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望月マニ也

第53回

リアル飛葉ウッズマン製作レポート

執筆者:   2012 年 8 月 1 日

映像世界の小道具としてのGunをプロップガン、ステージガンといいますが、そのトップクリエイターとして名を馳せている氏が、自身の根底にある望月漫画のリアルを再現していきます。

私が未だ小学生だった頃に一番憧れたヒーローは『ワイルド7』のヒバちゃんでした。
特にその愛銃のColtウッズマンのカッコ良さと言ったら、当時発売されていたどのモデルガンも及びませんでした。

そして何年か後にモデルガンメーカー「MGC」からウッズマンが発売されました。しかし実際に立体化された“ウッズマン”を手にして愕然としました。何故なら望月先生の描く迫力あるウッズマンが脳裡に焼き付いていた私にとって、それとのギャップがあまりにも激しかったからです。
勿論それはモデルガンがリアルでなかったのではなく、どちらか言えばヒバちゃんのウッズマンがデフォルメされて描かれていて、しかもそのイメージが余りにも強烈だったからです。
「こんなの“ウッズマン”じゃない!」と思わず言葉が漏れました。(設計者の小林さんゴメンナサイ)
それでもバレルをカットして我慢しました。これはヒバちゃんファンなら誰でもやった事ではないでしょうか。
皮肉にもリアルなウッズマンを手にしたが為に発病した“ヒバちゃんウッズマンがどうしても欲しい症候群”・・・・・
それは成人に達しても治らず、何度目かの発作が起きた時には幸いにもカスタムモデルガンやカスタムプロップ(映像小道具)の製作を生業とする『旭工房』を設立した後だったので、遂にモデルガンからカスタムする事を決意しました。

製作する上で先ず着目したモデルガンとの一番の違いは“バレル(銃身)”、勿論、切り詰めた設定ですので短いのは当然ですが、それよりも前方からのアングルで描かれた時のグワァーッと力強く迫ってくるバレルの太さでした。
バレルを太くすると当然メインフレームのバレル基部=チェンバー(薬室)周りも大型化する必要が生じ、ひいてはスライド(遊底)の背を高しなくてはならなくなりました。
モデルガンより太いバレルをABS樹脂の丸棒より削り出し、フレームチェンバー部には左右及び上部にABS版を貼り、スライド上部にもABS版を積層しました。フレームに比べスライド巾は最初から充分なな厚みがあった為そのまま使用、結果としてCOLTの刻印を残すことが出来ます。そしてリア・サイト(照準)はColtパイソンというモデルガンのパーツから流用しました。

その当時(初期)の作品のマガジンキャッチ(弾倉留め)は無加工でしたが、今回は原作のイメージに更に近付けるべくマガジンキャッチはボトム(下部)に移す事としまし、更にリア・サイトは初期型にこだわり、フィクスドタイプに挑戦しました。
その他アタッチメント・バレルは、長銃身アタッチメント取付用の溝を掘った物をアタッチメント本体と共に加工屋さんに製作して貰いました。
「リアル飛葉ウッズマン」の“リアル”とは実銃に寄せると云う意味では無く、
あくまでも私の中のヒバちゃんが使用した望月漫画版ウッズマンにイメージを近づける事を比喩したネーミングです。

それでは順を追って、製作過程を解説します。(かなり専門的な用語が飛び交うこととなると思いますが、写真をご覧になりつつ読み進めていただければと思います)

【01】
先ずは第一の要であるフレームバレル基部、ここを上下左右にボリューム・アップします。
今回は初の試みとしてウッズマンの元刻印の通称「ランパンコルト」を スライスし移植してみました。当然刻印を消さない様に非常に気を使う作業となります。従来は無地のABS板を貼り、刻印を後入れしていましたが、元刻印を埋めて同じ物を再刻印する事に抵抗感を持っていたので今回の製作法を試みました。

次の要となるのはスライドの加工、両サイドとトップのボリューム・アップがメインとなります。
前作では見栄えを考慮し刻印を全て活かしていていましたが、今回は全て無くそうと考えてました。しかしコミックを検証してい見ると刻印の書き込みが見られるので、「COLT」と「Cal.22」のみを残す事にしました。


