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望月マニ也

第33回

ウッズマンの快楽

執筆者:   2010 年 12 月 8 日

なりきりワイルドもついにブーム到来!?ご存知、元祖全身ワイルド男のTAKUYAさんが指南するこのシリーズ。今回もウッズマンへのこだわり具合がハンパじゃありません!

ウッズマンが何故こんなに好きなのだろう?

もちろん望月御大の傑作「秘密探偵JA」や「ワイルド7」「新ワイルド7」…の主人公たちがメインで使用していた銃として、記憶に深く刷り込まれていることもありますが、それ以上にこの銃の“美しさ”が、私をこれほどまでに虜にしている要因だと思っています。

J・Mブローニングの基本設計からの発展形として登場したウッズマン。一番美しい曲線美とされた1945年から製造の2ndシリーズと3rdシリーズの銃身を切り詰めたものが、望月先生の作品には多く登場しました。

コルト・ウッズマンの全貌はアメリカのコレクターの方へおまかせするとして、今回は望月先生の作品「ワイルド7」に登場した通称“飛葉”ちゃん仕様の改造ウッズマンに絞ってお話をさせて下さい。


はじめてコルト・ウッズマンという銃に出会ったのは「秘密探偵JA・影のゆうかい魔」の画報社ヒットコミックス版の単行本を読んだ時でした。
飛鳥次郎が手にしていた銃があまりにカッコよくて、当時買ったばかりのCMC製ワルサーPPKのバレルを外し、形だけでもウッズマンらしく見せ、グリップの底に特殊ゴムを張り付けられないか?を真剣に考えていた小学生でした(笑)。

その後すぐにワイルド7のTV実写版が放映され、「緑の墓」から遡って作品を夢中になって読んでおりました。主人公飛葉が使用している、飛鳥次郎のウッズマンよりもさらに細密に描かれたウッズマンに魅せられ、小学生ながらこの銃を見るたびになんとも言えない快感にひたっていたのです。この変態は治らずに現在にまで至っております(笑)。

中学生2年の頃、MGCからやっと子供でも手の届く価格のウッズマンが発売されました。初めて手にしたときの感動と快感は今も忘れられません。22口径が非力であることとか、実際のウッズマンはマンガより小ぶりであることとか、そんなことはどうでも良い!この銃の持つバランス、コルト社の刻印、グリップ廻りの曲線、すべてが眺めて握って快感だったのです。


上の画像は飛葉ちゃんが本編で幾度かみせた、長銃身にアタッチメントしたウッズマンです。たぶん8in位あるかと思います。「緑の墓」でこの長銃身のウッズマンを使い、遠距離にある移動中のトラックのブレーキを打ち抜く、という離れ業を見せます。
作品前半では銃身を切り詰めたウッズマンばかりでしたので、この回での長銃身仕様は新たな快楽を私に与えてくれたのです。


長銃身にアタッチメント仕様は「首にロープ」前後から作品中盤で見かけられましたが、その後あまり登場しなくなります。
変態の治らない小学生だった私は、次にこの飛葉ちゃんウッズマンの微妙に違う銃身長が気になりだしました。上の画像は3inに切り詰めたMGC製です。

ワイルド7本編の画から考察するに、この3in仕様は一番見かけられたのではないでしょうか?


この画像は2inに切り詰めたものです。そのコマごとに違う場合も多いのですが、作品前半はこの2in前後が多かったような気がします。

JAの頃はまだウッズマンの描写もそこまで細かくは描かれておらず、実銃の1stシリーズと見える画もあれば、少しスマートになった2ndかな?と思える画もありました。

排莢のシステムも「ワイルド7・緑の墓」までは実銃通りのスライドが全開して排莢するように描かれておらず、「首にロープ」から正確な描写となりました。これは当時の情報量の少なさでは致し方ないと思います。

ともあれ「コルト・ウッズマン」は形を変え、JAから新ワイルド~飛葉~W7まで主人公の愛用した銃です。これをずっと持たせた望月先生も、きっとこのウッズマンの美しさ、銃身~グリップにかけての脚線美?辺りに魅せられて描き続けたのではないでしょうか。

最近のハンドガンは趣が無くなってしまい本当にさみしい気持ちです。
機能として向上しているのは分かっておりますが、その外観は機能性重視でまったく面白みも優雅さもありません。アクション映画の主人公がグロックなんかを持っていると落胆します。
私はこの1940年代~70年代頃まで製造されたハンドガンたちに究極の“美”を感じます。


もう発売から16年が経ちますので、改めて批判させていただいてもよいかと思います。この画像の銃(MGC-台東商事製・ウッズマン飛葉モデル)はもう少しどうにかならなかったのか?と。

飛葉モデルと銘打って発売し、ワイルド7ファンのガンマニア相手に商売をするつもりだったのならば(明らかにその為に飛葉モデルと命名したのでしょう。)この2inに僅か満たない銃身、キャップをかぶせただけの銃身はあまりにも原作へのリスペクトを感じません。もう少し原作版に近づけても良いのではないか…
と思いながらも、当時このように購入してしまったワケですが。

究極の曲線美、芸術的な美しさのコルト・ウッズマン。
旧MGCの金型は必ずどこかのメーカーさんが引き取っているはず。どうか究極のウッズマンのモデルガン(ガスガンでも、まぁいいか)の発売を願ってます!

