皆様には本日は大変お忙しい中をお集り頂きありがとうございました。
本日お集り頂いたメンバーは、ネットサイト『幻藏の絶版漫画収集記録』に出入りしている方々でして、年齢、職業、収集ジャンル、蔵書量もいろいろ、住んでいる地域も全国に散らばっています。その中でも望月作品には愛着がある方にお願いして望月三起也オールドファンとして、作品の魅力、自慢、そして望月作品に対する長年の熱い思いを語りつくして頂こうかと思っております。では読むにあたって、今回参加者の皆様を簡単にご紹介をしておきたいと思います。(敬称略)
東のう | 単行本では望月作品を買いつくしている。 |
マンチュウ | 雑誌から付録までリアルタイムで収集していた。 |
ヒロをぢ | リアルタイムで望月作品の雑誌を読んでいた。 |
ケンケン | 雑誌から単行本、付録まで収集されている。 |
幻蔵 | 望月作品はサンコミの単行本から収集を始めた。 |
おいちゃん | 風呂敷を広げすぎて、しょうもない収集をしている。今回、司会を務める。 |
※なお時間の都合から参加できなかった、なかのさんからも貴重な画像提供をしていただきました。 |
望月三起也と言えば周知の通り当然「ワイルド7」となっちゃうのが当然の事なんでしょうが、そこは切り口を変えて今時の読み手の方に「ワイルド7だけじゃない!いやいや、こんな面白い作品もあるんだよ。読んでみなって」って事を知って頂ければ嬉しいなぁって思いでして。確かに「ワイルド7」は週刊少年キングに長期連載されて実写、オリジナルビデオ等にもなりましたんで面白いのは当然ですし、今でも愛されている作品なんですが、もっともっと一般認識されていない素晴らしい作品が多々ありますんで、そこらを掘り下げられればと思っております。掘り下げられなくても作品を紹介ができればと・・・
はいでは、自己紹介を兼ねて最初に触れた望月作品をお教えください。
〉東のう
今晩は。改めて自己紹介させて頂きます。東のうと申します。初めて望月作品を読んだのは、もう35年以上前で、友達から借りた秘密探偵JAだったと思います。JAが再出版されていた時期です。その後は、ワイルド7です。単行本から入って行きました。緑の墓(ヒットコミックスの14~16巻)を最初に読んだと思います。その後は、リアルタイムで少年キングを購入し読んで行きました。
〉おいちゃん
では、やはり実写版の「ワイルド7」も見られた方ですか?
〉東のう
なぜか、実写版は見ていないですね。
〉マンチュウ
私はふるいですよ。少年画報の「ムサシ」ですね。
〉おいちゃん
望月先生のデビュー作ですよねぇ・・・それって
〉マンチュウ
デビューは、読切短編です。「ムサシ」は昭和37年の最初の連載です。
〉おいちゃん
はははは・・・そりゃ知りませんでした、確かにそこからのファンだと凄いなぁ・・・
〉東のう
マンチュウさんはデビュー作からリアルタイムなんですね。
〉マンチュウ
当時、私は「少年」を購読していたのですが、近所に少年画報を購読している子がいまして、毎月交換して読んでました。
〉東のう
「ムサシ」って作品は、二丁拳銃。まさに剣豪武蔵なんでしょうかねぇ。
〉マンチュウ
物語は、ブラジルの開拓地で始まり、日本に舞台を移して終わりますが、ムサシという名前や二丁拳銃は、当時、吉川英治原作の「宮本武蔵」が中村錦之助主演で映画化されていて評判だったので、その影響かもしれませんね。その二丁拳銃ですが、普通とは逆に銃の握りを前にしてガンベルトにさしていました。打つときは両手を交差しないと銃が抜けない、それくらい早撃ちだということですね。西部劇でも、早打ちのガンマンがときどきそうしていました。
〉ヒロをぢ
私は望月初体験は小学生の時の少年ブック『ケネディ騎士団』でした。
コミックスはサンコミではなく若木で集めました。どっちかっつうと望月先生の作品では思いっきり荒唐無稽な話がすきですね。その意味ではワイルドは入るんですが・・・
〉ケンケン
私も「ケネディ騎士団」を同級生の家で見せてもらったのが最初だと思います。
〉おいちゃん
当時としては人気作で長編作品でしたものねぇ「ケネディ騎士団」って
〉幻蔵
そうですねぇ、「ケネディ騎士団」も好きな作品なんですが、私は「竜の旗」かなぁ。
兄弟が東京に居てお土産に買ってきてくれた単行本でして。愛着があります。
〉おいちゃん
子供の頃のお小遣いでは中々気軽には単行本なんて買えませんでしたもんねぇ・・・
– – –
〉おいちゃん
ワイルド7は当然なんでしょうけど、それ以外でどんな作品が最近の若いファンには一番お勧めなんでしょうかねぇ??
