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作品紹介

第80回

凹山凸兵衛

執筆者:   2016 年 1 月 8 日

記念すべき第80回目の作品紹介欄への投稿が、超が付く希少作品ときた日にゃ、干支の猿(申)も「見ザル」「聞かザル」「言わザル」とはいかないねぇ。 ・・・・なんてね。

bd02Kenさんが以前作成された望月先生の『作品リスト』を見ていますと沢山の読み切り作品があるのに気付きます。

それら読み切り作品の大半がコミックス未収録になっており、掲載雑誌でしか未だに読む事が出来なかったりするので、そういった未収録作品を収集している方も多いのではないか?と思います。

そういうワタクシも古い雑誌を扱っている様な古書店に行ってはチェックを怠ってはいません。ある時、偶然にも望月先生の雑誌の切抜きを数編まとめた物を古書店で見つけ購入しました。

その中には以前izizさんが紹介していた作品もありましたが、今回は【超】の付く異色作、『凹山凸兵衛』を紹介したいと思います。

読み方は『ぼこやまでこべえ』でいいのかな?

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かなりディープな望月ファンでも、この作品は知らない方が多いンじゃないでしょうか?

Kenさんのリストによると1971年(S46)の増刊ビッグコミック(小学館)とありますが、1973年(S48)発行の
劇画セレクト(芸文社)3月号にも再録されたみたいですね?

現時点でリストから漏れているので、追記の方よろしくお願いします。増刊ビッグコミックの方は2色カラー、劇画セレクトの方はモノクロ掲載だった様です。今回入手出来たのは切り抜き状態でしたが、増刊ビッグコミックの方だったというのが分かります。

・・・さて、お立会い。

タイトルからはどんな内容の漫画なのかは、リストを見ていた時点では分かりませんでしたが、ページの枠外上に『画漫争戦題問』の文字。

☆アア、堂々ノ大日本帝国陸軍!必勝の信念に燃ユル男ノ世界ヲ雄々シク描イタ報國漫画、一挙公開!!

そのストーリーは・・・

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友人の父の体験をまとめた物を出版社に持って行く為に上京するシーンから始まります。

●待ちに待った召集令状・・・・・・赤がみを受けとったときにはよろこびにヒザがふるえました。

●身辺の整理するものとてはなく、ただちに出撃準備にかかりました。

●私の勇気ある言動が、ふだんから当局にみとめられておったものと見え、先方からわざわざお迎えがまいこんだのです。

●私はていねいに辞退申し上げました。

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●ご近所様総出の見送りを受けはなやかに入営致しました。

●ありがたいことです・・・・・・・本来なら兵隊検査でおちていたはずの私もこうまで扱って下さって・・・

1ページに1コマ、ないし2コマでストーリーが進んでいくのですが、ナレーションの内容とは裏腹に、召集令状が届いたので夜逃げしようと企てている所を強制連行され、挙句に兵隊検査で身長が足りなかったのを「たんこぶ」を作られ強引に『丙種合格』に・・・。

●一日めは衣服を支給され・・・

●着かえる我が班の同期の戦友は皆 必勝の信念にあふれ・・・

●これでこそ鬼畜米英に打ち勝てる大和男子と心中頼もしく思ったものです。

無理矢理に連行され、全然やる気のない表情の連中に囲まれ、これから始まるであろう厳しい訓練にどう立ち向かうのか?・・・と思った矢先、

●術科教練は体操、射撃、予行演習とありますが私は、特に徒競走に秀いでたところを見せました。

●しかしながら私の熱意はわかるが夜襲訓練はまだ早いと古兵殿の注意を受けたものです。

いやいや・・・単に逃げ足が速いから闇に紛れて脱走を企てただけやん・・・と、ツッコミを入れずにはいられませんでした。

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●古兵殿が新兵の面倒を見る事 親、兄弟もかくやとばかり・・・・・・私などは虫歯まで抜いていただきました。

●教練が終わると楽しいゲームなど特にくわえて下さり・・・・・・

●三週間たちますと昼の訓練を夜まで反復自習する熱心な新兵もでてまいります。

しかし体罰やシゴキも言い方次第、捉え方次第でこうも変わるモンなのですね~(笑)

結局、脱走が失敗に終わり処刑される事になるのですが、最後に言い残す事は?の問いに

「私は貝になりたい・・・」と。

あれ?どっかで聞いた事あるなァって調べた所、『私は貝になりたい』というタイトルで、テレビドラマや映画が過去に何度か作られていた様です。主人公が気の弱い平凡な理髪師とあり、成る程!それでこの漫画の主人公も理髪師だったのか!?というのに合点がいきました。この漫画が発表された当時、大人だった読者が読んでニヤリと出来る・・・そういう作品だったンですね。

bd08最後は言い残す言葉が中々決まらず、終戦まで引っ張るというシーンで終わるのですが、戦時中の国民の本音とタテマエが見え隠れする『怪作』に仕上がっている様に思いました。

シリアスな内容だけど面白おかしく、ちょっと『異色』でありながらも、そこかしこに望月テイストは散りばめられおり、全14ページながら実験的な『野心作』でもあったのではないかと思う次第です。

ただ少し気になったのはこの作品、何処にも作者名が見当たらなかった事・・・。

作品紹介していてなんなのですが、ホントに望月先生の作品だったンでしょうか?

誰かおせーて!
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凹山凸兵衛

1971年 増刊ビッグコミック(小学館)2/1号

1973年 劇画セレクト(芸文社) 3/1号

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望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
確かに私のタッチだし、皮肉も私らしいけど・・・・・ 
本当に描いたの?って言われたら50%・・・・ 絶対に俺って言い切れない。
とにかく忘れる名人という私。
クイズ番組で、『忘れる選手権』なんてあれば、すぐに出場するね。
どうも、いつも言っていることですが、私の頭ン中、昨日より明日に向かって回るようで。
バランス、悪いなァ。

でも、ビッグコミック(小学館)に載ってたのなら多分私でしょう。 ・・・・って、酷いコメントだ。
むしろマニアックなモノを入手したことに驚くね。古書店ってそういうのもあるんだねぇ。
今度時間を作って神田の古書店街へ行ってみよう。


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