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作品紹介

第28回

うるとらSHE

執筆者:   2011 年 1 月 4 日

ビッグコミック誌上にて花開いた望月コメディ。その金字塔的作品のひとつがこれだ。前作『ビタミンI』で振り撒いたお色気は倍増そこに得意のスピード感をプラスして爆笑街道突っ走る。

「ビッグコミック(小学館)」に連載され大好評のうちに終了した望月流コメディ「ビタミンI」。
その後を受けてスタートしたのがコレ、「うるとらSHE」です!!

主人公の一人小原マキは既婚で八百屋のおかみ、六条千草はボインで独身デザイナー。男は愛嬌、女は度胸?!と自由奔放に生きるお色気コンビ。舞台は都内で二代続く八百屋「八百九」。このお色気コンビ+1が毎回巻き起こすドタバタお色気人情アクションコメディ?!
連載当時の日本の社会問題等を痛烈に風刺しつつも笑わせて魅せる望月先生の奇抜なアイデアが随所に満載!! もちろん青年誌ではお約束のお色気シーンもバッチリ満載です!!
第1話の冒頭では、ミニパトから颯爽と降り立つ婦人警官姿の二人、てっきり今回の話はポリス物かと思いきや、なっなんと!1日警察署長ならぬ1日交通課婦人警官だった?!
しかも、駐禁の切符を切る相手は、こともあろうかマキの旦那の九郎!!


さっそくドタバタ劇が始まるという按配(あんばい)。いつもの事ながら、読者の期待をいい意味で毎回裏切って下さる望月先生の抜群なアイデアの数々が私は大好きでした。

三人が住む家の造りがこれまた変っていて、表側は八百九、裏に回ると千草のブティックと背中あわせで繋がっているという趣向、この家の作りを題材に、一話出来るのではないかというほどの面白さ。実際に何度かそういうストーリーもありました。
こんな家が現実にあったら面白いと思います。TVドラマ向きですね。

そして、お父さんお待たせいたしました、少年誌では滅多に見れない青年誌ならではのお楽しみ、毎回登場する二人のお色気シーンもふんだんにあり、タップリ見せてくれました。

言葉遊びも忘れていません!!毎回サブタイトルの駄洒落(漫画の駄洒落サブタイトルの原点は、この漫画から始まった!!)の遊びはもちろんのこと、何と話中に「ワイルド7」?と思しき一団もワンシーン登場するというセルフパロディもあるサービスぶり!!

そして極めつけは、過去に発売された単行本は全3巻で全30話となっていますが、
「ビッグコミック」を連載当時購読されていた方はご存知かと思いますが、実は、なんと!!「うるとらSHE」は全46話あり、第31話から第46話は単行本未収録だったのです!!
なぜ後半のお話が単行本に収録されなかったか理由は不明ですが、とりあえず、未収録分のあらすじを簡単にご説明いたします。

第31話~第38話 九郎の浮気疑惑が浮上し、マキの必死の浮気調査が極秘裏にスタート。そしてついに浮気の現場を押さえ、マキたちが浮気の現場を奇襲したら何とそこには…!!
未見の方の為にこの話のオチは敢えて明かしません。ズバリ望月先生の趣味が関係しているとだけ申しておきます。(笑)
(ヒント:テニス・車・スキー・ボーリング・サッカーこのどれかが関係しています。)

そしてクライマックスの第39話~第46話
なぜか突然、舞台は第二次世界大戦のドイツ占領下のフランスはパリに瞬間移動?!

どうして舞台がいきなり第二次世界大戦中になったかなんて聞くのはヤボというもの。
望月先生の漫画を長年愛読していれば、どうして?なぜ?とかいう愚問は不要です。これにはちゃんと理由があって、見れば、なるほどと納得していただけるという内容です。これも敢えて理由は今は明かさないでおきます。
この後半の内容はこの後の作品「ごくろう3(さん)」に雰囲気が少しだけ似ています。ミリタリーものなら望月先生の十八番、もう水を得た魚のように話がドンドン展開します。
それにしても、ドイツが誇る最強の戦車「タイガーI戦車」と「キングタイガー戦車」を、事もあろうかジュースを作るミキサーと洗濯機の脱水機代わりに使おうなんて発想、望月先生でしか思いつきません。(苦笑)
他にも飛行船を使ってのドタバタ活劇や、クライマックスの軍用列車内での逃亡を図るシーンでは、実写では到底ありえない漫画ならではのギャグセンスが冴えたお色気アクションをドイツ軍相手に派手にやってくれます。


