『バラの戦士』が「週刊漫画アクション」に連載されていた当時、私は高校生でした。
その時は気が付きませんでしたが、今回改めて読み直してまず頭に
浮かんだのは、この物語は壮大な復讐劇、一言で言うならば、望月版「忠臣蔵」だったのかなと…。
時代劇がお好きな望月先生の事です、あえて時代劇ではなく設定を現代に置き換え、忠臣蔵で有名な仇である「吉良」役のキャラをなかなか登場させず、最後の最後まで明かさないところがいかにも望月流。
毎週、誰が「吉良」役なのか読者が推理する楽しみがありました。
舞台も
日本、東南アジア、中近東のアル・ジャポネと移動して、随所に見せ場がふんだんにちりばめられ、一大アクション巨編に仕上げておられます。
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キャラクター設定もしっかり描かれていて、特に登場人物の一人紅部長の描き方が素晴らしく、サラリーマンの管理職として随所で管理能力を発揮しているところに引かれますね。
たとえば、牙を抜かれた狼のフリをして絶対に上司に逆らわないイエスマンに徹し、そのくせ決して敵に隙を見せないところとか、無駄がない適材適所で社員を配置し周到に準備するところに憧れますね…。
これも私がサラリーマンだからでしょうか(苦笑)
さしずめ「忠臣蔵」で言うと「大石内蔵助」の役どころでしょうか?
さて、あらすじは、紅運輸の乗っ取りをたくらむ空コンツェルンは、汚い手を使い紅運輸を陥れ会社が再建できないほどに追いつめ、まんまと空路・拠点・社員を手中に収める。
元社長の息子の紅 将平以下元紅運輸の社員たちは、秘かに空コンツェルンへの復讐を誓い、悪の権化である空コンツェルンの「影の会長」を抹殺すべく水面下で復讐の準備を始める。
一方の空コンツェルン側も元紅運輸社員たちの不穏な動きを事前につかみ、ただ手を拱いているわけではなく徐々に潰しにかかる。
はたして、元紅運輸の社員たちは見事「影の会長」を仕留め復讐を遂げられることが出来るのか…?
今回は話の舞台が航空会社という事もあって、銃火器はもちろん、各国の飛行機・ヘリコプター類がふんだんに出てきます。
まずはアメリカからは、望月先生がお好きのB-17が出てきます。(笑)
第二次世界大戦の米軍の爆撃機が、どこで出てくるかは見てからのお楽しみ…。
さらに連載当時(1976年)はまだ正式装備として米軍に配備されていなかったAH-64アパッチの試作機?と思われる軍用ヘリも登場し、序盤でアクションを繰り広げます。
(正式装備は1984年)
機首下にM230 30mm機関砲、胴体側面のスタブウイングに設置された牽下パイロンにはAGM-114 ヘルファイア空対地ミサイルを標準装備。試作段階からか、まだ前部に火器管制システム(FCS)が装着されていないタイプで、頭部がヒューイコブラにちょっと似ています。
アル・ジャポネ税関が使用していたのは、M10対戦車自走砲(戦車駆逐車)。車体はM4A2中戦車(シャーマン)の車体を使い、特徴は全体的に角ばっているのと砲塔がオープントップになっているところで、これは砲塔上の三名全員が周囲を監視することで敵を瞬時に発見するための物だったらしいです。
FFARロケット弾のMA-2ポッド搭載のUH-1B(イロコイス)もアル・ジャポネ警察のゲリラ専従班の装備として出てきます。
そして!何と言っても見せ場は、フランスのアエロ社のヘリコプター「ガゼル」が、空コンツェルン側で登場し、警視庁航空隊ヘリコプターとのバトルがあり、これが数年後に劇場公開された映画とよく似ているのです。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、「ガゼル」を改良して主人公にした映画がアメリカ映画「ブルーサンダー」(1983年)です。「バラの戦士」は1976年に発表された作品で、まだ「ブルーサンダー」が公開される数年も前の話で、いち早く「ガゼル」を作品に登場させた望月先生の先見の明には、驚いたものです。
そうそう「ピンクパンサー」も登場します。あっ、「ブレイク・エドワーズ」監督のコメディ映画の事じゃないです。第二次大戦中の北アフリカ戦線で活躍したイギリス軍特殊部隊S.A.S。このS.A.S.が1970年頃から植民地の反乱鎮圧などに使用した砂漠用特殊車輛、ランドローバー通称「ピンクパンサー」。ピンク色の車体色からその名が付きました。それも三連装高射機銃付き!
