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作品紹介

第77回

白い罠

執筆者:   2015 年 8 月 4 日

力強い戦車が人を惹きつける魅力は今も昔も変わりません。その魅力に取りつかれた人がここに一人……そんなeddy-sさんがチョイスした二世部隊シリーズ珠玉の一篇とは?

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昨年末『FURY』という映画を観に行ってきました。いつもならレンタルになるまで待って、わざわざ映画館まで足を運ぶ事はないのですが、この映画に本物の「タイガーⅠ」が出ているというので、どうしても大画面で観たくて仕事帰りに行ってきました。

それも私が以前『緑の墓』の作品紹介の中で書いた「ボービントン戦車博物館」が所蔵する世界に唯一現存する可動するタイガーⅠだというじゃありませんか!まさか映画でタイガーⅠの勇姿を見れるとは思っていませんでしたので、観る前からとても楽しみでした。

映画の内容は、第二次世界大戦末期のヨーロッパ戦線、連合軍はベルリンを目指して一路進撃。ドイツ軍もおいそれとは進ませてくれない。立ちはだかるタイガーⅠ、SS親衛隊、迎え撃つシャーマン戦車隊、はたして戦局の行方は?
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その映画館からの帰り道、ふと頭をよぎったものが…。そう言えば昔、望月作品でもシャーマン戦車が登場して、アメリカ軍とドイツ軍が戦う話があったよなぁ?

雑誌はたしか『少年キングオリジナル』で、タイトルは確か「白い何とか」でした。このキング買って持っていたんだがなぁ…。どこに行ったんだろ?

もう一度なんとか読んでみたいと思った時に、確か自分の所有している単行本のどれかの巻末に収録されていた様な気がしました。

早速、『Kenさんのリスト』で確認したところ、『プッシー・キャット』の巻末等に収録されているとありました!そうです、それがこれからご紹介するミリタリーアクション漫画『白い罠』です。

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今回はミリタリー漫画ですので、ウエポンはいっぱい出てきます。まず「M4A2シャーマン戦車」が登場します。

映画『FURY』では主役でしたが、『白い罠』ではどんな活躍をするのか?そのシャーマンにはいろいろなバリエーションがあり、「M4A2」は砲台が丸みを帯びているのが特徴で、この漫画での愛称は「さぶといち」みたいです。(上記画像3コマ目、下記アップ参照↓)

さぶといち



ちなみに『FURY』に登場していたのは「M4A2E8シャーマン」で、俗に「E8(イージーエイト)」と呼ばれている型…。

『FURY』という愛称は「激しい怒り」という意味だそうです。砲身に文字が書かれていました。

swn06その他アメリカ軍側は、M1グリスガン、ブローニングM1919重機関銃等が登場。ドイツ軍側は、ラインメタル/マウザー・ヴェルケMG34機関銃、ケッテンクラート、75mm対戦車砲等です。

登場人物は、シャーマンの戦車兵はサブと一平(だから「さぶといち」)。しかもサブは飛葉ちゃん似のイイ男!

親父が将軍である為、いつも安全で楽な任務ばかりをする少尉と、その子守役で上官風ふかす軍曹。こちらは「リー・マービン」にそっくりです!

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ストーリーは、第二次世界大戦中のヨーロッパ某所。

米軍の情報部少佐がB-25に乗って帰還中にドイツ軍に撃墜され行方不明に。幸い少佐から無事だがドイツ軍の真っ只中で孤立しているので味方の救援が欲しいと連絡があり、救出に向かったのは米軍の二世で特別編成された一個中隊。落ち合う予定の教会で、故障中のシャーマンの戦車兵と出会う。二世だからと言う理由だけで最初はことごとく差別されて危険な仕事ばかりさせられる兵士たち。不満が募る兵士たちの前に突如現れたドイツ空挺部隊の攻撃を受け窮地に陥る。

いつもオチャラケばかりして口が悪いと皆から嫌われていた二世兵士の「バラ榊」が、命をかけてドイツ軍に捨て身の戦いを挑んで戦死した姿を見た時、今までバラバラだった皆の気持ちがひとつになり、少尉の命令を無視してドイツ軍を攻撃する。はたして、少佐を無事保護して司令室まで連れて帰れるか…?


swn13今回の作品のテーマは、友情と任務の狭間でいかに人間は自分らしさを失わず、生きていけるのか?だと思います。仲間を救う為に自分の命を賭けてまで戦う姿は、他の望月作品「ワイルド7」や「二世部隊物語」にも通じるモノがあります。

そういう男の友情を描かせたら望月先生はピカイチですね!ここで余談なのですが、戦死する兵士のモデルはどなたか皆さんはご存知ですか?
以前「おばちゃん」が「望月マニ也」で書かれた『プロのアシスタント集団』にも登場された、望月先生と親しい「ばらさかき」さんがモデルで、これまでの望月作品に幾度となく登場されています。『ビタミンI』の太鼓持ち、『ワイルド7/第7話「爆破105」』の新聞記者等…etc。

