第35回

光陰矢の如し。そして、おめでとう!

執筆者:   2011 年 8 月 7 日

80年代、アジア女子選手権が香港で行われました。
当時は「ムーラン」っていう台湾チームが抜群に強かった。私、役員で日本代表チームに着いて行きました。
理由は? 私、香港人に友人が多かったからだと思います。

そういう効果、確かにありました。
捻挫した選手が出たときなど、香港の友人に相談すると病院より街中の薬局へ連れて行かれるんです。その伝統ある店ってのが薬を塗るだけじゃァなく、その場でマッサージ師がいて対応してくれる。ものの10分も足首撫でていたかと思うと、嘘のように普通に歩ける。
いや、さすが東洋医学、千年の歴史。

参ったのは、4日も経つと選手の半分以上が食事が摂れなくなる。慣れない中華の毎日で食欲不振、油の臭いで「もうダメ」って状態。
私など大好物ですから全然食欲落ちませんけど、海外遠征初めてに選手はきつかったんでしょうねぇ。
しょうがない、マネージャーと一緒に香港三越百貨店へ出掛けて、佃煮やお新香、海苔、昆布・・・・・ あらゆる日本食らしきオカズを買いまくり、これでなんとか選手は食い繋いだ、なんてこともありました。

ま、そんなところからスタートしたサッカー女子代表、今はプロ意識で逞しい、ついに世界のトップですよ。
関係者のひとりとしてあまりに早い世界一に驚き「食を征するものは、世界を征する」って格言、思惑。
ちなみに、それより更に10年前の杉山(隆一)、釜本(邦茂)ってメキシコオリンピック銅メダル組、インドネシア遠征ではホテルの食事にコウモリが出たって・・・・ それでも食うという逞しさ、“食”をバカにしちゃいけません。

で、なでしこフィーバーになるとは、そこまで予想してませんでした。
みなさん見てくれました? FIFA女子ワールドカップ ドイツ2011。
30年も以前から女子サッカーの関係者やってきた私としても予想できなかった。急坂一気に登った選手たちって感じですね。
イングランド、ドイツ、アメリカ・・・・・ どこも日本とレベル差のある強豪国、“運”次第。順当なら砕け散るだろうと予想していただけに、びっくり。何よりの勝因は、パスに尽きます。ただし止まっている人を相手にパス回ししていたらダメ、走りながらのパス受けるために走るパス、それを全員が意識していたのが大進歩でしょう。
FCバルセロナみたいと言われたのは無理もない、これまで一対一の体格の違いで吹っ飛ばされていたシーンが俄然少なくなった。体格勝負ではなくぶつかる前にパスして足元からボールをなくすんですから、相手は当たりようがない。
この戦術、徹底させた佐々木監督の眼力は只者じゃないね。

更に今、海外のチームで戦っている選手が少なくなかったというのも強み。
たとえ一つのルーズボール争って身体ぶつけ合っても、負けない動きと強さ、備えたんですねぇ。あの体格のいいドイツ人選手と一緒にリーグ戦やってりゃ自然に身に付くんでしょね。
ただし不安は相変わらず、一試合に何回かある大ポカ、パスミス。頭が疲れてくると起こるんです。そこを油断なく狙っているのが一流国。それを逆襲、一発ゴールに結びつけるところが年期が入っています。
ですから私、予想として一試合の中で何度ポカをやるかで結果が出ると思ってました。
ありましたよ、必ずポカは出る。 が今回それにめげず、なんの取られたら取り返せばいいの!って気持ちの切り替えの早さ、いやこれには驚かされました。女性の方がいざという時、腹が座るって聞いてましたが、パスミスにめげることなく、澤(穂希)なんて選手は自分でそれを修正しちまうってとこ、おぬし只者ではないなって思いましたよ。

最近では男の方がミスを長く引きずっているようで、気持ちの切り替えの早さって“技”じゃないんだから、明日からでも覚えられる“技術”なんです男子諸君。9月からのブラジルW杯アジア予選、“気”でトライしてほしい。「世界ランク上位国日本」なんて気で試合に臨んではダメ、宮本武蔵じゃないけれど“気”で80%“敵を殺す”んです。“技”に頼らないとはそういうこと。

ひとつ気になるのは、“熱”“フィーバー”。
今は持て囃され、ガードマンを付けようかという状態。 ・・・・が続きません、熱はいつか下がる、高熱が下がっても平熱は長く保つ。そのために協会も一時のボーナス数百万払うより、そのお金で今後の海外遠征に飛行機もビジネスクラスを使うとか、用具係増やして個人で大荷物を持たせない等々、少しでも試合以外で疲れさせないことに大金を使ってほしい。
さらに次の世代の代表を育てるため、候補合宿の数を増やし、そこへ金を使ってほしい。
今日より明日、続いていくのです、歴史は。





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