東南アジアでは、密売屋所有の旧日本軍の97式中戦車も出てきます。
更に砲口には多孔式マズルブレーキを装着したドイツの7.5 cm PaK 97/38に改修されたM1897?も登場してもう世界の武器のオンパレード!ミリタリーファンは「そこ」だけでも見ごたえ十分です。それにしても当時の作画スタッフの方は、次から次へと登場する色々な兵器を描くので相当ご苦労されたでしょうねぇ~。
ご苦労様でした。
重火器を代表してM-16が何度も登場しますが、当時私もMGCのモデルガン購入して所持しておりました。作品に登場するのと同じA1ハンドガードタイプのベトナム戦争モデル。ちなみにE1ハンドガードタイプは皆さんおなじみ「ゴルゴ13」が使用しているモデルです。あっ、ウエポンではありませんが、今は亡きボーイング747ジャンボジェット機もクライマックスで、かなり重要な役割で大活躍します。
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1976年 ACTION COMICS(双葉社)全4巻(9月15日初版発行)(4巻の巻末に併録有)
1986年 ACTION COMICS DX(双葉社)全3巻(8月19日初版発行)
『eBookJapan』でも購読可能です。コチラまで。
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月刊望月三起也ではみなさんからの投稿をお待ちしています。
「望月マニ也」「作品紹介」のほか書式や内容は自由、採用者は「月刊望月三起也」で掲載。
また掲載された方には、望月先生書き下ろし特製ポストカードをプレゼント!
是非、月刊望月三起也事務局までメールを送ってください。
お待ちしております。
info@wild7.jp
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その時は気が付きませんでしたが、今回改めて読み直してまず頭に
浮かんだのは、この物語は壮大な復讐劇、一言で言うならば、望月版「忠臣蔵」だったのかなと…。
時代劇がお好きな望月先生の事です、あえて時代劇ではなく設定を現代に置き換え、忠臣蔵で有名な仇である「吉良」役のキャラをなかなか登場させず、最後の最後まで明かさないところがいかにも望月流。
毎週、誰が「吉良」役なのか読者が推理する楽しみがありました。
舞台も
日本、東南アジア、中近東のアル・ジャポネと移動して、随所に見せ場がふんだんにちりばめられ、一大アクション巨編に仕上げておられます。
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キャラクター設定もしっかり描かれていて、特に登場人物の一人紅部長の描き方が素晴らしく、サラリーマンの管理職として随所で管理能力を発揮しているところに引かれますね。
たとえば、牙を抜かれた狼のフリをして絶対に上司に逆らわないイエスマンに徹し、そのくせ決して敵に隙を見せないところとか、無駄がない適材適所で社員を配置し周到に準備するところに憧れますね…。
これも私がサラリーマンだからでしょうか(苦笑)
さしずめ「忠臣蔵」で言うと「大石内蔵助」の役どころでしょうか?
さて、あらすじは、紅運輸の乗っ取りをたくらむ空コンツェルンは、汚い手を使い紅運輸を陥れ会社が再建できないほどに追いつめ、まんまと空路・拠点・社員を手中に収める。
元社長の息子の紅 将平以下元紅運輸の社員たちは、秘かに空コンツェルンへの復讐を誓い、悪の権化である空コンツェルンの「影の会長」を抹殺すべく水面下で復讐の準備を始める。
一方の空コンツェルン側も元紅運輸社員たちの不穏な動きを事前につかみ、ただ手を拱いているわけではなく徐々に潰しにかかる。
はたして、元紅運輸の社員たちは見事「影の会長」を仕留め復讐を遂げられることが出来るのか…?
