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【ひとこと作品紹介】死をよぶ山

hitokoto_img第5回

死をよぶ山

執筆者:Ken

事務局のオススメを紹介していく「ひとこと作品紹介」に、望月作品を追い続け、膨大なデータを網羅した作品リストを作ったKenさんを招いて新章スタート!
Kenさんのリストはその後もブラッシュアップを続け、最新版は発売中の『文藝別冊 望月三起也』の巻末に「[望月三起也]作品リスト」としても使用されたため、その情報量の多さと正確さに改めて圧倒された読者も多かったはず。
そんなKenさんは、単行本未収録作品の情報収集だけではなく、コレクションにおいても貴重な作品を多く所持。
リスト上の文字でしか知らなかった数々の作品を中心に、どんな作品だったのか詳しい解説とともに紹介してもらいます。

そして今回取り上げるジャンルは、少女向け恐怖漫画。
いきなり、恐らくほとんどのファンが見たことがない怪作の登場だ!

【作品名】
死をよぶ山

【掲載誌】
1964年「別冊マーガレット」10月号(集英社)読み切り掲載

【あらすじ】
主人公の名前は「ユキ」。
『ワイルド7』でおなじみのミソッカスのユキと同名だが、こちらは少し幼い雰囲気の女の子。
そのユキが、最初のコマで唐突に3人の悪人に誘拐されているシーンから始まる。

悪人たちは警官に追われ、山奥を進んでいると、古い屋敷が見えてきた。
その瞬間、ユキはチカラを振り絞って逃れ、屋敷に飛び込む。
そして助けを求めるものの無人の様子。
悪人たちは隠れているユキを見つけ出そうと必死に探す。
そのとき、ユキは聞き覚えのある声を耳にした。
「見回しても私は見えないわ。黙って広間へ行くのよ」
その声の指示に従って行動することで、ユキは悪人に捕まらずに逃れることができ、相手の悪人たちは自ら穴に落ちたりして次々と死んでしまう。
最後の悪人がバケモノに食べられてしまうと、ユキは助かったと思った。
そのとき、亡くなったお姉さんが現れた。
聞き覚えのある声の主はお姉さんだったのである。
懐かしんでいる間も無く、ふと見上げるとお姉さんも屋敷も忽然と消え、目の前には石の墓。
この山で遭難して亡くなったお姉さんの墓だったのである。
幻の世界にいるような感じであったが、悪人たちに誘拐されたのは現実だったはずと思い直し、周囲を見回すと、近くの枯れ木に悪人の亡骸があった。


【作品解説】
『死をよぶ山』はデビューから間もない1964年の少女誌「別冊マーガレット」に掲載された読み切りの「恐怖モノ」作品。
このジャンルでの望月作品は少ない。
一方で同年に少女誌「りぼん」に掲載され、単行本にも収録された『ひまわりっ子』はよく知られているが、本作品は単行本に収録されていないため、ほとんどの人にとっては初見と思われる貴重な作品である。
参考までに『ひまわりっ子』は望月みきや名義、こちらは望月三起也名義である。

当時の少女誌では恐怖モノが流行っていた時期があり、1965年以降の「少女フレンド」では楳図かずおによる恐怖漫画作品群が掲載されるのであるが、この『死をよぶ山』はそれよりも前であり、時代を先取りしたような作品である。

1964年は『戦闘機シリーズ』の連載が開始され、それらの登場人物名として、源・平・一ノ木・次郎がいる。
名前だけが一緒なのだが、それらは『ケネディ騎士団』『秘密探偵JA』にも登場する。
同じ掲載年の『死をよぶ山』ではユキが登場し、『ワイルド7』に通じている。
デビュー時代に描いた登場人物の名前がその後の重要な作品にも同名で登場することは興味深いところである。

*****


【事務局より】
■Kenさん、ありがとうございます。
デビュー当時の珍しい作品の紹介、とても新鮮でした。

当時の掲載誌の雰囲気が、漫画黎明期らしく全体的におおらかな印象です。
今回、特に気になったのがハシラの部分で、扉絵の
「死のにおいがぶきみにたれこめる山……、そこで少女ユキは、世にもおそろしいことにぶつかったのです!!」
こそ、読者を引き込むためのアオリのようですが
あまり漫画に馴染みのなかった低学年の読者向けなのか、以降の各ページでは
「ユキをゆうかいした悪人たちは、しずまりかえった山を、おくへおくへとにげこんでいきます!!」
「ふと目の前にあらわれた古いやしき……、こんな山おくに、いったいだれがすんでいるのでしょうか???」
「ユキをおって悪者たちの足おとが、しだいにちかづいてきます!!ああ、みつかったら、たいへん!!」
「ユキはすきをみてにげだしました、そして古いやしきの中へにげこみましたが……」
「このやしきには、だれがいるのでしょう?ユキが、どこかできいたことのある、その声は……??」
「おそろしいひめいをあげて第一の男は死んだのです。しかし、そのあとに第二の男が……」
「ぜったいぜつめい!!だがそのときです、また、あの声がユキの耳にきこえてきたのです!!」
「なんというぶきみさ!!やしきの中にひびきわたるひめいをあげて第二の男も死にたえました!!」
「さいごにのこった第三の男は、ユキのあとをおって、ジリジリとちかづきます!!」
「ユキをたすけたあの声の主は、なくなった、おねえさんだったのです!!」
「ふと見あげたユキの目に、みしらぬ石のお墓が……みまわすユキのまわりには古いやしきのあとかたもありません!!」
「すべてはまぼろしだったのでしょうか?だが死んでいる三人の男は??ユキはぼうぜんと立ちすくむばかりでした。」
と、展開していく内容がそのまま記載されていくため、コマ割りのある絵物語のような感じさえ受けます。

それでも、ユキの心に直接語り掛けてくる声の書体を変えるなど、さまざまな工夫で奇想天外なストーリーを分かりやすく伝えている気がします。
望月節も既に全開で、少女漫画としてはいささか派手過ぎるガンアクションや殺し合いも見応えは充分です。
ラストカットで摩訶不思議な世界の出来事を現実とリンクさせる描き方は、その後のSF作品などでも度々見られた、いかにも望月先生らしいこだわりだと思います。

(yazy)




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2019 年 5 月 10 日   固定リンク   |   トラックバック(0)


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