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【ひとこと作品紹介】深い森の中の声ガルーダ

第12回

深い森の中の声ガルーダ

執筆者:Ken

今回もまたKenさん発掘の単行本未収録作をご紹介。
これまで数々の珍しい作品を取り上げてきたこのコーナー、そんな中でも異色中の異色といえる幻の一作が、満を持しての登場。



【作品名】
深い森の中の声ガルーダ

【掲載誌】
「月刊ニコニココミック」(世界文化社)1987年2月号

【単行本】
未収録

【ページ数】
35ページ

【あらすじ】
高校生の「竜太」は地下鉄の車両の中で、勇ましくもある魅力的な魔女と闘っている。
彼の手には斧の様な武器が見える。
周りには乗客がいるものの、みんな知らないフリ。
ひとりでその魔女に挑んでいるのである。
運よく武器が彼女の足にヒットし、その拍子に床に倒れる。
そのタイミングで魔女の頭にしがみついていた怪物がいきなり竜太に襲いかかって来た。

さて場面はいきなり学校の教室の中。
竜太はまさに試験の最中。
だが周りの同級生の目には問題を解いている様には見えず、夢を見ながら唸っている姿が映っている。
一方、試験を監督するはずの女教師の「魔会先生」も眠りながら唸っていた。
どうやら竜太は夢の中で闘っているらしい。
その女教師の足からは血が流れていた。

ここで話を整理すると、竜太は特殊な能力を持っている。
覚醒時の世界で近距離にいる敵を、夢の中の世界で実際に闘うことができるという能力。
他の生徒達からは女教師として見えているが、その実態は魔女であり、彼女と竜太は夢の中の地下鉄車両内で闘っていたのである。

この能力を竜太が手に入れたのは、数日前に不思議な婆さんと知り合ったことに始まる。
婆さんに異次元の世界へと連れられ、殿下と呼ばれる大物怪物の前で「この子が選ばれし戦士『ガルーダ』なのです」といきなり紹介された。
戸惑う竜太に向かって殿下は今までの経緯を話し始めた。

この世界が闇の力に侵されて地球滅亡の日が近づいているらしい。
竜太は、その闇の勢力と戦うために選ばれた戦士の一人とのこと。
まずは身近にいる女教師が闇の世界の一員であり、当面の目標は彼女を学校から追い出すこと。
これを聞いて正義感溢れる竜太は戦士として立ち上がることを決意する。

そんなとき、クラスメイトのワル「京子」が知り合いの女子生徒を虐めているとの情報を受け、竜太はまず京子を成敗しようと計画。
夢の中で怪物の姿に変身した京子とのバトルが始まろうとしていた。
と、ここでいきなり「END」クレジットが表示されて話が唐突に終了する。

【作品解説】
本作品の冒頭3ページがフルカラー刷り、加えて本誌表紙にも主人公の颯爽たるイメージがカラーイラストで飾られている。
この主人公のカットは表紙専用に描かれたもの。
このような体裁を見ると、大作の新連載を連想させるような熱気が伝わってくる。
だが本誌の奥付にはなんと残念な休刊のお知らせが。
実は「月刊ニコニココミック」は本作品の掲載号をもって休刊となってしまったのである。

同誌に連載中の漫画のどれもが話の途中で終了している様子を見ると、間際で休刊が決まったものと推測される。
おそらく望月先生は連載を想定したSF大作の構想を持っていたものの、この突然の状況を受け入れざるを得なかったのではないか。
こう考えると、最後のコマのENDクレジットの意味が見えてくる。
残念なことに幾つもの伏線が回収できずに終了してしまったのである。

ところで望月作品の中でSFものと言えば『アイアンホース(IRON HORSE)』(1979年)や『M.4呪術師v.s疫ティーゲル』(1981年)といったタイトルが思い浮かぶ。
そうした作品には先生が趣味で作製しているセクシーフィギュアを連想させる女性キャラが登場する。
本作品の闇の世界の魔女はまさにこのイメージ。
おそらく望月先生はそうしたセクシーキャラをこの作品の中で思い切り描きたかったのではないかと妄想してしまう。

このようにSF大作の実現とセクシーキャラの活躍をぜひ見たかったと思わせるような作品なのである。


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2022 年 11 月 14 日   固定リンク   |   トラックバック(0)


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