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作品紹介

第30回

鉄血二代

執筆者:   2011 年 3 月 8 日

教育関連学年誌にも多くの作品を提供してきた望月先生ですが、単行本化されていない作品も多く、まさに幻の作品と化しているのも現実。今回はそのような一作にスポットを当てます。

「料理人に国籍が関係あるか!!いかにうまいものを作るかだけが問題なんでぇ!」
この信念のもと、たった一人で戦火のヨーロッパを舞台に料理だけに情熱を燃やして、みごと愛と一流の腕を手に入れた主人公「伊達正造」を中心に、毎回ダイナミックな展開が繰り広げられる作品、それが旺文社発行の中二時代に1972年4月号から12月号まで連載されていた、熱血アクションまんが「鉄血二代」です。
「アクション」、「ミリタリー」、「人情」、「食がテーマ(注)」これらの要素がほど良くミックスされており、(食をテーマにしているだけに)いい味出しています。(座布団一枚!)

さて、前半の舞台は、第二次世界大戦のドイツ軍の占領下の北フランス、一流のコックになる為、単身でフランスに料理の修行に来ている『伊達正造』は、ドイツと同盟国の日本人でありながら、どちらかというとフランス人よりの考え方で、冷酷なドイツ軍とは一線をおいて時にはパルチザン(外国侵略軍への抵抗運動や内戦・革命戦争における非正規の軍事活動グループ。イタリア語 partigianoが語源。この場合、反旧ドイツ軍ゲリラ)の攻撃に加担し、かと思えばパルチザンの無益な殺生には反対と、ところどころに見え隠れする望月作品では必ず表現されている反戦へのテーマが色強く描かれています。これはいつの時代でも大事な事だと思います。
他にも恋愛あり男の友情あり、子供から大人へ成長過程にある中学生ぐらいが読むのにはピッタリの内容の漫画でした。

連載当時、私は丁度中学生で、中学校の図書室で偶然この作品を見つけて飛び上がって喜びました。それからは、休み時間の度に図書室を訪れては、何度も何度も読み返していました。今でも名シーンが頭の中に蘇ってきます。
たとえば、エンジン部分が破壊され動かないドイツ・Ⅲ号戦車 M/N型(連載当時、田宮模型がプラモデル化)をある方法で移動出来るようにして(このアイデアが抜群!)、ドイツ軍に対してドイツ軍の兵器で応戦するシーン。先生お得意の息をつかせないアクションが続きます。

また、自分の命も顧みずドイツ軍の捕虜になっているフランス娘を助け出し求婚する男の中の男を表現するシーンなど、あの頃少年誌でしか読めなかった、いつものスカッとする望月アクションが、どちらかと言うとお堅い系の学習専門雑誌で読めたなんて、私はなんてラッキーだったんだとこの原稿を書いていて、今になってつくづく思います。ホント。

そして後半は、あっという間に月日が流れ30年後の横浜が舞台。44歳になった正造は、戦時中に知りあったパルチザンのリーダーの妹マリーのハートを見事射止めてゴールイン、一人息子の義造と三人で今は細々とボロアパート暮らし。正造が定職についていない為、貧乏生活を余儀なくされている、がしかし、この妻マリーがもの凄かった!
さすが元パルチザンの妹だけあって、愛嬌もあるが度胸は満点。その容姿からはとても想像もできない大活躍をやってくれます。(このあたりの展開は「ビタミンI 」、「うるとらSHE」など と通じるものがあります。)
正造のせっかくの一流ホテルのコック長の就職話をウエイター達の妨害工作に遭いふいにしたが、単身レストランに乗り込み復讐をはたし、しっかり料理代をせしめ、、もう日本の妻の鏡です。

一方息子の義造は、親父に似てこれまた熱血漢。顔がどことなく若い頃の飛葉ちゃんに似ています。将来の夢はなんと白バイ警官(もしかして「ワイルド7」になるのが夢だったりして(笑))。数々の妨害を受けながら命がけで料理の材料を届けようとするシーンは、まるで任務を命がけで遂行する「ワイルド7」を彷彿させます。

もちろん、その他の登場人物もタダ者ではありません。たった一口味見しただけで、正造が作ったケーキではないと見抜き、ケーキの中に仕掛けられた時限爆弾で見事テロリストを壊滅させる?この道40年のフランス大使のお父上マルクさん97歳。

さて、ストーリーはテロリストによるフランス大使暗殺事件、フランス大使別荘人質籠城事件、銀行現金襲撃事件と非日常的な出来事が次ぎ起きるのですが、本来シリアスな場面であるはずが、ユーモラスなテイストも忘れず味付けされていて、読んでいる読者をぐいぐい引きつける内容は、前にも書きましたが、まるで「ワイルド7」のようなハードアクションでもあり、「ビタミンI」や「うるとらSHE」などに代表されるコメディのようでもあり、あるいは「突撃ラーメン」のような食漫画にも思えます。

残念ながらこの作品は、まだ一度も単行本化されておらず、また中学生用の学習雑誌に連載されていた事もあり、一度も目にしたことがないファンも数多くいらっしゃると思います。いつの日か単行本化された暁には、当時読めなかった方にも是非とも一度読んで(食して)もらいたいお勧めの一品です。

最後に日本で最初に食をテーマにした漫画を描かれたのは間違いなく望月先生だと思います。食に対する徹底的にこだわりを追求した漫画をまた描いていただきたいと思います。
またその時は、作品紹介をしたいと思っています。

※注 望月先生はこの作品の前にも「突撃ラーメン」という日本で最初に食をテーマにした傑作漫画を描かれておられます。




『鉄血二代』
1972年 中二時代(旺文社) 4月号~12月号
未単行本



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望月先生のコメント
困りますねえ、私の忘れてた作品まで倉庫の中からほこりを払って取り出してくる人がいる。
そう、中二時代なんて雑誌があったのですよねえ。今にして思えば、学習雑誌とは、学ぶ足し、勉強のはずなのにね。私の場合、休み時間担当だって態度で描いてたんですね。 ストーリーは、もう忘れてますから、eddy-sさんの解説の通りなら漫画専門誌の内容だったようで。ま、学の足しは他のページでやってもらって、頭を休める夢のページが私の担当ってことですね。
ただ言えるのは、どこの舞台で登場しても“男”として一本筋を通す生き様ってテーマは変わらず主張してきたようで、これは今も続けてます。
でも本当正直、この先もこんな困ったコメント求められるのかと思うと、ファンとは有難くも怖い存在ですね。

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