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【ひとこと作品紹介】雷神サブー

第9回

雷神サブー

執筆者:Ken

お待たせしました!
お馴染みKenさんご紹介の単行本未収録作品のコーナー。
今回発掘してきたのは、アラビアンナイトのおとぎ話?
かと思ったら、不思議な魔人が戦うのは戦闘機という「科学冒険まんが」!
作品一覧やネット検索などで、タイトルを見かけたり付録の表紙絵を見ていたとしても、ストーリーが想像できない謎の作品だった人も多いのでは?
そんな方は、お待たせしました!その正体をシッカリ確かめてください。
また連載を夢中で読んでいた方は、当時を懐かしく思い出しながらジックリと堪能してください。

【作品名】
雷神サブー

【掲載誌】
まんが王
(1964年9月号~1965年3月号)全7回連載
(1965年お正月増刊号)全1回読切

【あらすじ】
舞台はアフリカ大陸のラーマという架空の国の物語。
独立記念日に王宮の庭で外国客を招いて競技会が開催されていた。

客の中には国としてあまり仲の良く無いルンガ国の大使もいた。
とその時、ルンガ国の大使が暗殺者に撃たれて負傷する。
本来ならばラーマ国王が狙われたと思うだろう。
だが大使は国王に向かって
「お芝居はおよしください。わざと私たちを暗殺するためにやったのでは?あなたの国から戦争を仕掛ける気でしたね」とにじり寄る。

一方、ラーマ国王の専属医師の息子・南部鉄太郎(主人公)が競技大会に参加しており、暗殺者を追いかける。
なんとか暗殺者を捕らえるが、後からやって来たルンガ国大使館の車に乗った連中に暗殺者は殺されてしまう。
鉄太郎はこの状況から敵国のルンガがこのラーマ国に戦争を仕掛けていたことに気づいた。
だがその苦労は報われず、間も無く戦争が始まってしまう。

南部親子と国王の3人は攻撃の激しい街から離れて「王家の谷」に向かったが、そこにも敵国の戦闘機が攻めてきた。
彼らは丸腰なので相手と闘える体勢は無い。
そのとき国王は昔からの言い伝えを思い出す。
常に身に付けている首飾りの石を王家の谷の巨人像の台座へはめ込めば国は救われるというもの。
早速、石で造られた巨人像の足元にある台座に首飾りの石をはめ込む。
すると巨人像をまとっていた石がひび割れ、中から「サブー」と叫ぶ怪物が現れた。
戦闘機からの攻撃が激しくなり、国王は台座に向かって「雷神さま、お助けを!」と叫ぶ。
その瞬間、怪物の肘の部分から火を吹き出し、空を飛び、たくさんの戦闘機を瞬時にやっつけてしまったのだ。

ここでこの怪物および台座について整理したい。
怪物は人間にも見えるし、空を飛ぶのでロボットにも見える。
国王は「これは雷神さまじゃ」と言うが、どうやら台座は持ち運び可能な操縦器で、首飾りの石をエネルギー源として怪物が動作する仕組み。
操縦器はそれを持つ人の心を読み取り、希望通りに動いてくれるらしい。
だがよく観ると戦闘機との戦いでエネルギーを大量に消費し、首飾りの石は小さくなっていた。
この石は貴重なもので他には王宮の部屋に1個あるのみ。
このことから怪物が活躍できる時間には限りがあることがわかった。

そうこうしているうちに敵のルンガ国からの攻撃は過激になり、国境周辺は既に敵の手に渡り、王宮周辺も占領されつつあった。
軍隊だけでは反撃は困難。この危機を回避するには雷神に頼るしかないが、活躍できる時間は残り少ない。
そこでもうひとつ存在するエネルギー石を手に入れるしかないと判断する。
それには敵陣が占領している王宮の部屋へ乗り込む必要がある。
鉄太郎は勇敢にも王宮に戻り、なんとかエネルギー石を手に入れたものの、逆に雷神と操縦器を敵国連中に奪われてしまう。
一方、連中は既に石の持つエネルギーを使い切ってしまい、代わりの石を探し求めるが、結局エネルギー石は見つからなかった。

