月刊望月三起也タイトル画像
作品紹介

第20回

FMレコパル・ライヴ・コミック

執筆者:   2010 年 3 月 1 日

ファンの間で伝説となり、また単行本化を望む声の多さでも群を抜く、それが『FMレコパル・ライヴ・コミック』シリーズ。著作権や諸々の権利によってこの先もファンにとって延髄の……

去年、掲示板の方でも少し話題になっていたので記憶に残っている方もあるかと思いますがその昔、『FMレコパル』という小学館発行のFM放送番組情報誌がありました。
1974年に創刊され、1995年に廃刊されるまでの間でワタクシが愛読していた期間は1983年から1985年の間の2年間。その当時の雑誌は今も実家の倉庫で眠っています。
その『FMレコパル』の中に不定期で『レコパル・ライヴ・コミック』というコーナーがあり、著名な音楽家やアーティストを漫画で紹介するというページをいつも楽しみにしていました。執筆されていた先生方も毎号変わり、興味深く読んでいたのを覚えています。

ワタクシが初めて購入した『FMレコパル』が1983年9号。
この号に当時日本でブレイクしてた『STYX(スティクス)』が、『レコパル・ライヴ・コミック』に取り上げられていて、それを描かれていたのが望月三起也先生なのでした!
なんという偶然!いや、コレってやっぱり必然なのか!?何でも捨てずに取って置いておくモノですね(笑)

この頃はMTVのプロモーションビデオが盛んに流れており、スティクスもご多分に漏れず当時『 Mr. ROBOTO 』という曲をヒットさせていました。1983年の日本の洋楽シングル・チャート4位という結果から見ても、そのブレイク加減は分かって頂けるかと思います。特に30代後半以上の方、若い世代の方でも近年CMなんかにこの曲が起用されたりもしているので聞いた事があるという方も多いのではないでしょうか?
知らない方は『You Tube』なんかの動画サイトに流れていますので参考までにご覧下さいませ。
(参考サイト http://www.youtube.com/watch?v=3cShYbLkhBc)

・・・さて、話を戻します。
ワタクシがこの曲を知り、興味を持ったのが曲の最初に入る日本語の歌詞。

ドウモアリガト、Mr.ロボットまた会う日まで・・・
ドウモアリガト、Mr.ロボット秘密を知りたい・・・

しかしそれ以外の部分は英語の歌詞で、その曲が何について歌われているのか?
当時中学生だったワタクシの英語力では分からなかったのですが、それが望月先生の
漫画で内容を知る事が出来たのでした。
・・・ストーリーは?
近未来、有線テレビが発達したアメリカでの話。
Dr.ライチャスという独裁者が『MMM』(音楽道徳保護同盟)を支配し、ロック公害を説く。
未来ではロックを演奏するのも聴くのも犯罪者にされ、監獄にブチ込まれる・・・。
犠牲者の一人、ロックミュージシャンの『キルロイ』が主人公。看守はライチャスの信者。
その監獄で作業しているロボットが日本製というストーリー。
囚人はロック中毒者と呼ばれ、『MMM』の洗脳テレビが一日中がなりたてる中で生活している。
10年間、洗脳の為の説教しか流れてこなかったテレビに突然響くロック!そのビデオに10年前のキルロイが映し出され、忘れていたロックの響きに頭を殴られた様に感動する囚人達・・・。
何故、こんなビデオが流れたのか?それは『キルロイ』のファンである『ジョナサン』が監獄に忍び込んで、ケーブルチェンジをしたからだった。・・・警棒を振りかざし襲い掛かる看守に、「もう少しの間見せてやろうぜ。ヘビーなロックをよォ!」
身をかわし看守を殴り倒すが、看守も負けてはいない!腰の拳銃を抜き、
「放送消すか、てめえの命を消すか。選びな小僧!!」


クゥ~!これこれ!やっぱり望月先生の漫画にはガンアクションがよく似合う!?
(でもこの話では実際にガンは火を噴かないのですけどね・・・(笑))

ピンチの『ジョナサン』!その時ロボットが突然現われ看守の腕を捻り上げ、銃を取り上げ殴り倒す。ロボットに誘導され監獄から脱出する『ジョナサン』このロボットが実は・・・

