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作品紹介

第32回

「ワイルド7」
単行本徹底比較(前編)

執筆者:   2011 年 5 月 9 日

たまにはこんなデータを交えて作品を紹介なんてどうでしょう?そんな番外編のつもりでどうぞ

【はじめに】

「ワイルド7」といえば、望月三起也の代表作でありその後多くの人に影響を与えたメガヒット作でもあるので、この「月刊望月三起也」をご覧になってる方にはその内容について今さら説明は必要ないかもしれません。
かなりの量になる「ワイルド7」の単行本を、全巻揃えた人もここでは珍しくないはず。
むしろかつて全巻持っていたが引越しや結婚、友人に貸したまま返ってこなかった……などなど、何かの理由で手放してしまったために、再度読み直そうとまた全部集めてしまったなんて人も結構いるんじゃないでしょうか?
これだけ長く人々に愛され続けている作品なのだから当然ですね。

その間にいろいろなバージョンの「ワイルド7」が発売され、たまたまそのとき手にしたシリーズが前のものとは違っていて、読んでるうちに「アレ?こんなンだったっけ?」なんて思ったコトはありませんでしたか?
あるいは、興味を持ってこれから読もうと思ってる方の中には「書店やネットなんかでいろいろ見かけるけれど、結局どこか違うの?揃えるならどれが一番いいんだろ?」なんて悩んじゃってる方もいませんか?
よっしゃ、分かりました!
ではこれまで発売された「ワイルド7」の単行本シリーズを、思い切って2回に分けて比べてみちゃいましょう!

【シリーズ紹介(1)~(5)】

「ワイルド7」の単行本には以下のようなシリーズがあります。
これらを発売順に全巻の表紙画像と一緒に紹介していくことにします。


(1)HC
【シリーズ】ヒットコミックス
【出版社】株式会社 少年画報社
【刊行】1970年8月~/絶版
【巻数】全48巻(完結)
【サイズ】新書
【総ページ数】11,172頁
【厚さ】83cm
【重量】9.9kg

■記念すべき「ワイルド7」最初の単行本であり、連載終了後も発売が続いたポピュラーなシリーズです。
発売時期が長かったため、いくつかバリエーション違いがあるのも特徴で、特に1~20巻の背表紙の上部がヒットコミックスのマーク「カエル」の初期のものと、21巻以降と同じワイルドのエンブレムを掲げた「新版」の2種類があります。
表紙の配色、裏表紙のデザインも異なります。
ページ割の都合で、巻末に「かっこいいやつ」「地獄の灯」(2巻)、「宇宙ハンター55」(16巻)「かわいい女(マッド・ドッグより)」(25巻)など付録としてワイルド以外の作品が収録されているのも特徴です。
表紙のカットは書下ろしではなく、連載時の扉絵などを流用しています。


(2)TCD(徳間DX)
【シリーズ】トクマコミックスデラックス
【出版社】株式会社 徳間書店
【刊行】1987年1月~/絶版
【巻数】全36巻(完結)
【サイズ】B6
【総ページ数】10,993頁
【厚さ】98cm
【重量】11.0kg

■徳間書店「コミックバンバン」で「新ワイルド7」の連載がスタートしたときに刊行されたシリーズです。
表裏ふんだんに使った派手なデザインのカバーイラストが魅力です。
ときどき巻末に収録された望月先生のコラムもファンには新鮮で、あまり自身を語らない望月先生の趣味などを知る貴重な機会でもありました。
HCよりサイズが大きくボリュームもあり、それまで分冊されていたエピソードが一気に読めることや、その後のシリーズがなかなか完結までたどり着かなかったことから考えると、なかなか良心的だったと思います。
ただし欠点も多く、そのボリュームから現時点で最も本の厚さと重量があるシリーズとなり並べて置くにはいささか苦労します。
また各章が途中から始まることが多いため、一気にまとめ買いをするには向いてるかもしれませんがエピソードごとバラバラに持ってる人は集めにくいかもしれません。
ちなみに「熱砂の帝王」から引き継がれる「超高層の対決」が、なぜか外章として26巻「灰になるまで」の本編の途中に唐突に収録されているので注意が必要です。