戦いは過激化し、国王たちは最後の決戦を計画した。
敵陣の首謀者がいる本拠地に乗り込み、操縦器を取り戻し、雷神のチカラで敵国軍を一掃しようというもの。
ラーマ国側の兵隊は残り少なく、兵器も十分では無い中で鉄太郎たちは知恵を絞って敵陣に乗り込み、奇跡的に操縦器を見つけることに成功。
それに向かって
「雷神よ、来てくれ!敵軍をばらばらにふっとばしてくれ!」と叫ぶ。
すかさず雷神が空を飛んで向かってくるが、敵も黙ってはいない。
ミサイルを使って雷神の到着を邪魔する。
鉄太郎たちが先に捕らえられてしまえば、操縦器と共に雷神も敵国側の物になってしまう。
雷神は無事に到着することができるのか? 危機一髪の状態でクライマックスを迎える。

【作品解説】
本作品は月刊誌『まんが王』に連載され、SF要素で味付けした初期戦場アクションの単行本未収録作品。
SF主体では無いが望月作品の中では最初のSF要素を含んだ物語となる。
当時の月刊誌には付録と称してB6サイズ(12×18センチ)48頁程度の小冊子が添付される場合があった。
本誌の続きを分量のある付録で読める親切設計で、全7回の連載中に4回以上の付録が存在した。
本誌でさえ古書店やオークションで入手するのはハードルが高いが、付録となるとさらに入手は困難を極める。
そうした事情もあってコンプリートはできておらず蒐集中のステータスで、クライマックスをまだ見ていない。

ちなみに付録表紙裏に記載された望月先生のひとことを紹介したい。
「これはぼくが前から書きたかった物語です」
「ターバン姿がたくさん出てくるので正しく上手に書くため、日本にいるインド人に教わりに行きました。教わった通りに巻いたはずなんですが見事失敗」など。
戦記物だけでなく初期の頃からSF的志向に関心があったことを知り、ターバンの巻き方など手間暇をかけて情報収集する若かりし頃の体験談にも触れることができた。
なお発表された64年末~年初は週刊誌連載の『秘密探偵JA』(65年1月~)のスタートと重なり、作品構成の準備を含めるととても多忙な時期だったと推測する。

本作品には雷神というユニークな巨大怪物が登場する。
見た目は人間のようだが、空を飛べることからロボットである。
当時、巨大ロボット漫画と言えば横山光輝先生の『鉄人28号』(56年~66年連載)が有名。
操縦器を使うところが似ているものの鉄人はまさにロボットの外観だが、雷神は見た目が人間というところがユニークで何度か音声を発する場面がある。
望月先生の後期作品『黒い砂(ブラックサンド)』でも巨大ロボットが登場するが、こちらは体内で操縦するモビルスーツ的。
外部からの操縦型ロボットが活躍する作品は貴重な存在と言えるだろう。


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2021 年 4 月 1 日   固定リンク   |   トラックバック(1)


コメント/トラックバック

  • 西園寺ちーむ :
    >架空の国の物語
     望月さんはターバン…そんな作品まで描いてたんですか。
    ターバンと言えば月光仮面、レインボーマンはいつでしたかね。なんとなく似ている。
     雷神…と言えば、日独伊の三国同盟ならぬ、日独墨(メキシコでしたか?)の三国同盟の架空の協定と日中戦争終結架空の基の日米戦争漫画、
    真珠湾攻撃の後、戦艦大和はメキシコ湾へ…の特殊空挺部隊“雷神”と言う戦記もの
    あれも日本優勢で(続編は有りませんが)始まり面白いし人情味溢れる作品で泣かされました。
     話は戻りますが、サブーってタイトルもなんとなくターバンを?から?イメージしたんですかね。なんとなくそんなタイトルの付け方(が結構ありますよね)の作品…って私は好きです。

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