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望月マニ也

第77回

ワイルド7な用語の定義と解説

執筆者:   2014 年 9 月 8 日

誰もが、ついつい読み飛ばしてしまうような所に、あえて注目するのが、いかにも神田さんらしいです。
まるで研究発表のように仰々しく解説してあるのもミソですね

km_tittle 望月三起也先生は、建築学科の御出身とか。
成程!と思います。
望月先生は、コメディのような場面でさえ、言葉の使い方が厳密、かつ、適切です。
実は、建築学科で最初に習う事は、専門用語の定義と解説です。
その経験からか? それとも、無意識か?
先生は作品ごとに、言葉の定義を設定しているのでは・・・と感じます。
では、ワイルド7流用語の定義とは如何なるものか。
今回は、そんな視点で、読み解いていこうと思います。

【エメロンちゃん】
km_002定義:
一目惚れしたワイルド達が、勝手に作り上げた女性像。
または、その女性の名称。
参考となる女性は実在するものの、正確には、本人と無関係

解説:
エメロン シャンプーは某大手洗剤メーカーの看板商品でした。
テレビCMでは「ハニー・ナイツ」と言う男性コーラス・グループの甘い声を起用。
女性の購買層を主な目的とし、大々的に宣伝していました。
値段は手頃。
銭湯でも売っているほど普及し、結構、はやったようです。
しかし、香料が強い。
洗剤の殆どは、アルコール類です。
アルコールは、油にも水にも溶けるという、珍しい特徴が有ります。
でもアルコールを安く作る事は、当時とても難しく、異臭が残りやすかったのです。
だから、多量の香料を入れる事で、価格を低く抑えていたと考えられます。
初期のエメロンは、髪の長い女性には余り、おすすめの商品ではなかったかも・・・?
km_003_2実際にエメロンちゃんと呼ばれる女性が使用するシャンプーの銘柄も、不明です。
隊員たちが妄想する女性像と、現実の女性の間に、何処となく開きが感じられます。
彼らのガサツなセンスで作られたイメージが、ドンドン暴走して行く様が伺えます。
恋にのぼせ上がり、思考能力が停止したワイルドたちの精神状態を表した単語。
それが「エメロンちゃん」です。

【雨】
km_004_2定義:
空から落下する水滴。
捜査、戦闘など作戦行動の上で、大きな要因。
不利に成るか、有利に成るかは、状況判断しだいの物

解説:
ワイルド7では、雨天の中での作戦行動が、たびたび見られます。
バイクによる任務遂行が多い彼らにとって、雨は大変な事です。
でも、雨天中止とは成りません。遠足とは、違います。
実は、平均すると1週間のうち、1日は雨が降る日です。
ところが、バイクによるアクション作品は、雨天の設定が余り有りません。
何故でしょうか。
2輪車は、スリップしやすいからです。
そして、雨による視界の悪さが、その危険性を高めるからです。
スピードが出せず、バイクの機動性が、半減してしまいます。
その第一の理由が、道路のアスファルト舗装です。
最近は、ガラス・ミックスが、ずいぶん多く成りました。
耐摩耗性が向上し、わずかな光でも反射するので、視認識にも有利です。
しかし連載当時のアスファルトは、違います。
耐摩耗性が低いので、できて暫く経てば、ツルツル。
km_005おまけに見え難く、ほんの僅かな要因で4輪車でさえ、スリップした程です。
ポイントのガラスは主に、資源ゴミとして回収されたビン等のリサイクル材です。
皆さん!ゴミは分別して出しましょうね。
身の回りの、思わぬ所で役に立っています。
あれ?・・・何の話だったっけ。
あ。そうだ。アスファルト舗装でした。
とにかく、当時の舗装は滑りやすく、見えにくかったのです。
でも、ワイルド達は、そんな悪条件を物ともしません。
時にわざとバイクを横滑りさせて敵に接近するなど、利用する場合さえ有ります。
さすがは飛葉。
不利な要因も味方に付ける、見事な判断力です。

