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作品紹介

第72回

宇宙ハンター55

執筆者:   2015 年 3 月 10 日

史実とフィクションの融合。望月先生お得意のジャンルです。それもギャグとなると、それはもう独壇場。この作品も裏切りなし。笑って唸らせてくれます。

55_01少年画報社の「ワイルド7」コミックには付録として短編がいくつか納められていて、「宇宙ハンター55」はその中の一編です。
収録されているのは第16巻「緑の墓」の後編。
「緑の墓」連載時は私がリアルタイムで少年キングを読んでいる頃で、確か小学校の高学年だったと記憶しています。
その時代の多くの少年同様、プラモデル作りに夢中になり、学校から帰ると近所のおもちゃ屋でレベルの1/72の戦闘機を一機買って作るのが日課でした。

その後は同社の1/32の軍用機を作っては天井から吊るしては喜んでいる内にドンドン増え、さながら空中戦状態となってしまいました。
そしてタミヤ模型の1/35ミリタリーミニチュアシリーズのドイツ軍モノに嵌まって、車両の他フィギュアの改造にも興味を持ち、ジオラマも何個か作りました。

当時流行っていたタミヤ主催の人形改造コンテストに触発され、仮面ライダーVSショッカーの情景やワイルド7のメンバーも全員1/35スケールで再現したりもしました。
そうそうドイツ軍のBMWのバイクをチョッパーに改造して“世界のバイク”って喜んででいたっけ。
そんな少年時代でしたので、ヒットラーやドイツ軍には一方ならなぬ興味を持っていました。
だからこそ「宇宙ハンター55」は未だに思い出深い作品なのでしょう。
「ロゼ・サンク」に再度収録されたので、読み返された方も多いのでは?

物語の始まりは地球以外のとある惑星に住む小学生の夏休みの宿題、そのテーマは「地球統一」(凄!)
55_02舞台は第3帝国崩壊寸前のベルリン近郊。

一応戦争物なのでライフル以上の火器、兵器がメインとなり私の専門の拳銃で印象的に登場するのは、ヒットラーのワルサーPPKくらいです。
一応と書いたのは作品のジャンルとしてナンセンスコメディーのSFではないかと思いますので。

55_03クリスマス クリーン略してC・C=WC、、、よって便器が空を飛ぶ!?

ヒットラーも便器で飛びます。
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55_0655_07私が印象に残っているのは、実は冷蔵に入れられていたヒットラーの生首!
いや道具なので「生首」は正確ではありませんね。
兎に角インパクトがある絵だったので未だに記憶に鮮明に焼付いています。

最近になって要らないフィギュアを処分しようと服とボディーとヘッドとに分類していたその中にヒットラーの12インチフィギュア(1/6スケール)がありました。
頭だけになったヒットラーを見てその記憶が瞬時に蘇えりました。
次の瞬間にはネットで1/6冷蔵を検索(笑)勿論、あの頃の時代のイメージに合うモノなどなく、、、
無い物は作るの精神で、今度はスチレンボードを探していました!
最初はリアルに作ろうかとも思いましたが、絵のイメージに近付けるべく、細部はマジックで書きこみました。
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55_10ライバルはPTA会長の息子、嫌な奴だけど最後はチョット可哀想かな・・・



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「連合軍ノルマンディー上陸」「ヒットラー暗殺事件」「アルデンヌの反撃」そして「ソ連軍ベルリンへ突入!」
ときに1945年4月30日と史実に基づきストーリーは展開します。

こんな増速機あったら、私も欲しい(笑)



そして戦車も宙を舞う。
その車中には便器を探し一路ベルリンを目指す少年の姿が!





55_12歯に付けられる「翻訳機」
こう云う発想は流石です。

さて!となりのPTAやろうの妨害にめげずに、少年は地球をひとつの国にまとめられるか?

旭工房 仲代光希
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宇宙ハンター55

1973年 
 週刊少年キング(少年画報社)4・5合併(1月29日)号 掲載
 ヒットコミックス(少年画報社)「ワイルド7」16巻収録

2008年
 コミック文庫(ぶんか社)「ROSE V(ロゼ サンク)」収録

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望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
仲代さんもこれほどのプラモデル同好の方とは初めて知った。いつも“お硬い”Gunのお話しかしてなかったもので。
レベルの1/72なんて、いいなァ。私もかなり空中を、いや、我が家の天井を飾ってます。そこからタミヤのミリタリーへってコースも王道でしょう。
人形改造の方まで行ったのは大したもの。仮面ライダーからワイルド7まで、全員ってとこが大変だね。ドイツ軍のBMWバイクを「世界」仕様のチョッパーバイクに変身させたとは驚き。そこら辺りの改造好きが今の拳銃作り(プロップ)に繋がってるンだろうね。

冷蔵庫に入れられたヒトラーの首って絵をリアルにプラモで再現?
「これ、作ろう!」って、思う人、千人に一人・・・・ いや、万人に一人じゃないかなァ。
確かに私としてはギャグ漫画なんですが、ギャグって「リアル」が根底にないと嘘とデタラメだけで、読者にバカにされます。チャップリンがバナナの皮を踏んでひっくり返る。その演技をいかにリアルにオーバーにやるか、苦心したそうです。人の不幸を笑う・・・・ 人間の残酷な一面ですね。それだけに嘘っぽい転び方は観ている側をシラケさせる。だからこそ如何に本当らしく、しかもオーバーに演じるか、その努力がチャップリンのギャグの原点なんですねぇ。
だから私も、この作品でも、如何に本物っぽさを出すかがギャグの本道だと思って描いたわけです。

それにしても、こういったものが自由に描けた時代があったのですよ。今の若い人、編集者も含め『不自由な漫画』しか描けてないような気がするンだけどねぇ。 もっと幅を広げて、ジャンル固定させずに可能性を追求して欲しいなァ。若い漫画家のそういうのを見たい!!


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