【02-1】
オリジナルのリア・サイトはオミットするので、先ずロックプランジャーを保持するアッセンブリーロック固定用スクリュー(ネジ)のナットを埋込みます。

【02-2】
側面の上下幅を広げる為にABS樹脂板を貼りつけます。

【02-3】
上面をABS樹脂板でガサ上げします。
前記したように今回の作例はマガジンキャッチを、上部のボタン式から下部へ移動する事にしました。
これは前々から考えていましたが、手頃な流用パーツが見つからず、無いなら作れ、と言う事で、アルミのブロックから削り出す事としました。

【03-1】
切り出したアルミブロック

【03-2】
ノコギリで大体の形に切ります。

【03-3】
大まかにヤスリで整形した状態です。
マガジンキャッチを下部に移すので、トリガーガード(引き金の用心金)の付根部分の整形をします。

【04-1】
不要な部分を切り取りました。

【04-2】
そしてABS板を貼りました。

【04-3】
大まかに整形した状態です。
マガジンキャッチの移動に伴うグリップの加工です。

【05-1】
グリップ右側のマガジンキャッチの切り欠きをABS樹脂で埋めます。
実銃のサードシリーズのプラグリップはそうなっていませんが、心理的に違和感が残るので敢えて加工しました。ついでに今回はランパンコルトも目隠ししました。

【05-2】
メインフレームのガサ上げに併せて、サイドプレートも厚みを増します。
トリガーを熱して金属棒に押し付けハンマーで叩いて形を整えます。

【06-1】
左:加工前、右:加工後。

【06-2】
マガジンキャッチ及びリア・サイトの完成です。

【06-3】
これでほぼ完成しました。


【完成右側面】

【完成左側面】

右は、タイトーMGC製飛葉モデルとの比較です。
前述しました様に、今回初期タイプにこだわって製作しましたが、完成後新たなる不満が湧きあがりました。
「グリップの角度が原作のイメージはもっと鈍角だと云う事」・・・・・
それを再現するには・・・・ 色々と考えましたが、一から作るしかないと結論付ました。 そう、ABS樹脂板の積層・箱組によるフルスクラッチ!!です。
そして始めたのが「アルティメイトウッズマンプロジェクト」次の機会があればそれを紹介したいと思います。

最後に望月作品の銃を立体化する事を通じ、「ワイルド7」をはじめ、多くの夢と希望を与えて下さった望月三起也先生に、少しでも恩返しが出来ればと願っております。


下は、MGC製市販モデルと漫画忠実再現モデル旭工房カスタム。


旭工房 仲代光希



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望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
漫画の中のリアル、それにこだわると本来22口径のコルト・ウッズマンじゃ迫力に欠ける。
でも、あのフォルムに一目惚れの私としては作中に登場させたい、主人公にキメさせたいってことで、コルト社には断りもなく勝手に大口径拳銃として主人公に持たせました。

その後モデルガンが登場、「飛葉モデル」なんてのまで売られ、それを手に取ったファンの方、あまりの小ささにガッカリされたって話、漏れ伝わって来たことしばしば。
仲代さんもそのお一人だったようで、それなら自分でリアルに作っちゃおうって気になったって話、わかりますねぇ。

しかしバランスって難しい、一部を修正するとこちらが気になる。
あれやこれやと制作にとんでもなく苦労されたって、わかります!!
絵と違って消しゴムかけて直すわけにはいかない、立体ですから、そこまでやるかって思います。
私もプラモ貼り付け、削り出したりしてウッズマン改なんてバージョンを作りましたから。
今も作画にてデッサンする時、カッコいい角度を見つけるのに使ってますが、10年以上以前に製作したものなので、あちこち欠けたり、接着が剥がれたりで無残な姿になってます。

仲代さんには労作の何挺か、出来の良いリアルガンをプレゼントされました。
ありがとう!!

ただ“リアル”と言っても、“本物”って意味じゃなく、紙面、漫画の紙面上世界での“リアル”。
持ってみて手とのバランス、中々の迫力ですね。
この上は、プラの質感ではなく、塗装にリアリティを持たせた金属感のある一挺!! なんてのが欲しいなァ、なんて個人的には思ってます(笑)。



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