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望月マニ也

第65回

イベントレポート「田辺節雄原画展」

執筆者:   2013 年 9 月 8 日

望月先生愛弟子 田辺節雄氏の原画展へと勇躍応援に駆けつけたランシオ、ちっちご両人。猛暑の国東で市主催にて開催されたイベントのレポートが早速届けられました。

平成25年8月1日~31日、大分県国東市「アストくにさき」に於いて、くにさきが生んだ漫画家・田辺節雄先生の原画展が開催される事になり、開催日の8月1日(木曜日)にオープニングイベントが行われました。top_pic
そして、田辺先生の師匠である望月三起也先生、弟弟子の土山しげる先生も参加されました。

今回は、その様子を私ランシオが私自身の視点でレポートしたいと思います。
まず始めにお断りしておきますが、望月先生を始め漫画家の先生方と初めてお会いするテンションの上がった単なる一ファンとしての言動、振る舞い、お許しくださる様お願いいたします(笑)


当日早朝宮崎市を出発し、大分市内で同スタッフであるちっちさんと合流、国東市へ向かいます。 国東市は快晴。30度を超える暑さ、初めて望月先生にお会いする私のテンション、緊張も気温に負けないくらい上昇中!  午前11時前に現場へ到着、控室へ先生方に挨拶に向かいました。
控室に近づくにつれ高まる胸の鼓動。 そして、扉の前・・・ どんな表情をすればいいのか、どんな言葉をかければいいのか、ほぼ頭が真っ白な状態で望月先生、土山先生とご対面。 しかし、お二人の笑顔に救われ、なんとか無事挨拶ができました。 そして、少し緊張が解けたところで厚かましくも記念撮影、テンションはマックスです!with_pic

しばらくして、会場入り口に於いて、開会式が始まりました。
今回の主役である田辺節雄先生を筆頭に
望月三起也先生、土山しげる先生、
そして、小池一夫氏のお弟子さんである小堀洋先生、川崎のぼる先生の御子息のかわさき健先生が並びます。
暑い中、開会式には小学生を始め、様々な年代の方が沢山いらっしゃっていました。
この後開催されるトークライブが盛り上がりそうな予感です。
opening
その前にまずは腹ごしらえ、昼食の場所へ向かいます。
民家を改装したとても雰囲気の良いレストランです。
目の前には、地元の食材を使った美味しそうな料理が並んでいます。
再び厚かましくも先生方とランチをご一緒したのですが、厚かましくご一緒した割には、始めは緊張でせっかくの料理の味がわかりませんでしたね・・・(笑)
先生方も料理に舌鼓を打ちながら、料理や素材の話題で盛り上がっていました。特に印象的だったのは、土山先生が料理の写真を撮っていらっしゃったところですね。今後の資料にされるのかな?(笑) そしてランチ中盤、土山先生、小堀先生の話をきっかけに話題は禁煙の話で盛り上がり、望月先生のキッパリと禁煙できたエピソードも飛び出し、他の先生方が興味深く聞いてらっしゃいましたね。 ランチをしながら沢山のトークが聞けて、もうこの場で充分なくらいの楽しい時間でした。lunch