余談ですが、この仏陀風な顔を持つ『Mr. ROBOTO』。デザインは故『スタン・ウィンストン』氏。
「スタン・ウィンストン?誰それ!?」って感じですが、『ターミネーター』の特殊メイクとサイボーグ骨格のデザイン、ジュラシック・パークの恐竜のデザインも手掛けた人って言えば分かって頂けるかと思います。

再度、話を戻しますとロボットだったと思っていた『ソレ』がマスクを脱ぐとなんと『キルロイ』が!
ロボットの協力を得て、脱走の機会を狙っていたのだという。
2人が暫く行くと其処にはロックのシンボル的建物『パラダイス・シアター』が。『キルロイ』が10年前ライヴを開いた記念すべき場所も今はロックの博物館、と言うより『蝋人形館』の様になっていて、あの『ビートルズ』や『エルビス・プレスリー』も害虫扱い・・・。壁には『武器』と書かれた札の横にギターが展示してある始末。蝋人形の中には『キルロイ』も。その人形が持っていたギターを『キルロイ』は『ジョナサン』に手渡すと、
「ともに闘おう!!ロックの夜明けに向かって!!」
・・・成る程、そういうコンセプトがあって出来たアルバム『Kilroy Was Here』だったのですね。

望月先生の漫画はそれらを分かり易く、またテンポよく読者に伝えてくれました。やっぱり凄いです!
このキルロイ・・・実は調べてみると実在する人物、『ジェームス・キルロイ』に由来される様ですが気になった方は調べてみると面白いかもしれません。

・・・さて、この『FMレコパル・ライヴ・コミック』
『ワイルド7 Forever』(http://takumi.main.jp/wild7/index.htm)の作品リストには以下の4作品が紹介されていました。
★レインボー(ヘビー・メタルの騎士)1982年 №14
★パット・ベネター(マンハッタンへ・・・)1982年 №26
★スティクス(ミスター・ロボット~キルロイ・ワズ・ヒア)1983年 №9
★マドンナ(パパ叱らないで)1986年 №17
それ以外にも調べていくと更に4作品、リストには出ていなかったのですが確認できました。
★アルトゥーロ・トスカニーニ(タイトル、掲載年不明、1975年以前?)
★ジャック・ティボー(枯葉)1975年 №2
★ジョルジュ・シフラ(第一楽章 大脱走)1975年 №6
★パブロ・カザルス(タイトル不明)1975年 №12?

実は『ジャック・ティボー』と『ジョルジュ・シフラ』は、古書で購入して所有しています。この2冊、望月先生の名前と共に『つちやましげる』先生のお名前が!疑問に思ったワタクシは失礼を承知で土山先生にコンタクトを取らせて頂きました。・・・そして土山先生のお返事。
「実は、その当時の記憶がほとんど無く・・・」えぇ!本当ですか!?話が古過ぎましたか?
・・・ですが、「ネームの直しが何度もあったような気がします」とお答えを頂きました。
「独立後、仕事が少なく暇をもてあましていた時期、師匠宅へ行って、ご飯を食べさせてもらってました(笑)」
「そのころ師匠から、共同での仕事を頂き、それがレコパルの作品です。」・・・と。他にも望月先生との共同作品がいくつかあるのを教えて頂きましたので、それらを調べてみるのも楽しいかも知れません。
土山先生、お手数をお掛けして申し訳ありません、今回は有難う御座いました。

しかし、『FMレコパル・ライヴ・コミック』調べるとまだありそうな感じがします。奥が深いです。
実は前回作品紹介で書かせて頂いた『雨小僧』の前に、今回の『FMレコパル・ライヴ・コミック』を書きかけていたのですが、途中でボツにしていたのを引っ張り出して続きを書かせて頂きました。

今回もお目汚し、失礼いたしました・・・では。


望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
『雨に唄えば』って映画、劇場で7回も観たってのが若き日。
ジーン・ケリーが雨の中でタップダンスをするシーンは何度観ても感動するね。デビー・レイノルズって女優の笑顔がいい、今もって私の中で歴代ナンバーワンの好きな女優。次がオードリー春日・・・じゃなくてヘップバーンなんです。
3番目がこの映画に一部出てくるシド・チャリシーって足の綺麗な女優。レイノルズも足では一歩譲る理想の足。こちらタップではなくバレーなのですが、優雅というのはこういう動きだって見本。