そして、ついにイカダで日本に向けて出発!というところで、この話はハッピーエンド?これがこの話の本当のラストシーンです。このコンセプトをアレンジしてアフリカ戦線でのドタバタ活劇を描いたのが、「ごくこう3(さん)」だったいう訳です。

「ごくろう3」の舞台はアフリカ戦線でしたが、「うるとらSHE」はヨーロッパ戦線でしたので、さしずめ「ごくろう3 ヨーロッパ戦線編」といった感じでた。



「ごくろう3」の詳しい内容を知りたい方は、「月刊望月三起也」2009年8月号の「作品紹介」の「ごくろう3」をご覧下さい

最後に、この単行本未収録話を含めた「うるとらSHE」全話完全版の収録を、いつか来る(きたる)べき「望月三起也作品大全集」発刊?の際に切に熱望いたします。
各出版社さん宜しくお願いいたします。

『うるとらSHE』
1972年 ビッグコミック(小学館)8月25日号~1974年7月25日号
全46話。

1982年 サンコミックス(朝日ソノラマ)全3巻
単行本では第1話~第30話巻頭4頁まで収録。第30話5~12頁~第46話未収録。

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月刊望月三起也ではみなさんからの投稿をお待ちしています。
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また掲載された方には、望月先生書き下ろし特製ポストカードをプレゼント!


是非、月刊望月三起也事務局までメールを送ってください。
お待ちしております。
info@wild7.jp
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望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
いや、本当に残念なこと、原稿が行方不明なのです。
単行本出版したいと依頼があり小学館編集部に問い合わせたところ、当時の担当者、別部署に移り、原稿は返却済みとの返事。
うちの書庫、ひっくり返してもないということは消えたんでしょうか、テンコーさんって・・・・
話はマジックじゃない。でも不思議。 ホワイトタイガー消す人が存在するから、原稿くらいなんだ、と言われたら腹立つなァ。
一生懸命描いてンだからね。

でも恐いですよ。第何話からどこまで抜けてると、本人も気がつかないことを調べてくださる。
今はコピーも上手に出来る世の中、当時のビッグコミックからコピーして“抜け”のない単行本を作って欲しいものです。

ビッグコミックでは実は、ワイルド7のような活劇物をやりたかったのですが、編集部の方針で「ゴルゴ13とカブるから」とやらせてもらえなかったわけ。
で、私の中のギャグのセンス見出してくれたのが当時の名編集長『小西(湧之助)』さんって人。
この人、セリフは短いけどど真ん中貫く名言吐く人だったなァ。
何人かの名編集と言われる人に世話になりましたが、この人もまたベスト、隠れた才能見抜く眼を持つことこそ名編集長でしょうね。
別に私に才能があったと言いたいのではなく、ギャグは元々大好き、そのうえ戦争物も。だったらその二つとも描けばいいって、人をノセルんです。
ノセルってことがまた、名編集でしょうねぇ。
このシリーズのひとつで『ごくろう3』に“ちいさいおばァさん”ってのが登場するのですが、このキャラクター、私の祖母。顔も身体も小さいとこもそっくり使いました。
性格もまた明治生まれなのにアメリカTVシリーズ『拳銃無宿』を私等兄弟と一緒に観て、「最近の外人さんは日本語が上手だねぇ」とマジにつぶやく人。明治生まれでスティーブ・マックイーンのファンってキャラクターをそのまま漫画に使ったわけです。
以外にいいキャラクター、身近にいるもんですね。
あれを今見直すとまたやってみたくなる物のひとつ。

今、月刊アーマーモデリング(株式会社アートボックス)で戦車物描いていますが、思い切り良くギャグバージョンの日本戦車隊ものをやってみたいなと思っています。



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  • 山梨の稲妻 :
    今晩は山梨の稲妻です。望月先生の作品で私が今探しているのはドールとかいうオートマグを使う男の作品と優しい鷲JJを探しているんですよなかなか見っけにくい作品ですね。面白いんですけど。
  • JUN :
    こんにちは、山梨の稲妻さん。初めまして。
    『Jドール』と『優しい鷲JJ』なら、結構ネットオークションでは頻繁に見かけます。
    ヤフオクをチェックしてみてください。
    入手後はぜひ感想(コメント)を書いてください(笑)。
  • 山梨の稲妻 :
    こんにちは、JUNさん初めまして。山梨の稲妻です。
    回答ありがとうございます。この二作品を知っている人がいるとは思いませんでした。
     さつそくさがしてみます。私は最近サバケー゛の世界にも足を踏み入れていますのでトレーニングしていると
     ワイルドの世界に少し近づいているような感じになります。今度はヘルメツトに稲妻のマークでも入れますか(笑) ワイルドにそのマークを入れている人はいますか回答をお願いします。

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