他にも雨には、証拠を消してしまうと言う難点が有ります。
追う立場のワイルド達には、好ましくない状況です。
雨は戦闘だけでなく、捜査にも妨げと成ります。
km_006ところが、彼らは、その雨をも証拠としてしまう時が有ります。
例えば、雨で消えそうなタイヤ跡を見つけ、「最近、侵入者がいた」と気付く事も。
そして、この証拠を発見したのが、なんと!・・・あの、惚れっぽい八百です。
エメロンちゃん病を患っていなければ、八百の思考力も、たいしたものです。
不利な条件も有利に変えるワイルド7。
その象徴が「雨」です。

【医院】
km_007定義:
名医のいる診療所
解説:
医療法により医療機関は、規模によって名称が変わります。
病床数が20床未満を診療所。通称は医院。
病床数が20床以上、200床未満を病院。
そして、200床以上が総合病院と呼ばれます。
建築基準法によって、病院、総合病院は、第一種低層住居専用地域、及び、第二種低層住専用地域、工業地域、工業専用地域での建設が認められていません。
それに対し診療所は、用途地域の別に関わりなく、どこでも建設可能です。

km_009ワイルド7は、その任務ゆえ、さまざまな時と場所で重傷を負います。
雨さえ味方にしてしまう彼らも、超人では有りません。
やはり、人間です。
通常ならば、医療機関は病院、可能なら総合病院が、おすすめでしょう。
複数種類の専門医がいて、検査機器、治療設備も豊富だからです。
しかし立地上、目立ちます。
戦闘不能の状態では、命取りと成りかねません。
事実、草波隊長に警察病院へ連れて行かれた八百。
km_008多数の警官が、ガードを固めた大病院に入院した飛葉。
共に敵襲を受けています。
いくら大きくても、医療施設は砦に成らないようです。
故に、隊員たちは、目立たない診療所での治療を選ぶ傾向が有ります。
そうです。
彼らにとって、治療もまた、戦闘と同じ任務遂行の一部なのです。
高級官僚でありながら、決してエリートではない、孤高の存在です。
km_010その孤高の命を守るのが、地域医療を担う町医者たちです。
しかも、目立たない場所に開業する老練で経験豊富、機転の利く医師たちです。
ワイルド達は、そんな名医がいる診療所を探し当てる、独特の嗅覚を持ちます。
但し、それらの診療所は目立たないだけに小さく、入院施設が無いようです。
恐らく、彼らは何処かに潜伏し、自力で看護しているのでしょう。ワイルドです。
だから、敵が「死んだ」と思っていたワイルドが、突然に姿をあらわし、神出鬼没ぶりを印象付けます。
敵は「こいつ、不死身か?」と恐怖します。
勿論、彼らは不死身ではなく、背後には無名ながら、優れた医師が存在します。
そして、その名医がいる場所が「医院」です。

【大病院】
km_011定義:
病院、及び、総合病院。
任務終了後に傷を治すための施設。
任務遂行中の時は、かえって危険。
但し、入院を要するほど重傷な場合、やむなく選択すること有り。
その時は、細心の注意を必要とする

解説:
ワイルド7の強い味方、名医のいる「医院」の欠点は看護です。
医療は治療と看護に分かれます。
この2つは似て非なる物です。
km_012治療を担当するのが医師。
看護を担当するのが看護師。
両者とも専門分野のプロフェッショナルです。
そして、入院施設を管理するのは、看護師の方です。
医院の場合、看護師の人数は少ないのが、普通です。
また、入院施設も無い事が多く、有ったとしても充実していないのが一般的です。
ワイルドも、入院が必要な場合は、大病院を選択します。
目立つ地域の大きく複雑な建物。
複数の医師や看護師との接触。危険です。
だからワイルド達の態勢も、医院の時と、ガラリ変わります。
km_013_2まず、病室は大部屋。多数の入院患者がいる部屋を選びます。
人目が多い方が良いのでしょう。また、他の隊員に状況を周知させます。
連絡を断ち、気配を消し、自力看護の医院治療と正反対です。
他の隊員たちも、見舞い来るなど、居場所がバレてる事を前提で行動します。
明らかに威嚇です。
それでも奇襲攻撃までは、完全に防ぐ事ができません。
でも、攻撃の種類は、直接的な手法に限られます。
複雑な罠は不可能です。

