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望月マニ也

第32回

「望月に、鳥も葉も飛ぶ」

執筆者:   2010 年 11 月 3 日

これまでに何度も自身の漫画で望月作品を取り上げてきた真の望月ファンというだけでなく、熱き探求者としての心を持ち合わせるあの男が、ついに満を持してこのコーナーにも参戦!

「秘密探偵JA」「ワイルド7」
共に代表的な望月作品だが、ここでは二作品の比較をしてみようと思う。
といっても『どちらも主人公の目の中の光が長方形二個である』という 


表面的な特徴について論ずるのではなく、また、
「秘密探偵JA」の主人公、飛鳥次郎(あすかじろう)のイニシャルが「JA」で作品を象徴し、
「ワイルド7」の主人公、飛葉大陸(ひばだいろく)のイニシャルが「DH」*で、これまた作品を
象徴しているという件も、これはこれで興味深いが今回論じる物ではない。

* 「DH」=「大胆な非行少年」

(以下、未読な方にはネタバレ注意)
「秘密探偵JA」に「黒い手の商人」というエピソードがある。
JAが密命を帯び、味方を裏切ったと見せ、敵の組織に潜入するというストーリだ。
その中の一場面、JAが首尾良く組織潜入を果たし、個室で待機中に窓の外をロープを伝い
降りてくる人物がいる。

男「おおっ き きみはJ機関の・・・
  きみのところもここに目をつけて潜入かい!?おれのところもさ
 たいした証拠を手にいれたぜ!!」

ドアの外に物音、あわてた男は次郎に丸めた紙束を託し、窓から逃げ出す。
JAは紙束を懐に隠す、間一髪ドアが開き、武装した組織のメンバーがなだれ込む。

幹部「だれもこのへやへ こなかったかね?
  FBIのスパイに重要書類をもっていかれてな・・・・」

次郎「こないね!」

幹部「ほんとうに!?」

次郎「くどいぜ!!」

幹部「いや きたはずだぜ しかも きみになにかを わたしたはず・・・」

男「うそついちゃいかんよ たしかにわたしたよな!」


窓には件の男が腰掛けている、JAはまんまと敵のわなにひっかかり、
潜入がばれてしまったというわけだ。
虚虚実実の駆け引き、サスペンス物ではよく見られるシークエンスだ。

さてお次は「ワイルド7」の「運命の七星」というエピソード。
これもまた、主人公、飛葉が味方を裏切ったと見せかけ、敵の組織に潜入するという
ストーリーが展開する。首尾良く潜入した飛葉が個室にいる際に、窓から男が現れる。

男「警視庁特務科刑事 山田一郎
 いままでは おれひとりだったから苦労したが あんたがうまいこと潜入してくれたおかげで
 こいつはよりはやく悪の正体をあばくことができそうだ
 で・・・草波さんは作戦をどうやれと指令してきた?」

その時、ドアにノックの音が、あわてて窓から逃げ出す男。
ここまでは前述の「秘密探偵JA」とまったく同じ展開だ。

組織の幹部の呼び出しで飛葉は駐車場に呼び出される。
いつまでも自分を信用せず、武器も与えられず、
しぶしぶ渡された銃も弾丸が抜かれていた。
ようやく武装した飛葉は憤る。

飛葉「おれをうたがう千分の一でもいい いままでの部下のこともうたがってみるんだな」

言いつつ駐車場の車に向けて一発打ち込む。

男「ばかやろう!!試し討ちなら広場でやれ!!」

ドライバーは先刻、窓から現れた刑事だった。

飛葉「たとえばあいつが警視庁の潜入刑事だってこと知ってるか?」

次の瞬間、男は飛葉により射殺されてしまった。目的のためには手段を選ばず、飛葉は非情にも刑事を犠牲にしたのか?
・ ・・・じつはこの場合も潜入刑事というのは敵の仕掛けたわなであり、飛葉はその正体をいち早く見破り、  




難を逃れ、より深く組織内部に潜入する事に成功したのであった。

発表時期は「JA」「ワイルド」の順番なので、後のエピソードの方が、構造がより
複雑になっているが、まったく同じシチュエーションにより、優等生的な飛鳥次郎と
不良少年だった飛葉大陸という二人の主人公の性格の違いが浮き彫りにされるという、
珍しい例であり手法だと思う。他の例を寡聞にして知らない。知らないだけかも知れない。

創作する人間の立場から見ても貴重なサンプルで、単なるネタの使い回しと言う
低レベルな次元の物ではない、作品作りへの果敢な挑戦を見た思いがする。
踏襲できる物なら、是非に踏襲してみたいものである。

一方、あたかも大喜利のお題のように捕らえる事も可能で、他の望月キャラクターだったら
どうなっただろう、飛浪だったら?シャンプーだったら?マッキーだったら?ルル三条だったら?
・・・などと妄想するのもまた一興だろう。

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望月先生のコメント

まァ上野さん、そういう細かいところ比べられると困るなァ。
一編の漫画として完結して見せているつもりでこっちは描いているのに、既存作品、既存キャラクターでネタがこう使われるなんて、奥の深い井戸の底を覗くどころか、ロープ垂らして下の水を汲むような人がファンだなんて、私としては恐ろしいね。
まァ、そういう熱心な人との勝負が描き手としては楽しいわけではあるのですがね。

なにより楽しいのはネタを作るとき、読者の意表を突くってことかな。
同じネタだと思わせて実はその裏を使ったり、ネタを知られていることを逆手にとったりするのも、実は机に向かって仕事しながら想像して楽しんだりしてもいるのですけどね。
そういう読者との交流がまた新しいネタへの挑戦になっていくエネルギーを生み出していくんでしょうね。

今回は私が読者って立場でコメントしましょう。
『さよならもいわずに』(投稿者 上野 顕太郎氏の代表作)
漫画表現の可能性、まだまだあるんだということを実感させてくれる一編。
心理描写、実は絵にするって大変なことなのです。だからセリフでごまかすことも多い。
なのによくもまァこの作者は別世界を創り出す技に長けている。そういう驚きは久しぶり。
そもそも自分には到底不可能な私生活を描くということへのトライ。さらに言えば悲しみを他人の眼で同時に見るというとんでもない「技」を持ってることに驚かされます。
私なら悲しみはとても描けない。打ちのめされたらペンすら持つ気にならないと思う。それなのにそこを越えるって強い精神力、それは凄いことだと思う。
ぜひ多くの漫画ファンに漫画ってこんな表現も可能なんだと、私と同じに驚いてほしい一編です。
ホント涙ぐんでしまう上品な出来です。
お薦め!!



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コメント/トラックバック

  • ぐりゅーん・へるつ :
    飛鳥次郎と飛葉の行動の比較、とても興味深かったです。
    2人には好対照の面がありますよね。

    「地獄の神話」で、飛葉はライフルマン・ジョーに守衛さんを射殺されてしまいますが、飛鳥次郎だったら、あの状況でどう戦っただろう...などと考えてしまいます。

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