(3)トクマ文庫版
【シリーズ】徳間コミック文庫
【出版社】株式会社 徳間書店
【刊行】1994年12月~/絶版
【巻数】全33巻(未完)
【サイズ】文庫
【総ページ数】9,106頁
【厚さ】48cm
【重量】6.4kg

■美しい表紙イラストは、プラモデルの箱絵などで広く知られる高荷義之氏による書き下ろし。
文庫サイズで手軽に読めるメリットはありますが、残念ながら諸般の事情で最終章「魔像の十字路」が収録されていません。


(4)香港版
【シリーズ】7金剛 (WILDSEVEN)
【出版社】玉皇朝出版集團
【刊行】1995年12月~/絶版
【巻数】全48巻(完結)
【サイズ】B6
【総ページ数】11,122程度(10,892+ 推定230)
【厚さ】約85(83+ 推定2)cm
【重量】約10.3(10.1+ 推定0.2)kg 

■ここで変り種として紹介するのが、中国語に翻訳されたワイルドです。
全48巻のうち38巻だけが入手できませんでした。
カバーイラストは独自に既存のカットなどを使って自由にデザインしています。
そのため何故かワイルドのメンバーたちに交じって「新ワイルド7」のエンゼルまで登場しちゃってます。
またワイルドのエンブレムも何故かスカイネットの1/6フィギュアのときのものが使われるといった具合で、かなりチャンポン感のあるシリーズになってます。
内容の方は先述のトクマDXが元になっているため、中のデザインや望月先生の巻末コラムなど共通点は非常に多いです。
背表紙も作中のコマからキャラクターを選んでいるため、どこのシーンか探す面白さがあってとても楽しいです。


HCと同じ全48巻ですが、区切り方はストーリーに関係なく各巻ほぼ均等に230頁前後でブツ切りにしてる感じです。
本の体裁や収録内容もですが、このシリーズの場合にはみなさん、どうしても馴染みの薄い「中国語のワイルド7」というものが一体どんな感じなのか?ということの方が気になるんではないでしょうか?
まず、メンバーたちの表記は左のようになります。
ちなみにユキは「本間雪」になってました。


中国語に翻訳するに当たって、最初のうちは書き文字も一つ一つ丁寧に漢字を当てはめていたのですが、かなり早いうちから原稿のセリフ以外はそのままで、書き文字やカタカナ表記の部分には欄外に注釈が入るという方法に変更されてしまい、その後は日本のコミックスと似たような雰囲気になってます。




(5)TFC(コンビ二版)
【シリーズ】トクマフェイバリットコミックス
【出版社】株式会社 徳間書店
【刊行】2001年4月~/絶版
【巻数】全18巻(第1期終了・未完)
【サイズ】B6
【総ページ数】3,945頁
【厚さ】32cm
【重量】3.4kg

■今ではコンビニ店内の一角を占めるほどに一般化した、いわゆるコンビニ本と呼ばれるムック本ですが、ワイルドもかつてこのシリーズが月に2回のペースで刊行されていました。
特筆すべきは、可能な限り雑誌連載時とページの左右を合わせたり単行本未収録の扉絵を収録するなど忠実に再現している点です。
既に原稿が紛失してしまったものは雑誌から起こすといった徹底のしかたで、それまでの単行本ではエピソードごとに連続していたページも、1話ずつに区切ったり、初出一覧を掲載するなど、資料性の面でも非常に高い位置づけです。
「マニアックかつ良心的な編集」として「金魚屋古書店」(芳崎せいむ)2巻にも紹介されています。
ファンからは支持されながらも、当時のコンビニ本のラインナップにはまだ連続モノはほとんど無かったため18巻の「緑の墓」まで収録したところで第一期終了という形で幕を下ろしました。