そして、ランチも終わり、次はいよいよトークライブです!
テーブルには田辺先生、望月先生、土山先生のお三人が並んでいます。
まずは田辺先生の地元の恩師から花束贈呈です。
恩師から学生時代のエピソードも飛び出し、田辺先生、ちょっと照れてらっしゃるようでした。
今回の進行役を務めるのは、カエルぷろの内情?(笑)を知るJUNさん。 どんな話題が飛び出すかワクワクして始まるのを待っていました。
3人の先生方の紹介が終わり、トークが始まります。flower
最初は田辺先生の地元国東での幼少期の話題で、どんな遊びをしていたのか? どんな子だったのか? 漫画は好きだったのか? 絵は得意だったのか?いつから漫画を描くようになったのか・・・等々飛び出し、田辺先生のルーツを垣間見る事ができました。
そしていよいよ望月先生との出会いの話題へ・・・
弟子入りの経緯や面接の時の話題、そして望月先生の第一印象、望月先生から見た田辺先生の第一印象を皮切りに望月先生のお喋りに火が付きます!(笑)  田辺先生の当初の画力の話やカエルぷろ内での田辺先生のエピソード。そして、人となりまで次から次に・・・
talkshow更に弟弟子の土山先生も加わり、次々とエピソードを披露。 写真の照れる田辺先生と、思いっきり笑顔の望月先生の様子を見ていただくと、その雰囲気が伝わりませんか?
田辺先生の人柄の良さからか、失敗談やマイナス面の話題が飛び出さない事に進行役のJUNさんが、トリガーを引きます(笑)
「師匠に内緒で悪い事しなかったんですか? 今日は無礼講なので話ちゃいましょう!」
期待してエピソードを待っていたんですが、無いんですね・・・
しかし、土山先生から飛び出したエピソードが一つ!mochi_tsuchi
カエルぷろ時代、望月先生の決めた決まり事が、「必ず8時間は睡眠をとる。余程の事が無い限り徹夜はさせない。」というのがあって、就寝時間が決まっていたらしいのですが、就寝時間を過ぎてから、田辺先生と土山先生とで、かえるプロを抜け出し映画を観に行っていたそうです。
それが今回のトークショーで出た田辺先生の唯一の悪事(笑)でした。田辺先生のお人柄が伺えますね。
そして、トークの内容は田辺先生の作画や表現方法の取り組み方やこだわりの話へ・・・
「戦国自衛隊」における銃を構えるポーズや引き金を引く指へのこだわり方から初期の動物パニック物の凄まじい描写と表現方法等々貴重な話が進む中、望月先生がおっしゃった一言が、「田辺くんは、当初あまり上手じゃなかったんだよねぇ」 最近の田辺先生の漫画しか知らないボクにとっては驚きのコメントでしたね。
更に表現方法の話は広がり、土山先生の食材の描き方、いきなり見開き2ページをつかってカツ丼が「ドォ~ン!」と描かれるインパクトある描写や望月先生の描き文字(擬音)の大胆で自由な表現の話、そして、望月先生と田辺先生が、逆に描き文字をあえて使わず、シーンの緊迫感や臨場感を膨らませる手法等々興味深い話題が沢山出ました。
kawa_kobori途中から漫画原作者の小堀先生とかわさき先生が加わり、原作と漫画についての話題が進んでいきます。
そして、田辺先生とタッグを組んだ小堀先生のコメントの中で、「私は原作を考える際にストーリーや設定を頭の中で漫画を描いているようにイメージを膨らませていきますので、ある程度自分なりにビジュアルが出来るのですが、田辺先生は期待以上の作画をしてくれます。」とおっしゃっていました。
ひとしきり原作と漫画の話が続いた後、田辺先生、小堀先生、かわさき先生がゴルフ漫画を担当されていたので、話はゴルフの話題になり、田辺先生のゴルフの腕前の話になると、ご本には凄く照れてらっしゃったのが印象的でしたね。(笑)
トークライブの途中、イーゼルに置かれたパネルに望月先生、土山先生、田辺先生がそれぞれ代表作のイラストを描かれます。3illust望月先生が飛葉ちゃんを描いている途中に「カエルぷろ時代、ヘルメットに描かれているワイルドのマークなどは俺じゃなく弟子に描かせていたんだよねぇ。ジャンボ(土山先生愛称)、描いてよ!」とおっしゃって、マークだけを残し、赤いワイルドのマークとヘルメットの格子模様を土山先生が描かれたのです! いやぁ~、この飛葉ちゃんは、土山先生がカエルぷろ在籍時代以来の合作となる超貴重なイラストではないでしょうか! 素晴らしいぃ~!
そして、「ワイルド7」、「極道めし」、「戦国自衛隊」のコラボレーション・イラストパネルは、最後の抽選会のメイン賞品になるのです!
clearfileそして、トークライブは終盤を迎え、プレゼント抽選会に突入!田辺先生がご用意された17枚のクリアファイル。何と!それぞれ違うイラストが描かれています。これを先生方一人ずつと会場のお客さん全員でジャンケンし、勝ち残った方がゲットできます。
そして最後に貴重なコラボ・イラスト。私もスタッフながら参加させていただきましたが、1回目で敗退・・・ いやぁ~欲しかった!
このイラストをゲットされた方、さすがに凄く喜んでらっしゃいました。