実は私も土浦武器学校バスツアーの時に、行きのバスでご一緒させていただき、色々お話を伺う中で、物腰が柔らかく気風の良さと気さくな性格は漫画のイメージ通りの方で、てっきり「江戸っ子」かと思いましたら、望月先生と同じ横浜生まれの横浜育ちの「ハマッ子」だと聞かされびっくりいたしました。多分、望月先生もその気風の良さを作品の中でキャラクターとして描かれたのかと思いました。

白い罠

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1977年 少年キングオリジナル(少年画報社)4月24日号

1982年 サンコミックス『プッシー・キャット』
(朝日ソノラマ)(12月20日初版発行) 《シリーズ野郎ども》『白い罠』併録

1988年 サンコミックスファイターシリーズ『ロス・アンジェルス黄金の眼』
(朝日ソノラマ)(5月30日初版発行) 《シリーズ野郎ども》『白い罠』併録

2001年 ホーム社漫画文庫『二世部隊物語④鬼軍曹』
(ホーム社)(2月21日初版発行) 《シリーズ野郎ども》『白い罠』併録

2004年 BUNKASHA COM『戦記コミック傑作選④北に進路をとれ』
(ぶんか社)(3月10日初版発行) 《シリーズ野郎ども》『白い罠』併録


『eBookJapan』でも購読可能です。(プッシー・キャット巻末に収録)コチラまで。

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望月先生のコメント
【望月三起也先生より】
アメリカ映画『フューリー』、楽しかったですねぇ。
つい最近、ブルーレイも手に入れて、また観ちゃいました。
このブルーレイ版に付いている解説書が特典映像をも上回る出来で、参考資料にもってこい。『白い罠』を描いていたころに、こんなのがあればねぇ。
と、それにしても白い罠を読むためにご苦労されたようで、感謝!

私も久々に見てみようと、eddy-sさんが、『ロス・アンゼルス黄金の眼』(朝日ソノラマ)に載ってるって書いてたンで、それを引っ張り出して・・・・・ 
いやはや、細かいタッチといい、構図、コマワリ、ストーリーと自分で言うのも何ですが、アブラが乗ってましたねぇ。私だけでなく、うち(カエルぷろ)のスタッフも最強のころだった気がします。

表題『ロス・アンゼルス黄金の眼』の方、なんとなく読み始めたら、1ページ目から最後まで一気にいっちゃいました。白い罠を読むために本を手にしたンだけどね。
こういうことって時々あります。何十年も以前の作品だと作者も読者になって読んじゃうンですね。正直、女の子の描き方、このころがベストか?今、描けるかなァ?なんてね。ノリにノッテた感じです。
それと同時に、こういう漫画っていかにも漫画らしい。主人公と猫との会話がコント風なところなど、「この続き、あってもいいなァ、やってみようかなァ」なんて、短編、中編ってまた別な魅力があるんですよね。

ただこれは私が好きなだけで、今の読者は「なに?これ?」「わかんなァ~い」って、内容なのかも。時代が違うもんねぇ。

・・・・・と、肝心の『白い罠』、私としては例の如くで、今ほどの資料があったらなァと思わせる。特に空挺隊のヘルメットや装備は独特なんです。そんな資料、これを描いてたころはほとんど揃ってなくて悔しい思い。
ストーリーはやはり“二世部隊シリーズ”の1本で、この当時の映画好きの私、遊びでハリウッド俳優に似たキャラクターを面白がって登場させてた。読者もこの人物が誰に似てるとか当てたりして楽しみを共有してました。
今、描いたらどうなるのかな?色々とうるさい世の中だからクレームがつくのなかァ?

嬉しいのはeddy-sさんのように作品内に登場する武器、戦車をはじめとして、重火器に銃などをしっかりと描き込んでおいたところ、しっかりと見てくれている。描き手はそれが嬉しい。だから机の上で手を抜けないわけ。スタッフ共々参考資料拾いまくりするわけですよ。
で、出てくる教会シーン。この教会の資料がなくて、頭の中で造ったもの。いやァ、今見ると恥ずかしい出来。かなり重要な舞台になっているというのにね。

さァて、登場人物のひとり『バラ・榊』。おっしゃる通りで、うちへ何となく出入りしてた・・・・ 今尚、フラッと遊びに来る変な奴なんです。でも顔に似合わず、頼みごとなんて嫌とは言わないイイ奴でもあるんです。だからか、これまでもアチコチ作品にフラッと遊びで出演してるわけ。
こういうキャラクターも珍しい。彼は通学していた高校がウチの近くだったということもあり、学校帰りにフラッとやって来る。何となく居て、いつの間にやら消えて(帰って)しまってる・・・・・ 昔から変な奴なんです。
うちのスタッフは全員が一度はどこかで作品に登場していますが、このバラ・榊、登場回数はトップかも。出番は少なくとも。



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