■さて、ここで前半終了、まだまだ他にもワイルドの単行本はあります。
続きは次号(後編)で。



※頁数については本編を基準にしているため奥付ならびに広告などの頁はカウントしていません。ただし本編中に挿入されている扉絵、白紙、カット、タイトル等については本編と同様にカウントしています。
※厚さは各シリーズを積み上げたものをメジャーで、重量は0.1kg単位で計測できる体重計を使った実測値です。その場の環境、媒体のコンデションにより若干変化する可能性があります。
ご参考までに




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月刊望月三起也ではみなさんからの投稿をお待ちしています。
「望月マニ也」「作品紹介」のほか書式や内容は自由、採用者は「月刊望月三起也」で掲載。
また掲載された方には、望月先生書き下ろし特製ポストカードをプレゼント!


是非、月刊望月三起也事務局までメールを送ってください。
お待ちしております。

info@wild7.jp
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望月先生のコメント
今月号の望月先生のコメントはお休みします

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コメント/トラックバック

  • ぐりゅーん・へるつ :
    yazyコレクション、いよいよご開帳ですね。
    これだけ並べられると壮観です。

    ヒットコミックスの48巻。この圧倒的な質と量。
    書店での存在感、ありましたねぇ。

    ヒットコミックスはブックデザインも好きでした。
    もちろん、望月先生の「一枚絵」としての魅力に溢れたカバーイラストあってのものでしたが。

    特に「緑の墓」あたり、「どうしたらこんな絵を思い付くんだろう」と、今でも強い印象を受けますね。

    この中だと、TFC(コンビニ版)の続刊に期待したいところです。
    映画化を記念して復活してくれませんかねぇ〜。

    そうすれば「地獄の神話」の「植物園の戦い」のバイク突入シーンの見開きページや、「魔像の十字路」最終回の正しいページネーション、あるいは「ガラスの城」の冒頭グラビアページの収録もしてもらえるんじゃないかと思います。

    コレクションの後編も楽しみにしています。
  • hydek :
    すごい!yazyさん。
    重さまで載っているのがマニアだなぁ。と思いました。(笑

    是非ぶんか社様で連載当時のまさにザ・復刻版文庫を出してほしいなぁ。ワイルド完全版全集って素敵だ。
  • yazy :
    > ぐりゅーん・へるつさん
    ■特にワイルドは単行本表紙がどれも豪華なので
    一堂に会してみたいなぁという欲求は前々からありました。

    最近では未収録扉絵などいろいろ発掘したシリーズも発売され
    それはファンとして非常に嬉しいのですが
    結局終盤はどのシリーズも収録内容に代わり映えのない感じがするのと
    個人的には扉絵を挟まず一気通貫で読んだ方がスピード感があって
    ダイレクトに面白さが伝わってくる感じがして好きなので
    ファンが満足する全ての要素を詰め込むのはなかなか難しいんでしょうね。
  • yazy :
    > hydekさん
    ■ありがとうございます。
    重量と厚さは、部屋に並べておくときに本棚のスペースと相談するときなどに役立つかなぁと思いまして。
    初期はほぼ毎号、広告や読物が入るスペースがあって
    現存する原稿から再現するのは非常に大変な作業になると思います・・・けど、どんな風に雑誌に掲載されてどんな風に修正されていったのか、比べてみたくなりますよね
  • 健太郎 :
     yazyさん、ありがとうございました。

     仰るとおり、先生の単行本の表紙は、とても豪華ですね。一堂に会した先生の単行本の表紙の描画を見せていただき、その素晴らしさ、魅力をあらためていっぱいいっぱい感じました。香港版の表紙は、これまで私が見たことがなかった描画もありました。
     素晴らしい芸術ですね。

     単行本を全部集めることができませんでしたが、表紙を全部見ることができて、とても幸せな気持ちになりました。
     ほんとうにありがとうございました。
  • yazy :
    > 健太郎さん
    ■香港版は珍しいですが、これだけたくさんのバリエーションがいろいろな時期に発売されてたら、目にしてないものがあってもおかしくないですよね。
    お役に立てて幸いです。

    次回の後編でも、たくさんのシリーズを取り扱いますのでよろしくお願いします。

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