大盛り上がりだった抽選会の後は質問コーナー。小学生の女の子からご年配の方まで様々な質問が飛び出します。中でも多かったのが、田辺先生に対して国東を舞台にした漫画を描いて欲しいという要望でしたね。

盛況の内にトークライブも終わりを迎えます。 先生方が退場される訳ですが、皆さんお客さんのサイン攻めにあっていたようです。先生方、最後までお疲れ様でした。2sign
とは言え、先生方と初対面の私は、先生方が落ち着かれた頃にサインをお願いした次第です・・・
あ、望月先生の写真を撮り逃した・・・
田辺先生は8月4日(日)まで会場にいらっしゃるので、そのまま国東に残られますが、望月先生、土山先生はそれぞれ帰路に着かれました。
田辺先生、望月先生、土山先生、小堀先生、かわさき先生
そして、運営された地元スタッフの皆様方、関係者の皆様大変お疲れ様でした。
楽しくも貴重な時間を過ごすことができました。


ありがとうございました!

最後に「田辺節雄原画展」の様子を少しだけ紹介します。
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お待ちしております。
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望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
13_08_01田辺節雄原画展_0011国東よいとこ。
いやァ、なんとも熱いなァ。人情味というか、人のつながり大事にするってぇのか・・・・
私にとっては田辺節雄は大事な弟子のひとり。それが地元ふるさとで取り上げられるとなれば、何を置いても盛り上げに駆けつけなきゃってことになる。もちろん、イベント主催の行政から頼まれたわけじゃない、勝手に手弁当で押し掛けるわけ。
今回のイベント企画してくださった、国東市役所の有長さんの情熱に負けてらんないもんね。
私はそういうわけですが、兄弟子の晴れ舞台に「私も放っとけませんよ」と土山しげるが手を挙げ、トークショーなら仕切りの進行役必要でしょうってアスカが同行、同じ釜の飯を喰った仲。
さらにですよ、現地には描き手だけじゃなく、読み手も2名参加してくれるって。それがランシオさん、ちっちさんで、望月一家だって。嬉しくなるね。

会場のようすはランシオさんが見事に活写レポートしてくれているので私の出番なしです。有り難いねぇ。いつもはコメントだけのお付合いですが、こうしてたまに顔を合わせてしゃべるのはいいもんですね。
九州ったって広い。それを南の宮崎から何時間も掛けてクルマで来てくれる。有り難いし、嬉しいですねぇ。大阪から来場のちっちさん共々、他の先生方のサイン貰ってましたが、こういうときがチャンス、サインなんて中々手に入らないからね。

13_08_01田辺節雄原画展_010413_08_01田辺節雄原画展_0116










また今回、40年ぶりに顔を合わせる旧友もいたりして・・・・
これがトークショー終了直後に廊下で顔を合わせたのですが、「どっかで見たような・・・・」で、話を始めて正体が判明。若い頃の顔がだんだん浮かんでくるわけですよ。
今回主役の田辺節雄が、まだうちで弟子修行していたころ、その当時は“タベ”って呼んでまして、いまだに仲間内では土山もそう呼んでます。そんなころ、寿司屋修行中の青年『富安くん』、タベや私の弟と大の仲良し。アトリエ(仕事場)での仕事は深夜12時を過ぎることもままあり、そんなとき夜食を運んで来てくれていたのがこの『富ちゃん』だったってわけ。
この夜食が商売ものの寿司飯。客の入りが少なく飯が余ると、お櫃抱えてうちへ持って来てくれる。市内でも一流の寿司屋ですから誠に美味。それを当時は弟子が7人はいたと思うのですが、一気に群がって、アッという間にお櫃はカラ。これが週一くらいで、深夜のアトリエでの楽しみだったのですよ。
プライベートでもタベや弟はこの富ちゃんと、休日にはドライブなどで遊んでいたようです。
で、今は故郷の福岡へ帰っており、今回の田辺節雄原画展及び、トークショーを聞きつけて大分に現れたってこと。歴史だね。