この映画だけでなくミュージカル大好きで、フレッド・アステアというタップの神様みたいな役者もおりまして、この人の映画もまたほとんど観ている。今もDVDでかなり出ていますから、興味のある人はどうぞ500円払って損はない。
・・・・と思うのは私だけか?
人間の身体ひとつでこれほど迫力ある動き、表現できるのかと驚かされます。

F・アステアの方は映画ならではの工夫が凝らされている。
『恋愛準決勝戦』の中で地上から壁を伝い、天井にまでタップで踊り上がるシーンは舞台では不可能、映画ならではのアイデア。
まぁ 他にも数多くこうしたトリック使ったのがF・アステアだったわけで、今はそういう映画がゼロになったのは寂しいですねぇ。と同時に戦争映画、西部劇も大好きってのが私の青春時代。
この二つは私の漫画に活かされていると思うのですが、ミュージカルは活かしようがない。なにしろ漫画に音楽は付きませんから。
なのに音楽を漫画にって企画がFMレコパルからあった時は、正直参った。臭いを漫画にしろっていうのと同じでしょ。
もっとも土山しげるなんてのはそれに近いことやってますが。
「美味い」を漫画で描くわけですからね。

多分、原点はこのFMレコパル、相棒としてやった頃の私の苦労見ていたからね。なにしろミュージカル大好きの私ですが、実はクラシックもロックもまるでオンチ。
今回はこの人で描いてくれと編集部に頼まれると、ほとんど「その人、だれ?」って具合だったのです。
ですから得意の活劇仕立てで美味しく調理してみたり、まさにあの手この手でなんとか音楽漫画なんてものをこしらえたって、まァ 苦労しました。

当時連載物も他にやってまして手が足りず、土山クンに画を助けて貰ったわけで、ちっちさんに当時の一編見せて貰って、なんか懐かしかったねぇ。

またちっちさんもそういう物を取っておくってのがスゴイね、うちにはもうFMレコパルもありませんからね。
と、まァ オンチが音楽物も描いてしまう図々しさ、世の中なんとかならないことはないが私の人生訓です。
「なるさ」で過ごしてきた私です。



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コメント/トラックバック

  • sillazman :
    数ある先生の作品の中から、「雨小僧」に続いて「レコパル・ライヴ・コミック」、取材の方も
    芳崎せいむ先生に続いて、今回は土山先生へ突撃とはマニアっ振り、全快ですねぇ。

    それにしても、確認の取れている全8作品だけでも、クラシックからロック、ヘビメタってのは、
    小学館もなにを考えて、望月先生に仕事を振ったんだろう。

    以前、掲示板へ書き込んだように、ヤフオクで落としてジョルジュ・シフラは読んだのですが、
    大分、ご苦労されたみたいで、表紙と内容に随分とギャップがあるように感じたけど、STYXの方は
    上手くアレンジされていて、なかなか面白そうですね。
    「Mr. ROBOTO」も望月先生が描いた方がカッコ良いじゃあないですか。
    元ネタの方は、最初に見たときに「通天閣のビリケンさん」じゃんとか思っちゃいましたもの。

    先生の描く女性は魅力的なので、マドンナ、パット・ベネターはカットだけでも見たいなぁ。
    レインボーは以前、掲示板でNaoさんが云ってた作品ですね。SF仕立てで上手くまとめてありそう。
    あと、トスカニーニは逸話の多そうな人だから、なんとかなると思うけど…、
    チェロ奏者のパブロ・カザルスとかどうしたんだろう。まぁ、それはそれで興味は尽きません。
  • ちっち :
    sillazmanさん

    コメント有難う御座います。マニアの方の足元にも及びませんが、ご一読頂けて嬉しく思います。

    また、土山先生からもお話が聞けた事や、この機会を設けて頂いた事にも感謝しています。

    実は、パット・ベネターは表紙だけ見た事があります。片膝を立てたエアロビスタイル?の。
    内容が気になってはいるのですが、残念ながら未見です。

    上記作品意外にも「こんな作品もあるよ!」または「持ってます!」っていう方がいれば
    是非教えて頂きたいですね~・・・
    ホント、興味は尽きません(笑)

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