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望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
Coltウッズマン・ファンは多いって、嬉しい話です。
なにしろマイナーなGunに興味を持ってしまう天邪鬼な性格なもので、そもそも『秘密探偵JA』で使い出したころ、写真は片面だけの資料しかなく、反対側や駆動は想像して描くという離れ技。
ウッズマン独特なスライド全開システムと知ったときは愕然、ガックリ・・・・ 恥ずかしさ、情けなさ、ショックですよ。
こういうこと良くある。って、悪い性格してます。
水に浮くライフルと描いてしまったため、実際モデルガンを水に沈めてしまったファンの方何人もに話を聞きまして、大いに反省しております。

これが古い『最前線』あたりの、戦車の車輪の形が違うなんてレベルだと被害者もないンですが、戦車の原寸大(実物?)買うファンは、多分いないと思います。
しかしアメリカのミリタリーファンの中には、自宅のガレージにヘッツァー(※)をしまってあるって話、聞きましたし、海洋堂(※)の社長さんは旧ドイツ軍の88㎜砲(※)、ノルウェーの海岸砲として使われていたもの輸入して自宅の庭に置いているって人もいるからなんとも言えませんが、この88㎜砲、なんと可動するのです、7~8人の人手が必要ですが。
ただし砲弾は発射できないよう塞いであります。でもいつか7人集めて動かしてみたいなァと夢見てます。
社長さんも、いつでもどうぞ と言ってくれてますので来年こそはと。
話はそれましたが、弾道はそらさず ウッズマンです。

TAKUYAさんほど揃えるって羨ましい。
以前も、モデルガンとしてこうも多くのバージョンが出ていたんだと驚かされたことを思い出されます。
MGC(※)の『飛葉モデル』という変な形の銃身のプラ製モデルガン、あれ 私がチェックしていれば絶対発売されていなかったのですが、私に断りも無く『飛葉』って使われてしまったのですよ。世の中怖ろしいことがあるもんです。
最初っから会社も声を掛けてくれれば、こだわった飛葉バージョンが造れたのにね。
惜しいことです。



※ヘッツァー
軽駆逐戦車ヘッツァー。第二次世界大戦末期に活動した旧ドイツの駆逐戦車。
※海洋堂
ガレージキット、フィギュア。食玩等の各種模型を製作する会社。模型業界では高い造形技術で有名な企業。造形物の精巧さや、造形センスは世界屈指の水準を誇るといわれている。
※88㎜砲
第二次世界大戦前より旧ドイツ軍で使用され、同盟国にも輸出された高射砲で、後世の高射砲の原型となった。
※MGC
日本最古のモデルガンメーカー、MGCなくして日本独自のモデルガン文化は形成されなかった。MGCはModel Guns Corporationの略。現在は廃業。


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コメント/トラックバック

  • ワイルド7好きの一人。 :
    はじめまして。
    現在は公式コラボモデルは多くなったものの、
    飛葉モデルは非公式だったんですね~

    MGCの飛葉モデルが出た時のことを覚えています。
    モデルガンの広告が専門誌に出て、
    マンガとはあまりにも似ていなかったため私も買うのをやめました。
    やはりマンガの世界に似た形で再現してほしかった。

    連載当時は情報も少なく、ウッズマンのスライド開放状態や
    水に浮くAR-7とAR-15の取り違い程度の多少の違いはディフォルメとして許されるでしょう。
    それを補って余りある秀作のワイルド7なのですから。

    今読んでもワイルド7はガンマニアも喜ぶ十分面白い作品です。
  • ムネゾー :
    あの頃の資料、古本屋で手に入れて読むと、「プラスチックとアルミ合金で出来ていて水に浮く」と普通に書いてありますよ、M-16。
    グロッグが、初期に「X線に反応しない」とか書かれたように、誤解って存在しますよ。
  • 山梨の稲妻 :
    山梨の稲妻です今晩は
     今回はコルトウツズマンですか
    あの当時は資料が余り無いらしいですから間違いもいろいろあったと思いますよ。MGCのコルトウツズマンですね昔見た時は細いバレルの物とターゲツトモデルが有ったような感じですね。
  • Yanbaru :
    ウッズマンに魅せられて早ウン十年の、ワイルド飛葉ファンです。

    そう・・・、今をもってして、普通にリアルな完成度のウッズマンは
    発売されていないのが残念です。

    特にワイルド7劇中ファンの夢には必須といえるマストアイテム
    「飛葉仕様のウッズマン」が、これまた手製ビルド以外無いんですよね・・・。

    何とかどこかで出して欲しいものです。

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