今回は話の舞台が航空会社という事もあって、銃火器はもちろん、各国の飛行機・ヘリコプター類がふんだんに出てきます。
まずはアメリカからは、望月先生がお好きのB-17が出てきます。(笑)
第二次世界大戦の米軍の爆撃機が、どこで出てくるかは見てからのお楽しみ…。
さらに連載当時(1976年)はまだ正式装備として米軍に配備されていなかったAH-64アパッチの試作機?と思われる軍用ヘリも登場し、序盤でアクションを繰り広げます。
(正式装備は1984年)
機首下にM230 30mm機関砲、胴体側面のスタブウイングに設置された牽下パイロンにはAGM-114 ヘルファイア空対地ミサイルを標準装備。試作段階からか、まだ前部に火器管制システム(FCS)が装着されていないタイプで、頭部がヒューイコブラにちょっと似ています。
アル・ジャポネ税関が使用していたのは、M10対戦車自走砲(戦車駆逐車)。車体はM4A2中戦車(シャーマン)の車体を使い、特徴は全体的に角ばっているのと砲塔がオープントップになっているところで、これは砲塔上の三名全員が周囲を監視することで敵を瞬時に発見するための物だったらしいです。
FFARロケット弾のMA-2ポッド搭載のUH-1B(イロコイス)もアル・ジャポネ警察のゲリラ専従班の装備として出てきます。
そして!何と言っても見せ場は、フランスのアエロ社のヘリコプター「ガゼル」が、空コンツェルン側で登場し、警視庁航空隊ヘリコプターとのバトルがあり、これが数年後に劇場公開された映画とよく似ているのです。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、「ガゼル」を改良して主人公にした映画がアメリカ映画「ブルーサンダー」(1983年)です。「バラの戦士」は1976年に発表された作品で、まだ「ブルーサンダー」が公開される数年も前の話で、いち早く「ガゼル」を作品に登場させた望月先生の先見の明には、驚いたものです。
そうそう「ピンクパンサー」も登場します。あっ、「ブレイク・エドワーズ」監督のコメディ映画の事じゃないです。第二次大戦中の北アフリカ戦線で活躍したイギリス軍特殊部隊S.A.S。このS.A.S.が1970年頃から植民地の反乱鎮圧などに使用した砂漠用特殊車輛、ランドローバー通称「ピンクパンサー」。ピンク色の車体色からその名が付きました。それも三連装高射機銃付き!
東南アジアでは、密売屋所有の旧日本軍の97式中戦車も出てきます。
更に砲口には多孔式マズルブレーキを装着したドイツの7.5 cm PaK 97/38に改修されたM1897?も登場してもう世界の武器のオンパレード!ミリタリーファンは「そこ」だけでも見ごたえ十分です。それにしても当時の作画スタッフの方は、次から次へと登場する色々な兵器を描くので相当ご苦労されたでしょうねぇ~。
ご苦労様でした。
重火器を代表してM-16が何度も登場しますが、当時私もMGCのモデルガン購入して所持しておりました。作品に登場するのと同じA1ハンドガードタイプのベトナム戦争モデル。ちなみにE1ハンドガードタイプは皆さんおなじみ「ゴルゴ13」が使用しているモデルです。あっ、ウエポンではありませんが、今は亡きボーイング747ジャンボジェット機もクライマックスで、かなり重要な役割で大活躍します。
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バラの戦士 |
1976年 ACTION COMICS(双葉社)全4巻(9月15日初版発行)(4巻の巻末に併録有)
1986年 ACTION COMICS DX(双葉社)全3巻(8月19日初版発行)
『eBookJapan』でも購読可能です。コチラまで。
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月刊望月三起也ではみなさんからの投稿をお待ちしています。
「望月マニ也」「作品紹介」のほか書式や内容は自由、採用者は「月刊望月三起也」で掲載。
また掲載された方には、望月先生書き下ろし特製ポストカードをプレゼント!