〉マンチュウ
私は、個人的には「最前線」シリーズですね。
〉おいちゃん
最前線のどこら辺が好みなんですか?
〉マンチュウ
かっこいいアクションものでありながら、当時テレビで大人気だった「コンバット」にはない日本人ならほろりとする話が結構ありました。
〉おいちゃん
テレビの「コンバット」は良く見てたもんなぁ・・ビッグ・モローでしたっけか?
〉マンチュウ
主役は二人いて、ビッグ・モローはサンダーズ軍曹、リック・ジェイスンがヘンリー少尉でした。
〉おいちゃん
スピルバーグの「トワイライト・ゾーン」という映画に出演してて撮影途中で事故死したんですよね、ビッグ・モローは
〉ヒロをぢ
ビッグ・モローの事実上の遺作って『宇宙からのメッセージ』だったんですよ、・・・あ、話題が段々それちゃっているけど・・・
〉おいちゃん
げげげ・・・「宇宙からのメッセージ」に登場していたっけか??見た筈なのに記憶がねえや・・・とほほほ
〉ヒロをぢ
はい!出ていましたよ。
〉マンチュウ
コンバットは、1962年(昭和37年)11月からTV放送が開始され、翌12月には、ジョン・ウェインをはじめオールスターキャストでノルマンディー上陸作戦を描いた「史上最大の作戦」が封切られました。さらにスティーブ・マックィーン主演のドイツ軍捕虜収容所からの連合軍兵士の脱走を描く「大脱走」が1963年(昭和38年)8月に封切られました。第2次大戦をスポーティなアクションに描く映画やテレビが多くみられたのです。こうした一種のブームの中で、少年画報で「ムサシ」の後に連載されたのが、日系二世の分隊がヨーロッパ戦線で活躍する「最前線」でした。望月先生のライフワークのひとつだと思います。掲載誌が相次いで休刊したため、未完に終わった「JIジョー・悪一番隊」もそのバリエーションですね。
〉ケンケン
「ジャパッシュ」なんてどうでしょう・・。
〉マンチュウ
そうそれも、近未来もので、時代を先取りしていて良いですねぇ。私は熱血根性ものの「竜の旗」「日の丸陣太」「突撃ラーメン」あるいは「夜明けのマッキー」などがいいのではないかとおもいますが・・
〉東のう
スポーツものでは、ザ・キッカー。セミノンフィクションながら面白い。連載がサッカーブーム前だったのが残念。それと、ダンダラ新撰組。
〉おいちゃん
そう「ダンダラ新撰組」ってジャンプの企画で発表された時に久し振りに面白い作品に出合ったって思ったんですよ。
〉ヒロをぢ
個人的に好きなのはやはり『ケネディ騎士団』かなあ・・・。子供が主役なのにどんどん死んでゆくのがハードで望月っぽい?
〉おいちゃん
あれも長編でしたよねぇ・・・当時としては
〉ヒロをぢ
初めて読んだのが「ケネディ騎士団」のゼウスってサイボーグが出てくる話の最終回の号でしたが、一ノ木がガラスを爪でひっかく音で相手が倒れるってのが結構衝撃的でした。私もあの音苦手なもんで・・・
〉マンチュウ
「ケネディ騎士団」は人気があったので、少年ブックが休刊しなければ、もっと続いていたでしょう。
– – –
〉おいちゃん
やはりこう話していると結構ありますよねぇ・・・時代を超えて読み続けて欲しい作品って。青年雑誌連載作品なんかだと「ごくろう3」とかってサブタイトルが面白いですよねぇ・・・ちょっとお色気が入ってて気の利いたギャグも鏤められていて面白い作品ですし・・・個人的にはこんな作品もお勧めなんだけどなぁ・・・
〉東のう
青年作品だと、ビタミンI、うるとらSHE、ごくろう3、oh!刑事パイ。その中でもお色気路線のビタミンIですが、単行本の巻頭に石子順造氏がコメントしているとおり娯楽性を追求されていて、アクションものとは別の意味で良いのではと思っています。
〉マンチュウ
ビッグコミックにはエロチックギャグが続きましたが、私はやはりアクションものを描いてほしかった。ちなみに、東のうさんのあげられた「ごくろう3」と「Oh!刑事(でか)パイ」の間に「へい、お町」という作品が連載されているのですが、なぜか単行本化されていないようです。
〉おいちゃん
エロチックギャグ路線って、あれはあれで大好きなんだけどなぁ・・・当時連載雑誌買ってて親に見つからないかとビクビク所有していましたっけかねぇ・・・なんたってヌードグラビアとかが収録されていたしねぇ・・・懐かしい。
〉東のう
うるとらSHEとビタミンI。少年が青年誌を読んだ時の衝撃は忘れられません。女性キャラのやや太めの体形の女性に魅力を感じました。、この影響もあったので、家内もその傾向ですね。特にヒップが・・・
〉おいちゃん
それそれ、確かに分かりますよ。それって・・・笑
〉ヒロをぢ
私は少年ものしか読んでないんでカワイイ系しか知りませんよ~だ!イコちゃんとか好きでした。
〉おいちゃん
やっぱりワイルドのユキだなぁ・・・個人的には
〉ヒロをぢ
ワイルドでは新の方の黒人も結構カワイかったかな?