それにしてもこの国東市、古き良き日本が残ってますねぇ。ヨコハマで生まれ育っ13_08_01田辺節雄原画展_0158た私が子供の頃、今の住まいから4kmも奥へ入ったら同じような光景だったのですよ。
まず驚かされたのが、大分空港から市内へ入り5~6分経ってやっと信号がひとつ。
「な、なんなんだ?」
その後も思い出したころに信号が現れる。四つ角、交差点は一杯あるンですよ、なのに左右見てお互い譲り合って通行する。いいねぇ、人間の原点ですよ。
うちの近所じゃ、目の前5m先の信号が赤なら通りは渡るなって。左右見渡してもクルマはゼロ、それでも信号が青になるまで待つのです。
バッカじゃないの?って思うンです。
完全に機械が人間を支配してますね、都会の嫌なところだ。そこへいくと国東市、居心地がいい。人が人らしい。
少し山の方へ入ると二階建ての入母屋造り、古い日本の家。それが道路脇、畑の向こうに現れては消え、素晴らしいドライブでした。空気まで新鮮に感じられました。

泊まったところは老舗料理旅館『海喜荘』というのですが、これが歴史を感じさせる中庭に巨大な石橋や鯉の泳ぐ池。そこを囲む和室から中庭を眺める障子は『雪見障子』といって、上下して、一部ガラスを使った凝ったもの。久々布団の中から中庭を眺めるって幸せ味わいましたね。タベも実家へ泊まらず、一族で我々と宿泊。

その晩飯が、いやはや豪華!! 
地物の魚中心なんですが、生まれて初めて“オコゼのお造り”ってもの食べたンですが、身だけじゃなく、皮から胃袋まで、余すところなく食べられる。こんな刺身って、あったンですねぇ。いやァ、舌が喜んで踊りを踊っているって感じ。土山しげるなんて人のものにまで手を伸ばしてくるって感激ぶり。
13_08_01田辺節雄原画展_0089さらに驚かされたのが、女将さんが持って来た30cmはあろうかという大きな朱塗りの鉢、この鉢の蓋を取ると真っ赤なタコが1匹丸ごと座り込んでこちらを睨んでるじゃありませんか!目の前の海でさっきあがったものだって。これを女将さん、見事なナイフ捌きで各人に取り分けてくれるのです。
ただの塩茹でなんですが、いやァ、その美味ったらない。
これまた土山が私の分、大半持っていってしまいました。相変わらず飲むは食うはで、まさに食のジャンボ。
酒とくるとうるさいのが小堀洋さん。なんでも卓に出されたものは地元の名酒と言われているものだそうで、ここはジャンボ土山と酒談義で大盛り上がりしてましたね。

大満足の食事でしたが、食後の私、ひとり勝手にコーヒー飲みたいってワガママ。なにしろこの旅館の周りは民家、スナックひとつないって場所。ありがたいことに女将さんがコーヒー好き、わざわざコーヒー炒れてくれましたよ。ツイてたねぇ。和風旅館でまさかの豆から挽いたコーヒーですよ、翌朝も2杯。やっぱり味にうるさいのは和も洋もない。
いい宿でした。

そういう“もてなし”って気持ちが、この国東にはあるんだなってのが、訪問先の数ヶ所かで感じられました。
こういう風土が田辺節雄の絵に表れているンだなって。丁寧な作画、手抜きしない。読者を大事にもてなしているンですねぇ。

それにしても国東市で腰痛の薬を買ったけど、今だ直らず。歩くのにも苦労している毎日で・・・・・
って、最後にボヤいて、国東ルポの終了。

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