是非、月刊望月三起也事務局までメールを送ってください。
お待ちしております。
info@wild7.jp
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eddy-s さんのプロフィール
【望月三起也先生より】
仰る通り、マシン好きの私のところへ来たのが運の尽き。
その後、四コマギャグ漫画で一流になる上杉くんなんかも、背後の小さな群集描きつつ、リアルな戦車にマシンガン、上手にこなしてましたよ。
それだけじゃない、登場人物としても大活躍したんです。
この作品、見返すとほとんど私の趣味以外の何物でもない作品。よくやらせてくれたもんです、漫画アクション(双葉社)も。
ついでに言えば、この連載の頃、自動車免許を取ろうとしていた私、それも一ヶ月で取得するには合宿教習所がいいと教わり、山梨は甲府の自動車教習所へ行ったのです。
免許取るのは私ですが、一ヶ月間、私だけは仕事を外せない。当時、週刊誌二誌の連載を持っていたので、毎日仕事机に向かわない訳にはいかない。そこで現地の旅館二間貸し切ってアトリエにしたってわけ。
私、昼間は教習所、夜は描き捲くるという毎日
それほどまでして免許取りたいかって話ですが、これ以上歳をとったら頭も身体の反応も鈍くなる、ヘタすりゃ一生クルマは動かせないって恐怖ですね。無理するときはとことん。そのうちってのは決心が鈍るもので、一族挙げてアトリエ甲府ですよ。
よくまァみなさん、協力してくれたもんです。
うちの弟子だけでなく、担当編集さんも二誌の締め切りが一緒でしたからお二人が話し合って、交互に甲府まで原稿を取りに来られ二誌分を持って帰り、新宿駅で担当編集さん同士で落ち合い、原稿を渡しあうってシステム。まァ、大変な絵描きに当たっちゃったねとお二人、思ってたでしょうねぇ。
ご協力、改めて感謝!
こういうみなさんの協力があって今の私、クルマのハンドルを握っていられるンだから。
だから私は、「自己中だ」「ワガママだ」と、陰口言われるのかね?
すみませんねぇ
仰る通り、マシン好きの私のところへ来たのが運の尽き。
その後、四コマギャグ漫画で一流になる上杉くんなんかも、背後の小さな群集描きつつ、リアルな戦車にマシンガン、上手にこなしてましたよ。
それだけじゃない、登場人物としても大活躍したんです。
この作品、見返すとほとんど私の趣味以外の何物でもない作品。よくやらせてくれたもんです、漫画アクション(双葉社)も。
ついでに言えば、この連載の頃、自動車免許を取ろうとしていた私、それも一ヶ月で取得するには合宿教習所がいいと教わり、山梨は甲府の自動車教習所へ行ったのです。
免許取るのは私ですが、一ヶ月間、私だけは仕事を外せない。当時、週刊誌二誌の連載を持っていたので、毎日仕事机に向かわない訳にはいかない。そこで現地の旅館二間貸し切ってアトリエにしたってわけ。
私、昼間は教習所、夜は描き捲くるという毎日
それほどまでして免許取りたいかって話ですが、これ以上歳をとったら頭も身体の反応も鈍くなる、ヘタすりゃ一生クルマは動かせないって恐怖ですね。無理するときはとことん。そのうちってのは決心が鈍るもので、一族挙げてアトリエ甲府ですよ。
よくまァみなさん、協力してくれたもんです。
うちの弟子だけでなく、担当編集さんも二誌の締め切りが一緒でしたからお二人が話し合って、交互に甲府まで原稿を取りに来られ二誌分を持って帰り、新宿駅で担当編集さん同士で落ち合い、原稿を渡しあうってシステム。まァ、大変な絵描きに当たっちゃったねとお二人、思ってたでしょうねぇ。
ご協力、改めて感謝!
こういうみなさんの協力があって今の私、クルマのハンドルを握っていられるンだから。
だから私は、「自己中だ」「ワガママだ」と、陰口言われるのかね?
すみませんねぇ
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2013/06/15 at 8:45 AM
望月さんの工夫を凝らした小ネタ大好きです。