– – –
〉ケンケン
集英社から出版された「ジョーカー」に掲載された脚本:岡本喜八の「幕末野郎」という作品なんですが、上編しか所有していないので、つづきが知りたいです。
〉マンチュウ
「独立愚連隊」シリーズなどの映画監督・岡本喜八と組んで、「男の劇場」シリーズが始まったので期待したけれど、7回で終わってしまった(1969年のことです)
〉おいちゃん
それってケンケンさんが画像見せてくれた作品??
〉マンチュウ
そうです。「幕末野郎」、「鎖」、「大胆不敵」の全3話で終わりました。
〉おいちゃん
残念ながら単行本にもなっていない作品なんでしょうねぇ・・・通して読んでみたい作品ですよ、これって。
〉マンチュウ
はい、単行本化されていません。原作者との著作権の問題じゃないでしょうか。
〉おいちゃん
そうそう今回この座談会をするにあったって何人かの方から画像提供して頂いて見ているんですが、やっぱり単行本の表紙も魅力的なんですが連載当時の付録とか雑誌表紙には惹かれるものがありますねぇ・・・兎に角、カラーの色使いが他の漫画家のセンスとはかけ離れててびっくりしました。
座談会?冗談かい?
いやはやワイルド6でしょうか。ディープですねぇ。
ここまで、深く沼をさらうというか、魚の料理、骨も残さず食べ切るというか、一編のマンガ、ここまで味わいつくしてくれたら、造り手としては、大、大、大満足!!
デビュー作、ムサシの二挺拳銃は、そのまんま二刀流のGunヴァージョンです。
当時の私は、西部劇大好き人間、公開された西部劇映画は、A級B級すべて見尽くすという大オタクなだけに、マンガでも描いて見たかったわけ。
でも、漫画界にはジンクスがありまして、西洋人(ガイジン?)の主人公はウケないと拒否されてしまうのですよ、編集部に。それでもと押し売りする為、主人公は日本人の西部劇ってことで、舞台をアメリカ西部ではなく、ブラジル西部に移した苦心作ってわけ。ブラジルには日系移民が明治の頃から移住しはじめていましたから、そのまんま、西部劇仕立てに仕上げたわけ。が、そこはこだわり屋の私、想像だけで描きたくない。リアリティを求めて、まず現地の地図を入手したかった。が、当時、本屋さんへ行っても、世界地図しかない。くわしいアマゾンのあたりが入手したい、と体当たり取材、ブラジル大使館へ押しかけました。
今ならサッカーでブラジル大使館へ行くところですがね。
デビュー当時は、描く事に懸命で、趣味のサッカーは机の片すみ、頭の中でもスミへ置いてました。
さて、大使館の応対はというと、押しかけたにもかかわらず広報の方がそれは親切に対応してくれて、質問にも細かく答えてくれて、なによりも、ブラジル語、いやブラジルですからポルトガル語ですが、なんとそれで表記した地図、くれたのですよ。これはすごい参考ですよ、感動です。ブラジルが好きになりました。だから、その後、1974年のドイツで開かれたW杯では、ブラジルチームの追っかけ。準決勝で敗れはしましたが、その試合、相手は当時世界最高のチーム、クライフ率いるオランダ。未だに歴史に残る好試合をドルトムントまで観に行きました。
余談ですが、同じドルトムントで、日本がそのブラジルと2006年にW杯で闘うとはねぇ。その試合、あまりの日本と世界の差にあきれ、試合を最後まで見ずに、駅へ歩き出した私だったのです。すぐサッカーへ話が行く悪いクセです。話はムサシですよね。
この作品で、凝りに凝ったのが、拳銃とキャラクター。拳銃も主人公は明治26年式というGunを持たせ、明治からの開拓民のイメージをつくりました。その頃は、他のマンガ家が、らしきものが手の上に乗ってるという状態のGunしか描いてなかったので、Gunマニアのファンは、この作品を喜んでくれたのだと思います。
もう一つの凝りが、私の好きな映画の役者の似顔絵。悪役はリー・マービンや、リチャード・ウィドマークだったのです。今なら多分、うるさいでしょうね。
映画好きとしては、主人公がカッコよく見えるのは、悪役がいかに個性豊かに動くかにかかってると映画から学んだわけで、それをマンガに生かしたわけです。何人かのファンには、そのあたりのシャレも通じてたようで、好評でしたね。 →後編へ
望月先生のコメントのつづきは〈後編〉 にて
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