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作品紹介

第45回

ひまわりっ子

執筆者:   2012 年 8 月 1 日

とにかくコアな部分ならまかせておけ!マニアックな作品のコレクション、ご紹介に特化したかのようなちっちさんの作品紹介コーナー。今回も期待を裏切ることなくマニアック度炸裂です。

今年の4月号の「作品紹介」で、JUNさんが執筆されていた『風〔続・風〕』
読んでみたくなり、掲載している所有本を探していると・・・ありました!!

って最後にちゃんと「パワァコミックス」の『ジャパッシュ』に併録って書いてあるし・・・(笑)

その『ジャパッシュ』の最終巻である3巻の半分は「傑作短編」として3作品掲載されており、①が『風』②が『続・風』と続き、③としてもう一作品掲載されている短編がありました。

・・・それが今回ご紹介する『ひまわりっ子』です。

表紙にも書いています様に「唯一の少女コミック」というのが何とも気になり、執筆させて頂く事になりました。(←こちらの画像は若木書房『コミックメイト』併録版の表紙で、↓こちらがパワァコミックス版の表紙になります。)

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初出は『りぼん(集英社)』1964年8月号、水着の少女が当時の世俗を醸し出してますネ。

この作品、執筆名義が『望月みきや』となっているのも興味深い所です。この作品用のペンネームなのでしょうか?

『風』2編の後に続けて読むと、あまりの「ほのぼの感」に一瞬面食らうかも知れません。

それがまた趣があって良い所なのかも知れませんが・・・(笑)  そのストーリーは・・・

★気が小さくて「ひ弱」な男の子「川原タロー」の家庭教師をする為にやって来た「中田ユリ」(誤植で最初「中田ユミ」となっているけど「中田ユリ」が正解)ユリの仕事はタローの家庭教師だけに留まらず学校の送迎やイジメられた時の「用心棒」までと幅広い。過保護で泣き虫なタローは困った事が起きるとすぐに「おねえちゃん!!」と泣きつく始末。そんなタローがユリと一緒にたくましく成長していくお話・・・。

今ではお目に掛かれなくなった「~ザマス」とか言いそうな母親や、ガキ大将(番長?)土管のある空き地なんかは読んでいて懐かしく感じ、すんなりと作品世界に入っていく事が出来ました。

(とか言いながら初出時はまだ生まれてませんでしたけどネ・・・笑)

そんなタローがある日、ガキ大将とケンカをする事に。

それを仕掛けたのはなんと!ユリ!! 何故?・・・どうして!?

ケンカの是非は別として、男の勝負!白黒ハッキリつけるには最も分かり易い方法としてワタクシも昔は時々やってましたね、ケンカ・・・(苦笑)

小学1年生の初登校の日も、クラスメイトの「O君」とケンカして窓ガラスを割ってしまい、O君は泣きながら帰宅。

担任の先生からも「メッ!」と言って怒られたのも今や懐かしい思い出です。

・・・あ、話が逸れてしまいましたが、その後「O君」とは仲の良い友達になりましたっけ(笑) ユリの台詞の中に・・・

「大人になって世の中へ出たらもうかばってくれる人はいない」
「たえず自分の敵にはひとりでたちむかわなけりゃならない」
「だからいつまでも甘えていちゃ一生だめな人間になってしまう」


子供から少年、少女に成長する過程で大事な事が、これらの台詞(セリフ)には込められていると思います。

当時の『りぼん』を読んでいた読者は望月先生の漫画を読みながらその精神を刷り込まれたに違いありません!

・・・って、ちょっと大袈裟ですかね?

(↑このコマのガキ大将、何処か憎めないトコがまたいいンです!)

そうして成長していったタローにとってユリは「向日葵(ひまわり)」の様な存在だったのかも知れません。

「ひまわり」の花言葉はいくつか有ります。『あこがれ』はタローが強いユリに対して、もう1つ『いつもあなたを見てる』はユリがタローに対し、お姉さんの様な存在として。と当てはめて考えたら『ひまわりっ子』というタイトルは正にピッタリだと思う訳です。

・・・少し余談ですが、ウチの長女の名前が『ユリ』だったりします(笑)

『ひまわりっ子』、銃もバイクも出てこないけど間違いなく望月テイストは随所に散らばっている作品でした。

機会があれば是非、ご一読ください。

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『ひまわりっ子』

1964年 りぼん(集英社)8月号

1971年 コミックメイト(若木書房)「怪傑アイアン」併録

1977年 パワァコミックス(双葉社)「ジャパッシュ」3巻併録
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【追記-1】

ワタクシのプロフィール欄にも書いています様に、望月漫画のルーツと
なったのがこの「パワァコミックス」版の『夜明けのマッキー』1巻でした。

他にも望月先生の漫画を収集していく上で『ジャパッシュ』と『突撃ラーメン』を
入手、それで止めておけばいいモノをこのレーベル(パワコミ)は面白い漫画が
多いなァ・・・と。ついに全216巻を集めてしまいました!(←バカですネ)

・・・その記念に(?)全巻の画像を貼り付けておきます。

【追記-2】

前回の作品紹介の時に「sillazmanさん」から

>先生の描く女性は魅力的なので、マドンナ、パット・ベネターはカットだけでも見たいなぁ。

と、コメントを頂いていましたが丁度掲載号のレコパルが手に入りましたので望月ファンの皆様にもお披露目したいと思います。パット・ベネター、エアロビスタイルじゃなかったし・・・(笑)

追記分はいずれも画像をクリックすると拡大しますので、よろしければご覧下さいませ!

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お待ちしております。
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望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
『ひまわりっ子』・・・・・ だなんて、化石を掘り当てたというか、江戸城の石垣を見つけちゃったという気分でしょうねぇ。
タイトルが“ひらがな”だったなんて、石垣を造った方だって忘れてましたよ、あまりに古過ぎて。
絵も不得意だった女の子を主人公って、冷や汗ものだね。

多分これ、偉い編集さんに頼まれて描いたものだと思うんです。
当時私、新人ですから何でも嫌も応もない、描かせてくれるだけで有り難いとペンを走らせてたはず、ただ唯一の少女漫画ものではなく、もう一本、中篇を集英社で描いた記憶があります。
その一本も少女漫画ものというねちっこさを主題に据えたものじゃなく、女の子から見たヒーロー像っていった話で、あまりウケたという話は聞いていません。
ウケていたら少女漫画家として、その後連載を持っていたと思う。

こっちの『ひまわりっ子』も、ちっちさんが台詞を取り上げてくれていますが、当時から漫画はただ見て面白いだけじゃなく、底の方に作者の思想を流し込むことが大事だと思っていました。その部分の主題がすでに少年漫画なんですよねぇ、どうしても女としての感性で描けないンですねぇ。
でも何人かの編集さん、ひょっとしたら作風が広がると考えて仕事をくれたンでしょうねぇ。

同じ“おんな”を主人公にしたものでも、ビッグコミック(小学館)で描いた一連のコメディは作風が広がり成功したし、描いていて楽しかったのですが、純少女漫画は・・・・・ 失敗でしょう。



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