ところが、最終章では、飛葉と八百は、別々の個室に入院します。
くだらない言い争いで八百と一緒に居た病室から、飛葉が隣室に移ってしまいます。
km_014隊長らしくないミスです。
やはり、一人に成った八百は、用意周到な敵の作戦に引っ掛かりました。
鉄壁とも思えるワイルド7に、小さなホコロビが見え出します。
結果、八百は命を落とします。
小さなホコロビは、大きな打撃と成ります。
一見、最強に見えるワイルド7も少人数の組織。一人欠けるだけでも致命的です。
そして、ワイルドは弱体化、隊員たちは次々と死んでいきます。

建築学だけでなく、ワイルド達にも用語の定義と解説は、重要なようです。
さあ。貴方も、ワイルド7流用語の定義を探してみませんか。



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望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
相変わらず目からウロコと言いますか、ためになります。 病院と医院の違いがベッド数20床~200床だとか、きっちり、用語の使用含めた解説が恥ずかしいながら楽しい。勉強になります。

道路にガラスミックスって舗装、こういう知識はネタに使えます。また逆にいうと困ることも。
現在、巨大な壁面を作るようなガラスは、昔と違って粉々に割れて鋭く尖った欠片はできない。ってなると、武器には使えないじゃないですか。ガラス片ってのは定番の活劇シーンを盛り上げる工夫だったのに、時代の進歩がまたひとつネタを無くしたなんて方向。それだけにこういう神田さん的読み方、解説の仕方が楽しみですねぇ。
さらにお堅いばかりではなく、エメロンシャンプーなんてのも取り上げる柔らかさ。これも幅があって思わずニヤリッとしてしまう。

でも、こういう文章を読ませていただくと時代を感じます。と、同時になんかノスタルジーなのか、呑気な社会だったような・・・・・ 今ほど他人は敵みたいな事件が新聞賑わす社会じゃなかったンでしょうねぇ。
その昔、思えば我が家は玄関の鍵を掛けたことはなかったねぇ。私の小学生時代などは鍵どころか、行商人というか荷売りというか、野菜や魚、かに等、天秤棒を持ち背中の籠に満載して一軒づつ住宅街を回り、オバチャン、オッチャンが売りに来てました。そういう人たちの商品を玄関で買ったついでに食事時なら、「ちょっと中へ入って弁当使った?(※注)」と、お茶を出したりとほのぼの交流があったなァ。

そのうち私が一本立ちして自宅がアトリエとなり、多いときで八人もの弟子が同居するようになると、夜中までライトを煌々と点けた家となり、ドロボーも入りようがない。したがって玄関に鍵を掛ける必要もないし、うちの隣近所は空き巣も強盗も入ったことがないって感謝されてもいたもんです。
ところが近ごろはアパートやマンションが増えたせいか、空き巣被害が何軒か続いたようで。我が家、夜中まで灯り点けてないし、早寝早起きしてます。それが空き巣を喜ばせちまったのかね?
今は玄関の鍵を掛けてます。 ・・・・・うちも。


(※事務局:注)横浜下町では、その昔、こういう言い方で労をねぎらっていたそうです。

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  • 神田雅治 :
    今回は、八百を主人公に書いてみました。
    次回は、他の主要メンバー、ヘボピー、両国、オヤブンなんかを
    主人公に書いてみるのは如何でしょうか。

    読者の御意見を乞います。

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