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作品紹介

第65回

乱反射

執筆者:   2014 年 7 月 8 日

ワールドカップが舞台のこの作品……と、いっても、サッカーものではなくバリバリのサスペンスに仕上がっているのが、いかにも望月流。 珠玉の読切短編です。

扉絵==============================================

今から44年前の1970年、サッカーワールドカップメキシコ大会が
開催されました。

優勝はサッカーの王様「ペレ」が率いるブラジル、2位はイタリア。

その時のブラジルチームの選手だったのが、「ジャイルジーニョ」。
(小さなジャイールという意味)
本名「ベントゥーラ・ジャイール・フィリオ」(Ventura Jair Filho)。

なぜ今その話をするかといいますと、これからご紹介する作品
『乱反射』に関係しているからです。

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カフェ・・・物語の舞台は南米のとある町。

W杯開催中で街中はサッカーファンがかたずを飲んで
試合を見守っている最中。一方、まもなく大使が通過する為、警察は日本人の暗殺者が潜んでいるという情報
に基づき街中を捜索中。暗殺にもってこいの大通りに
面したカフェに立ち入ると3組(旅行中のカップル、酔っ払いの絵かき、おネェ?の中年男)の日本人が・・・。
はたしてこの中に暗殺者がいるのか・・・!?


カップル酔っぱらいの絵かきホモ










暗殺を企てる者と、それを阻止しようとする警官が相手の裏をかきながら、あの手この手で繰り広げられる
知恵の比べ合いがスリリングな見どころとなっている一篇で、そこに登場する地元の女性を巻き込んでの
一大群像劇としても楽しめる傑作です。
ラジオ10
物語の序盤からラストまでずっとラジオの実況放送が流れていて、サッカーW杯の中継をしているのがわかります。

ラジオから「ブラジル」という名前が登場するので片方のチームは
間違いなく「ブラジル」、当時の選手は前述の「ペレ」や「ジャイルジーニョ」。

相手チームは「ミューラー」という名前が出てくるので「西ドイツ」の
選手の「ゲルト・ミューラー」ではないかと推測されます。

つまり、ストーリーの中で「1970年ワールドカップメキシコ大会」の
優勝戦で実際にはなかった「ブラジル」対「西ドイツ」の幻の対決を
漫画の中で描かれておられるという事です。
(実際には2位のイタリアに敗れ西ドイツは3位)

男と女3さて、大使の到着まであと少し、はたして暗殺者はどこに?

どうやって暗殺するのか?

一方試合もいよいよ佳境、得点は「3対2」でブラジルがリード、試合時間は
残り1分、ミューラー最後のシュート、ブラジル逃げ切るか!!

惜しくもボールはバーを叩いた・・・。ブラジルが優勝!!試合終了・・・と同時に
この物語も終わりを告げた・・・。

男と女の愛と未来と共に・・・。

ラジオ7
この話でも描かれていますが、各国のサッカー熱、特に
南米のサッカーへの入れ込みようは、渋谷のスクランブ
ル交差点で騒ぐ日本のファンとは比べ物にならないほど
凄まじく、試合の日は会社も学校も休みのところもあると
いうほど、国を挙げてサッカー観戦するぐらいですから、
もし優勝なんかしようものなら場所時間関係無くドンチャ
ン騒ぎが始まると聞き及びます。

ただ、2002年の日韓大会の時、日本でもそれに近いも
のがありました・・・。私の会社の取引先が、あろうことか
大事な約束事を忘れてしまって大変でした。それも日韓
試合の翌日に・・・。(苦笑)

それらの混乱状態をうまく取り入れて、もしかしたらありえそうなストーリーを作られるとはさすが望月先生。

MIKIYA M


ところで、このお話に登場するメインキャラクターには名前が付いて
いません。

まぁ望月漫画ではストーリーにのめり込んだら別に名前は不要なの
ですが・・・。

唯一固有名詞が出てくるのは、ラジオから流れてくるサッカー選手の
名前と、このパスポートぐらいですか。(笑)




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乱反射
カフェの女2

1973年 ビッグコミックオリジナル(小学館)11月5日号
(読切全27頁)

1974年 ハードコミックス(大都社)『薔薇のイブ』全1巻併録
(8月30日初版発行)

1984年 ハードコミックス(大都社)『薔薇のイブ』全1巻併録
(6月20日初版発行)

ebookjapanでも購読可能です。コチラまで。
(『薔薇のイブ』巻末に収録)



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望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
このころは、短編(読み切り)というものがかなりありまして、これはこれで別世界。30ページとか40ページなんていう少ないページの中で、いかに読者を楽しませるか、その難しさは大変ですが自分も楽しみ半分苦しみ半分、なんですねぇ。
その割にストーリーは1編30ページ前後に使って終わり。長編ならそのストーリーを含め週刊誌連載でも半年は持たせられるけど、シチュエーション含めキャラクターなんかも気に入って、「これは新しい!いいねぇ!!」と思っても、1回きり、30ページ(前後)でおしまい。実にもったいないのが読み切り短編。
美味しいケーキが!・・・・ と思っても、ホールじゃなくてワンピース。いや、一口分かもね。
掛ける手間ひまは、ホールと同じなのにねぇ。

ページ辺りの手間自体も決して得じゃない、でも金銭に替えられない魅力なんですよ、これが。
30ページ前後の中でしか表現できない工夫やタッチ、ストーリーなどがあるわけで、そこで読者を唸らせる。ってとこに毎度挑戦して、ときに戦い敗れるときもありますが、ある意味、長編では描けない世界。それが魅力。
そう、eddy-sさんのように40年も前に読んでの感動を未だに持っててくれる読者がいる。そこ、描き手は「やったぜ!」と喜ぶ人生、至福のときなんです。

今では細かいストーリーなんてまるで忘れています。
当時、代表戦の試合の放送もあったりなかったりという、サッカーのお寒い時代に、ただサッカー好きの元祖サポーターとしては、なんとかサッカーをメジャーにしたいと、ワールドカップなんてサッカーにとってはメジャーな世界を舞台に持って来て、「ワールドカップってのは、こんなに凄いンだぞ!」と、知って欲しいという隠れた企みでもあったわけで、F・ベッケンバウアーなんて選手の名前も当時の読者の何人が判ってくれたか。
今じゃサッカー選手も名が知れて、ミューラーかメッシかってほどの有名人となってますが、こういった作品も含め単行本化されるときは、長編のページ不足を補う形で本の後方へ回され付録扱い・・・・・ 残念です。

今FIFAワールドカップ ブラジル2014、ベッケンバウアーはドイツサッカー協会の会長さんだから、多分VIP席で観てるンでしょうねぇ。
ちなみに私は、ドイツの優勝と予想しています。

もうひとつ、そのベッケンバウアー現役時代に撮ったツーショット、持ってるンですぞ。
私の宝物のひとつ!



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