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望月マニ也

第43回

ワイルド7の愛銃展レポート

執筆者:   2011 年 10 月 10 日

男の子なら一度は憧れる黒く鈍く光る銃を脇の下に腰のホルスターに忍ばせるヒーロー。そして手にしてみたい銃はヒーローが悪人退治に使うそれ。まさに“それ”を作り出す職人がいる。

連載開始から約40年を経た今でも、人気を博している望月三起也先生原作の「ワイルド7」。
2011年には念願の実写版映画も製作されて12月に公開予定で、その人気の根強さを見せつけられます。
その「ワイルド7」のメンバーたちが愛用する銃は個性的なものばかりでした。

「ワイルド7」連載当時日本はモデルガンブームで、映画・漫画に登場した銃が発売されると、ファンはこぞって買ったものです。余談ですが、いま無きMGC(日本で本格的なモデルガンを製作販売した会社)から発売になっていた「ワルサーPPK」は映画ファンならご存知「007」の愛銃として実際に映画に登場していました。MGCの直営小売店に冠された「MGCボンドショップ」という店名は、MGCが「007」映画に銃器を提供していた関連で「ボンド」という名称の使用を許可されていた事により付けられたものです。
1965年製作「007は二度死ぬ」では、MGC製シュマイザーMP40もスクリーンデビューしています。宿敵ブロフェルドの日本基地に公安調査局長官タイガー田中率いる部隊が忍者装備で火山基地に総攻撃をかけた時、タイガー田中役の故丹波哲郎氏がぶっ放していたシーンで使っていたのがそうです。
あっ、話がだいぶ逸れました、「ワイルド7」の銃の話でした・・・・。

ワイルド7で主人公、飛葉大陸の愛用する「コルト・ウッズマン」はMGCが1970年に発表したブローバクモデル発売計画の段階でリストアップされていたにもかかわらず、実際にモデル化、発売されたのは1978年だったと記憶しています。それも漫画版のように先を切り詰めたタイプではなく、スポーツタイプとマッチターゲットタイプ(こちらはヘボピーも一時愛銃にしていました。)でした。実際に購入して銃を構えたポーズをとってみると何か違う、漫画のウッズマンは存在感がありずっしりとした重量感があったように思っていたのに、MGC製モデルガンのウッズマンはスポーティーで軽量(ABSプラスチック製のモデルガンだから実銃より軽いのは当たり前か!)だから?
いやそれだけじゃない、まだ何か違う。自分が思っていたイメージと違うとずっともやもや感が拭えず、それから約35年を過ごしました・・・・。

「月刊アーマーモデリング」(大日本絵画)2011年6月号を購入した時のことです。望月先生連載の「バサラ戦車隊」をいつものように読み終え左のページに目を移したところ、「望月模型倶楽部」というタイトルと写真が数点目に入りました。そこには飛葉の愛銃、銃身をカットした「コルト・ウッズマン」を構えておられ満面の笑みの望月先生の姿が…。
その「ウッズマン」を見た時思いました。
これだ!私が今までずっと感じていた違和感の理由は!
その写真の「ウッズマン」は既存のモデルガンより全体的に骨太で力強さがありました。もともと実銃のウッズマンはスポーツ射撃の練習銃で口径も22口径と小さいものです。MGCはそのディティールを忠実にモデルガン化していた為、スマート過ぎてコジンマリとまとまってしまい、ちょっと貧弱なイメージに感じていたのです。漫画「ワイルド7」に登場していた「コルト・ウッズマン」は「望月カスタム」と呼んでもいいほどの重量感と迫力をもってその存在感を読者に訴えていたのです。

記事を読むと千葉県在住、映画などで使用するプロップガン(ステージガン)製作のプロの方の手によるものとありました。ほぼフルスクラッチで製作されたとのことですが、すごいなぁ~と正直思いました。この方もウッズマンのモデルガンを買った時に、私と同じ違和感をずっと感じ続け、ついに自ら製作されたのだろうなぁ~(笑)とも。



そして8月、「月刊望月三起也」の掲示板に、原作版「ワイルド7」のメンバーの愛銃展がありますと案内いただきました。おお!あの飛葉ウッズマン・リアルモデルに会える展示会が開催されるのかと!これは絶対行かねばと一人で行く予定を立てていたところ、知人からご一緒にどうですかとお誘いが。二つ返事をして一緒に行くことになりました。さらにオフ会のメンバーのお一人であるシラズマンさんも一緒に。さすが、ワイルドファンは決断が早い!(笑)

そのギャラリー会場は最寄駅前ビルの3階にありました。
ショーケースの中には「ワイルド7」の各メンバーの銃とケース最下段には少年画報社「ヒットコミック版ワイルド7」全巻が展示されていました。さらに他の望月漫画のヒーローたちの愛用銃、『優しい鷲JJ』の乗寺 飛狼(じょうじ ひろ)のエンフィールドMk1や『マッドドッグ』ジョージ牧のS&W357マグナムなど、マニアならば目が輝くカスタムガンまで、展示してありました。それらは私たちが訪問という事で、わざわざ展示していただいたそうです。

ショーケース上から「コルト・ウッズマン」「コルト・ウッズマンマッチターゲット」「クロスマン」「陸式南部」「コルト・パイソン」「スタームルガーMk2」「モーゼルミリタリーC96」「レミントン・デリンジャー」・・・・etc
どの銃も漫画内にて望月カスタムというべきデフォルメされた迫力を3次元で再現されたもので、それは圧巻。オヤブン愛用のコルト・パイソン以外は正式に流通モデルガン化されておらず、見ることも叶わぬモデル・・・・ もう目がテン。
どのモデルも原作の絵に合わせて微妙にバレル(銃身)の長さが調節されていたり、その太さもどれもブル(太く)に作り直されていたり、ウェザリング(使用感のある汚し塗装)まで施されたモデルまであり、そのこだわり具合は半端ではないのです。

その他にも『新・ワイルド7』で飛葉が使用した架空の銃、357スーパーウッズマン仕様にカスタムされた大迫力の「44オートマグ」から、作品中飛葉が使用した各種アタッチメント(サプレッサーなど)も見事な製作で彩りを与えてくれているのです。
また上記しました特別展示の『優しい鷲JJ』で主人公、飛浪が愛用した「エンフィールドMk1」。なんと原作画通り、バレルは実銃よりも長く太くマッチョに、そしてバレル下には可動式ナイフが取り付けてある驚きの一品まで3次元で再現されていて、マニアを楽しませてくれます。当然グリップにはチリン・・・・ 鈴付きです(笑)

それにしてもワイルド7メンバーの各愛銃を一堂に集めて鑑賞するのは、それはそれはとても壮大でありました。いやぁイイ、言葉で表現できないぐらい感動しました。いっそこのままいつまでも眺めていたい気分!!あはは。

ショーケースの最上段に展示されているウッズマンは「月刊アーマーモデリング」で紹介されたものとは少し異なるリアル飛葉ウッズマン・タイプだそうで、雑誌アーマーモデリングで紹介されたリアル飛葉ウッズマンはアーリータイプと命名しているそうです。違いは角ばっているか丸みを持っているか、マガジンキャッチがどういったタイプなのか。だそうで、アーリータイプはマガジンキャッチをボトム(下部)に移しスライドストップを省略した初期仕様を意識したタイプなのだそうです。
もっとも重箱の角を突いてしまうと、作画資料の乏しかった当時、お手伝いのお弟子さんの作画癖によっても多くのモデル(?)が存在しているようすで、カスタムガン製作にも、どの部分のカットを見本として製作するかでも、タイプ別に分かれてしまうそうです。

また連載初期に描かれていたエジェクションポート(空薬莢排莢口)の存在するアーリータイプですが、長らくこのタイプは、当時の資料不足による勘違いでは? と一部のファンの間では思われていましたが、つい最近実銃でこういうタイプもあることが判明したそうで、資料のなかったその昔、知識と想像力で作品を送り出し続けた望月先生の才能に驚きです。
ちなみにこれがその証拠の画像だそうです。

また、上記3連写真がエジェクションポートを再現したその「アルティメイトウッズマン」(無可動品)です。
マニアは「おおォ~!!」と声をあげているかもしれません。

展示の各銃、本当は全てご紹介したいのですが、大人の事情でご紹介できる写真はここに掲載するものでお許しくださいね。

最後に、今回お邪魔した「旭工房」さんは、ご注文をいただければ可能な限り注文通りの物をお作りになられるとの事です。連絡先は下記の通り。ご興味がある方は一度訪ねて見て下さい。
旭工房GALLERY
〒273-0035 千葉県船橋市本中山2-18-9 光信ビル3F
Tel:047-332-1435
radix333@cd.mbn.or.jp
http://www32.ocn.ne.jp/~koukicustom/

「ワイルド7の愛銃」以外にも珍しいプロップガンも色々と展示してありました。
私が気になったもののひとつ、アメリカTVドラマ「俺がハマーだ!」に登場した主人公の愛銃「マギー」の再現(ケース4段目、白いグリップの44マグナム!)。いつか購入した~い!!(苦笑)




























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月刊望月三起也ではみなさんからの投稿をお待ちしています。
「望月マニ也」「作品紹介」のほか書式や内容は自由、採用者は「月刊望月三起也」で掲載。
また掲載された方には、望月先生書き下ろし特製ポストカードをプレゼント!


是非、月刊望月三起也事務局までメールを送ってください。
お待ちしております。
info@wild7.jp
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望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
拳銃美学・・・・・

漫画と現実は人体のサイズが大きく異なります。
だから自分自身本物のコルト・ウッズマンを握ったとき、「なんて小さいンだ!!」というのが実感。秘密探偵JA 、ワイルド7を描きだした当時は一面の写真のみが参考、本物はそれから40年も後なんですから、サイズの違いは漫画の世界のリアルということで、口径22を38にして一回り大きくし、迫力重視としました。
が、これを現実のリアルで作ったって人が出てくる。マニアですねぇ。一挺プレゼントされ、まァ手に馴染むこと。これで撃てたら本当に迫力だろうって思わせる出来、これをフルスクラッチで可能にしちまったって凄い人。
さらにエスカレートしてナイフ付きの拳銃まで作ったとか、早く見たいねぇ。

今、時間が取れなくって、なにしろ12月発売でワイルド7の新作をいきなり単行本で出そうって企画が進行中。そのうちの一部は「漫画サンデー」(実業の日本社)に載せる予定ですが、描き下ろしの200ページ越えは大変。
なにしろ凝り症で、銃のアップ、クルマの爆発シーンなんかになるととことん入れ込み、人には任せない、自分で描くのを楽しむ。ペン入れが終わっていても、ちょっとでもイメージ通り出来上がらないとダメ出し、自分で出して自分で切り貼りやって描き直してます。

さらに少年画報社からもワイルド7の新作50ページ描き下ろしありで、ネコの手も借りたいところだが、うちのネコ二匹とも絵はまるでダメ、喰って寝るだけ。
そんなわけでギャラリーでの展示会は見に行けず残念。 いずれ機会あれば、漫画上のリアルGun、見たい!!



※事務局  注)※
先生のこのコメントは10月8日現在のもので、翌9日、旭工房代表仲代氏が先生宅を訪問、ギャラリーに陳列していた各種銃を先生にお披露目しています。
先生、仲代両氏が銃談義に花を咲かせたことは言うまでもありません。




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